銀行はウチの会社にいくら貸してくれるんだ?
という疑問をお持ちのあなたに。銀行から借入できる金額の「目安」の考え方、お伝えします。
売上とキャッシュフローはいかほどか
いくら借りられるかを決めるのは銀行です。「借りたい金額」を貸してくれるのではなく、「貸せる金額」を貸してくれるのが銀行です。
銀行が「貸せる金額」を考えるにあたって重要視するのは、会社に「返せるアテ」があるかどうかです。その「返せるアテ」には、2つあります。
- 売上
- キャッシュフロー
それでは、それぞれ見ていきましょう。
「売上」は、ほんとの目安程度
会社の「売上」を「返せるアテ」と見る場合の考え方について。
年商 × 〇%という考え方
ずばり。会社の売上から見る、銀行が貸せる金額は、
年間売上額 × 40%
あたりが限度です。年間売上額が1億円の会社で、借入金残高が3,000万円であれば。あと1,000万円くらいなら借りられそうかな、ということです。
40%を超えて借りられるケースもありますが、「ムリなく借りる」という点では40%程度がひとつの目安です。
また、「ムリなく返済する」ことを考えると。借入は年間売上額の30%程度まで、というのが無難だと言えます。
売上だけを見て貸してはくれない
売上を目安にした話をしたものの。実際には、銀行が「年間売上額×〇%」でおカネを貸すことはありません。
なぜなら、いくら売上があっても、おカネが増える、おカネが残るかどうかはわからないからです。
「勘定合って銭足らず」や「黒字倒産」の言葉もあります。売上や利益の金額よりも、結果、「おカネがいくら残るか」が銀行の最大の関心事です。
その「おカネはいくら残るか」というのが、次にお話しする「キャッシュフロー」です。
「キャッシュフロー」が無ければおカネは借りられない
銀行が考える「返せるアテ」の大本命、それが「キャッシュフロー」です。
キャッシュフローとは
さっそく、キャッシュフローとは何かを提示します。
キャッシュフロー=税引後利益+減価償却費
決算書のひとつ「損益計算書」の末尾に、「税引後利益」は見つけることができます。同じく「損益計算書」の経費科目の中に「減価償却費」を見つけることができます。
たとえば、税引後利益 500万円、減価償却費 150万円の会社であれば。キャッシュフローは650万円になります。
この会社では「650万円のおカネが残った」ということ。これがキャッシュフローの考え方。
事業の利益+減価償却費-社会保険料-税金-生活費
なぜ、減価償却費をプラスするのか?
ところで、なぜ経費である減価償却費を税引後利益に加算するのか?
そもそも、キャッシュフローの算式は。「税引後利益」、つまり、利益の分だけ「おカネは増えた・残った」というところからスタートしています。そこになぜ、減価償却費をプラスするのか。
話すと長くなりますが、ひとことで言うのならば。減価償却費は、「おカネを支出しない経費」だからです。
たとえば、500万円で買った機械設備を、5年間で100万円ずつ分割して経費にする。このときの100万円が減価償却費です。
減価償却費は、経費としては100万円ですが。実際におカネを100万円払っているわけではありません。おカネを払ったのは、あくまで「買ったとき」です。
これに対し、税引後利益を計算するにあたっては、減価償却費100万円がマイナスされています。だから、これを「足し戻す」のがキャッシュフローの算式が意味するところです。
で、いくら借りられるのか?
話を戻しましょう。「返せるアテ」であるキャッシュフローがわかったところで、「いくら借りられそう」なのか。
キャッシュフロー × 7
このあたりが「イイところ」です。場合によっては「10」くらいを望めますが、安全圏でみれば「7」くらい。
先ほどの例で、税引後利益 500万円、減価償却費 150万円の会社であれば。キャッシュフローは650万円。
よって、「650万円×7=4,550万円」あたりが借入可能額。現在の借入金残高が3,000万円であれば、あと1,550万円くらいの余力あり、と見ます。
算式中の「7」が意味するところは「返済年数」です。キャッシュフローとは、1年間に「おカネがいくら残るか」でしたよね。
1年間に残るおカネであるキャッシュフローを使って、7年以内に返せる金額が限度。というのが、「キャッシュフロー×7」が意味するところです。
ところで気が付きました?キャッシュフローには「黒字」が不可欠です。節税が過ぎて利益を圧縮し過ぎると、銀行からの借入が難しくなります。気をつけましょう。
まとめ キャッシュフローとて、目安でしかない
キャッシュフローについて見てきましたが。これでおカネを借りられるというわけでもなく。やっぱりあくまで目安です。
貸し手の論理、借り手の論理
おカネを借りる側である会社の思惑とは関係なく。貸す側である銀行には、貸し手の思惑、貸し手の論理が存在します。
そのひとつが、さきほどの「キャッシュフロー」です。しかし、それすらも、やはり「目安」でしかありません。
銀行は「銀行の視点」で、多面的に会社を見ています。キャッシュフローのベースになった「税引後利益」にしても、ほんとうに正しいのかを考えています。
たとえば、社長の給料が低すぎるのではないか。だから、利益が大きくなっているだけではないのか。だとしたら利益を補正して考えよう、とか。
ほかにも、資産と負債のバランスから、いわゆる「債務超過」でないかを検証する。これも、銀行が重要視していることのひとつです。
細かいことを言えば、納税に遅延がないか、社長個人の信用情報に傷はないかなど。貸し手の論理は、借り手が想像する以上に多面的で広いものです。
借り手の論理を主張するのはナンセンス
そんな貸し手の論理をさて置いて。
とにかく〇千万円貸して欲しいとか。利率は〇%以下がイイとか、無担保でなければイヤだとか。借り手の論理ばかりを主張するのでは、おカネを借りることはできません。
繰り返しになりますが。銀行は、借りたい金額を貸してはくれません。貸せる金額しか貸してはくれません。
だからこそ、貸し手の論理である「銀行の考え方」を理解しておく必要があります。いくらなら貸してもらえそうかを、押さえておく必要があります。
「キャッシュフロー」は、その「銀行の考え方」のひとつ。とりわけ大事なひとつです。大事な「目安」として覚えておきましょう。
- もっと銀行融資・資金調達について知りたい方 → 「まとめ記事」ページ
- 銀行融資・資金調達について勉強したい方 → 「銀行融資・資金繰り入門セミナー」ご案内ページ
- 銀行融資・資金調達について専門家のサポートを受けたい方 → 「コンサルティング」ご案内ページ
************
きょうの執筆後記
************
ブログには書けない・書きにくいことその他。きょうの「執筆後記」は毎日メルマガでお届け中です。
よろしければメルマガ(無料)をご登録ください! → 登録はこちらから