あ~、経理めんどくさい。帳簿なんてつけてらんないよ・・・
そんな人がとりがちなアブナイ行動について紹介します。「これ、オレだ」「これ、ワタシだわ」と心当たりがあるならば。放置は禁物。対策についてもお話しします。
経理がめんどくさい人たちの「3つのアブナイ行動」
領収書やレシートの整理、帳簿づけ。手間なのはわかります。時間だって必要です。めんどくさい気持ちも理解できます。
でもね。税理士のわたしが、これは「マズイなぁ」「アブナイなぁ」と感じる3つの行動についてまとめてみました。さぁ、あなたはだいじょうぶ?
- あとでまとめてやることにする
- 申告をしないことにする
- 税理士に丸投げする
《 アブナイ行動1》あとでまとめてやることにする
1つめは「あとでまとめてやることにする」という行動。めんどうなことはあとで、というとてもありがちなパターンです。
問題点:あとでまとめてやるとお金がかかる
ほんとうにあとでまとめてできるのならば。それはそれでイイ、という考え方もあるでしょう。ところが、
- 節税のチャンスを逸する
- 税理士報酬が高くなる(税理士に申告を頼む場合)
といった不利益を被る可能性を覚悟する必要があります。カンタンに言うと、税金や税理士報酬が高くつく。そういうことです。この点、詳しくはこちらの記事で書いています。
対策:決算日前にだいたいの利益をつかむ
じゃあ、どうしたらいい?ということですが。ずばり、「申告期限」に間にあえばいい、という考え方をあらためることです。どうあらためるのかというと、
せめて決算日までにやる。
会社(法人)であれば決算日、フリーランス・個人事業主であれば年内までに。いちどは経理(帳簿づけ)をしておくことです。だいたいの利益を把握しておくために。
これによって節税の選択肢は広がります。決算日内でなければできない節税だってあるんです。もっとも、それも決算日ギリギリではなにもできませんので、そこんとこはよろしくです。
あとは、決算日までにいちど経理をやった流れで。税理士に申告を頼むならば、早めに頼みましょう。遅くなればなるほど、税理士報酬は高くつくものと心得ておくべきです。
《 アブナイ行動2》申告しないことにする
2つめは「申告しないことにする」という行動。これはもう、アブナイもなにも、やっちゃいけないやつです。
問題点:無申告がバレた場合の不利益はデカすぎる
これくらい申告しなくても平気だろう、みたいな。あるいは。先の「あとでまとめてやることにする」が気が付いたら申告していませんでした、みたいな。
ダメです。やめてください、そんなこと。税金は国民の義務だから、なんて言うつもりはありません。あなたの不利益が大きすぎるから、というアドバイスです。その不利益とは、
- 無申告加算税、延滞税
- 懲役・罰金
- 青色申告の取り消し
最大20%の無申告加算税、最大 年14.6%の延滞税というペナルティの税金。10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金又はこれらの併科。青色申告の取り消し・・・見るも恐ろしい「不利益」の数々。
バレないだろうなんて、甘い考えはやめておきましょう。天網恢恢疎にして漏らさず。だいたい、バレたらどうしようなんてドキドキしながら過ごすのもカラダに悪すぎます。
対策:いまからでも間に合う期限後申告をする
あぁ、どうしよう。申告してなかったけどすごい怖くなってきた。そんなあなたもだいじょうぶ!ではないけれど。「救済措置」ならばあります。
税務署に見つかる前に、自分からごめんなさいして申告する。
「期限後申告」です。文字通り、期限後ながらも、自分のほうから申告を行うということ。遅れたことによるペナルティはありますが、「無申告」ほどではありません。
無申告だと最大20%だった無申告加算税は5%。遅延利息の位置づけである延滞税も、遅れた期間が短いほうが少なくて済みます。2年連続とならなければ、青色申告の取り消しもありません。
《 アブナイ行動3》税理士に丸投げする
3つめは「税理士に丸投げする」という行動。これはいまままでの2つとは、少々おもむきがが異なります。
問題点:数字に対する「主導権」を手放すことになる
もうさ、経理なんてめんどくさいしね。税理士にお任せ。という会社・人も少なくありません。それもひとつの考え方、ひとつの選択肢です。そのときに覚えておくべきことはただひとつ。
- 数字に対する主導権を失う
ということ。経理(帳簿づけ)を税理士に任せるということは、「数字」を任せることと同義です。売上や利益、税金の額といった数字をすべて、税理士に託すということ。
それらの数字はいつ、あなたのところに戻ってくるのでしょうか。1年に1度の申告のときです、と言うのなら。それは、「あとでまとめてやる」のと変わるところがないでしょう。
では3か月後くらいならいいかと言えば、そんなこともありません。3か月前の売上や利益といった数字が役に立つことなど知れているからです。
本来、税金計算だけが数字の目的ではありません。日々の判断や行動のよりどころのひとつとして位置付けたいのが「数字」です。
いつ戻ってくるかもわからない数字を、欲しいときにすぐ扱うことができない数字を、「よりどころ」にするなんて。どだいムリなハナシというものです。
対策:税理士に託す数字は税金のみ
ならば、税理士はなんのために居るんだよ?というハナシなら。極論、「税金計算だ」と答えます。数字が持つ重要性を知るならば、
税理士に任せる数字は税金だけ。
というのがベストだと、わたしはオススメしています。つまり、売上や経費、差額としての利益など。日常的な数字については、自分(自社)で扱うべき。
数字は新鮮であるからこそ、興味が持てるし、判断や行動に役立つもの。数字に対する主導権を手放すことによる代償は、「大きい」と理解しておかなければいけません。
もちろん、数字がすべてではありません。ところがいっぽうで、数字にしかできないことがある。ということを忘れてはいけない、と考えています。
数字を扱えない、数字が読めない経営は「燃料計の無い飛行機を離陸させること」だ。そう考えています。そんな飛行機に乗りたくなんてありませんよね。
税理士に任せること自体が「間違い」だと言うつもりはありません。任せたとしても、「燃料計の無い飛行機」にはならない算段を。ということです。
まとめ
経理、帳簿づけがめんどくさいなぁ、という人のアブナイ行動について見てきました。
時間や手間がかかることはわかります。ですが、いざアブナイ行動にでたときに「なにが起きるのか」は知っておきましょう。
経理、帳簿づけにおいてもっとも大事なこと。それは、方法ではなく、あなたの「ポリシー」です。
経理に何を求めるか、結果としての数字をどう扱うか。あなたのポリシーを考えてみましょう。
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きょうの執筆後記
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本文に書くべきかとも思ったことですが。「税理士の仕事=税金計算」ではありません。税理士の仕事のひとつが税金計算、という意味です。
税理士が本来すべき仕事はいろいろありますが。「経理、帳簿づけ」といった「数字の丸投げ」に対応する仕事は、「本来とは違うだろ」というのがわたしの持論です。