ジュウカ?なんだそれ?
というあなたへ。「ジュウカ」とは「重加算税」のこと。税金の世界における「もっとも重いペナルティ」が重加算税です。また、税務調査で「もっとも避けたい」のが重加算税。
そんな重加算税についてのお話です。
重加算税がもたらす「3つの恐怖」
税務署から「ジュウカ(重加算税)」とされてしまった場合には、「3つの恐怖」が待っています。
重加算税とは
3つの恐怖の前に。重加算税とは、についてサラッと見ておきます。国税通則法という法律条文には、次のように書かれています。
第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(同条第五項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
国税通則法 第68条(重加算税)
なに言ってんのかよくわかりませんので、要約しますと。
納税者が事実を隠ぺいまたは仮装して税金の申告書を提出したときは、隠ぺいまたは仮装された税額の100分の35に相当する重加算税を課する。
ということで。「隠ぺいやら仮装やら」というワルだくみをしたときには、ごまかした税額の35%を上乗せするよ。というのが重加算税です。ポイントは「隠ぺいと仮装」。
3つの恐怖
それでは、重加算税の「3つの恐怖」について。次のとおりです。
- 35%の税金上乗せ
- 延滞税の免除期間無し
- 「第3グループ」入り
35%の税金上乗せ
これは先ほど法律条文のところでみたとおり。ごまかした税額プラス、その35%のペナルティ。金銭的ダメージを負うことになります。
延滞税の免除期間無し
そもそも、本来の納税期限よりも遅れて税金を払う場合には。遅延利息としての「延滞税」が課せられます。ただし、1年を超える期間の延滞税については、免除されています。
重加算税の対象になる「ごまかした税額」もまた、本来の納税期限よりも遅れて払うものですから延滞税の対象です。
ところが、重加算税に関する延滞税については、1年を超える期間の免除はありません。悪いことをした奴らにまで、免除はしてくれないということです。
延滞税の利率は市中金利よりも相当に高く(現在はおおむね年利3%~9%程度)、これまた金銭的ダメージを負うことになります。
「第3グループ」入り
税務署では、税務調査の対象法人を次のように分類しています。
第1グループ | 申告・納税が良好な法人 |
第2グループ | 第1・第2グループ以外の法人 |
第3グループ | 不正想定法人、不正加担法人等 |
Q&A 税務調査対策の手引き / 新日本法規 より抜粋 |
重加算税の対象になる「隠ぺいや仮装」をすれば、もれなく「第3グループ」の仲間入りです。ブラックリスト入りです。すると何が起きるのか?
ほぼ「3年周期」での「深度ある税務調査」が継続されることになります。一度ブラックリスト入りすると、原則、ブラックリストから外れることはありません。
強い疑いの眼を前提とした税務調査が永続する。これは、金銭的ダメージ以上の大ダメージと言えるでしょう。
「誤って重加算税」をもらわないために
重加算税の対象は、あくまで「隠ぺいまたは仮装」です。それ以外のことについて、「誤って重加算税」をもらわないように。
「重加算税」と言われたら、いちばんにすべきこと
不幸にも、「重加算税だ」と言われてしまったら。まずすべきこと。それは、その理由を税務調査官に確認すること。「なんで?」と聞くことです。
冒頭で見た法律条文の要約を再掲します。
納税者が事実を隠ぺいまたは仮装して税金の申告書を提出したときは、隠ぺいまたは仮装された税額の100分の35に相当する重加算税を課する。
重加算税の対象は、あくまで「隠ぺいまたは仮装」。ですから、調査官の考える理由が、ほんとうに「隠ぺいまたは仮装」に当たるのかの確認がたいせつになります。
調査官も人間ですから勘違いや間違えることがあります。勘違いや間違いによって、「重加算税の3つの恐怖」に被ることが無いように。自衛も必要です。
「隠ぺいまたは仮装」とは何か
では、「隠ぺいまたは仮装」とは何なのか?ひとことで言うならば、「わざとやったことなのか」どうかです。「わざと」あるいは「故意に」、それが「隠ぺいまたは仮装」の大前提です。
隠ぺいとは、在るモノを隠すこと。仮装とは、あるモノをちがうモノに変えること。これらの前提には、「わざと」あるいは「故意に」の意が必ず含まれています。
「思わず」隠ぺいしたり、「うっかり」仮装したりすることはありえません。「思わず」とか「うっかり」とかは、言うなれば「間違い、ミス」においてのこと。
つまり、「間違いやミス」をしたことで重加算税とされることはありえません。
重加算税にされうる「間違いやミス」について
税務調査官の勘違いで重加算税だなんて怖すぎる。クワバラクワバラ。ということで、「お守り」を携えることにしましょうか。「事務運営指針」なるモノです。
「事務運営指針」とは、税務調査官が守らなければいけない絶対的ルール。いわゆる「内規」として存在しています。そこには、重加算税についてこんなことが書かれています。
3 次に掲げる場合で、当該行為が相手方との通謀又は証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。
(1) 売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が翌事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、翌連結事業年度。(2)において同じ。)の収益に計上されていることが確認されたとき。
(2) 経費(原価に算入される費用を含む。)の繰上計上をしている場合において、その経費がその翌事業年度に支出されたことが確認されたとき。
(3) 棚卸資産の評価換えにより過少評価をしている場合。
(4) 確定した決算の基礎となった帳簿に、交際費等又は寄附金のように損金算入について制限のある費用を単に他の費用科目に計上している場合。(帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合) / 法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
これは、「隠ぺいや仮装に該当しない」として挙げられている例示です。
(1)では、売上の計上時期がうしろにズレてしまっていた場合。(2)は逆に、経費の計上時期が前にズレてしまっていた場合。(4)は、カンタンに言うと「見解の相違」みたいなことです。
税務調査官が勘違いをして、こういった状況を重加算税の対象だと言うのであれば。この「事務運営指針」をもって、反論することになります。
いっぽうで。この事務運営指針には、重加算税対象の例示も載っています。次のとおりです。色付き文字だけで良いので、目で追ってみましょう。
1 通則法第68条第1項又は第2項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」とは、例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合をいう
(1) いわゆる二重帳簿を作成していること。
(2) 次に掲げる事実(以下「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という。)があること。
1 帳簿、原始記録、証ひょう書類、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書、棚卸表その他決算に関係のある書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿していること
2 帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること
3 帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること
(3) 特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類を改ざんし、又は虚偽の申請に基づき当該書類の交付を受けていること。(以下、省略)(隠ぺい又は仮装に該当する場合)/ 法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
とまぁ、これでもかとワルいことがいっぱい書いてあります。これこそが「わざと」であり「故意」であり、「隠ぺいまたは仮装」です。この違いを理解しておきましょう。
まとめ
税金の世界でもっとも重いペナルティである「重加算税」についてお話をしてきました。
重加算税を課されたしまった際には、3つの恐怖がありました。ワルいことをして重加算税なんてことは無いでしょうけれど。
誤って重加算税とされないための自衛策についても、身につけておくとよいでしょう。
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きょうの執筆後記
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