銀行融資の妨げになる勘定科目?なにそれ?
というあなたは必見。決算書の勘定科目には、「載っているとよろしくない勘定科目」というものがあります。
決算書を片手に、早速チェックをはじめましょう。
3人の問題児「現金」「仮払金」「貸付金」
まずは結論から。銀行融資を受けようという時に、決算書に載っていると「コイツはよくないなぁ」という勘定科目が3つあります。
そんな勘定科目の問題児は、次の3つです。
- 現金
- 仮払金
- 貸付金
それでは、それぞれについてお話をしていきます。
ほんとにあるの?たっぷり「現金」
ひとつめの勘定科目の問題児は「現金」です。
手元にある現金<決算書上の現金
「現金」を持ってちゃいけないのか、ということではありません。「現金」自体の問題ではないのです。
問題は「決算書上の現金」の金額が、実際に「手元にある現金」の金額を大きく上回っていないか。
顧問税理士から受け取った決算書、きちんとたしかめていますか?
たとえば、普段は手元の現金なんて10万円がいいところ。決算書を見てみると…ひゃ、ひゃ、100万円!?
冗談ではなく、ほんとうにこういうことはあるんです。
どうしたらこんなことが起きるのか
原因についてカンタンに触れておきます。
実際に使った現金についての「記帳(経理処理)」が漏れている。これが原因です。
現金で買った備品、現金で払った飲食代。そういった「現金を使った際の領収書」を失くしていれば、記帳はできません。
結果、手元の現金残高と帳簿の現金残高とはズレていきます。
手元の現金は使った分だけ減るのに、帳簿の現金のほうは減らないのですから当然です。
「社長、ちゃんと領収書出してくださいよっ!」なんて、いつも経理や税理士から言われていませんか? そういうことです。気を付けて。
それと銀行融資と何の関係が?
決算書の現金残高が正しくないのはたしかによくない。でも、それと銀行融資と関係あるん?ということについて。
大アリです。決算書の「たっぷり現金」を見て、銀行が思うことは2つ。
- 経理がテキトーで、イイ加減な会社なんじゃなかろうか?
- この現金は実際には無いな、うん。無いことにしよう。
ひとつ目のほうは、さきほどお話しした通りですからいいでしょう。イイ加減な相手におカネを貸すことがためらわれるのはフツーの感覚です。
これからお話しするのは、ふたつ目のほう。
「この現金は無いことにしよう」とはいったいどういうことなのか?
銀行は資産がお好き
「この現金は無いことにしよう」思考を理解するにあたり、銀行の考え方を押さえておく必要があります。
銀行の考え方、と言っても。小難しいハナシではありません。銀行の考え方、それは、
融資の相手先は「資産」を持っているほどいい。
おカネの貸し手としては、借り手に「資産」があるほうが安心です。おカネを貸しやすい。貸し倒れ(貸したおカネが回収できないこと)のリスクが小さくなるからですね。
反対に、「資産」が少なければ。銀行はおカネを貸したがりません。だから銀行は、おカネを貸す前に決算書をチェックしているのです。
銀行は決算書を修正している
決算書チェックの過程で「思わぬ巨額の現金」を目にしたとき、「この現金は無いことにしよう」という発想が生まれます。
会社に直接、真偽のほどを確かめるかどうかはともかく。
「この現金残高は無いな」となれば、銀行融資の審査上、決算書から「無いであろう現金」分の金額は削られることになります。鉛筆ナメナメ、削られています。
現金をはじめ、資産の金額が削られるほど。その会社の銀行融資は難しいものになっていきます。
覚えておいてください。銀行は、必ずしも決算書をその表面どおりには受け取っていません。
実態に合わせた修正をしたうえで、銀行融資の審査をしているのです。
なんに使った?アヤシイ「仮払金」
ふたつ目の勘定科目の問題児は「仮払金」です。
アタマ隠してシリ隠さず
決算書に載っている「仮払金」。これを見た銀行は次のように思うでしょう。
- 仮払金って、なんに使ったんだ?領収書失くした?イイ加減だなぁ…
- 使い道を表に出せない支払いなのか?であれば、資産としての価値はないな。
ひとつ目のほうは、先ほどの「現金」のところでした「失くした領収書」の話とまったく同じです。
現金残高が大きくなっていると目立つので、その分を「仮払金」という勘定科目に振り替えてみた。そんなカンジかもしれませんが、結局いっしょです。むしろアヤシイくらい。
ふたつ目のほうは、「仮払金」という資産の価値に疑問を持っている。という思考です。
価値無き資産
そもそも、「仮払金」というのは「資産」の勘定科目のひとつです。
文字通り、「仮に払った状態のおカネ」を示すものであり、一時的に利用される勘定科目が「仮払金」です。
おカネを仮払した対価として、いずれ何かしらを得る権利がある。ゆえに「資産」としての価値があるべきはずのもの。
ところが、いずれなんにも得られないものへの仮払いであれば、そこに価値はありません。
たとえば極端な例として、表に出せないリベート。これを仮払金で処理していた場合にはどうでしょう?
いずれどうにもできませんよね。表に出せないのですから経費にすることもできず、ずっと仮払金のまま。この仮払金に、資産としての価値は無い。
やはり銀行としては「価値無き資産」と見て、仮払金の金額を資産から削ることになります。
決算書に仮払金を載せる愚
ハナシは変わって。これはほんとうに純粋たる仮払金なんだ、と主張する人がいます。社員への経費の仮払い、などのことですね。
たしかに、それは「仮払金」です。ところが、決算のときまでにそんな「仮払金」を残すものではありません。
仮払金とはあくまで「一時的」な勘定科目です。「最終」の決算だというのに、「一時的」なモノを載せているようでは経理の機能不全を笑われてしまいます。
決算書に「仮払金」を残すような経理は、そもそもやめましょう。
返してもらえば?自業自得の「貸付金」
さいごの勘定科目の問題児は「貸付金」です。
おカネを貸す余裕がある人におカネは貸せない
「貸付金」もまた、「資産」の勘定科目です。いつかおカネを返してもらえる権利としての価値がある資産です。
そんな「貸付金」を、銀行は次のように見ています。
- おカネを借りに来る前に、貸したおカネを返してもらいなさいよ
- この貸付金、ホントに返してもらえるの?
まずはひとつ目。きわめて筋の通ったお話です。貸付なんてしているから、おカネが足りなくなったんでしょ、と。
こんな人におカネを貸したら、そのお金までまた誰かにおカネを貸しちゃうんじゃないか。と、銀行は考えます。
その「誰か」とは、たいてい「社長」のことを指しているのですけれど。まぁ、それはそれとして。
銀行融資を受けるにあたり、貸付金は非常に心証が悪いものです。金額の程度にはよりますが、安易な貸付はしないことです。
焦げ付く貸付金
決算書の「貸付金」は焦げ付いていることも少なくありません。もう返してもらえない状態になっている。
たとえば、取引先に頼まれておカネを融通したけれど倒産。損失(費用)を計上するのがイヤで貸付金のままにしてある、とか。
子会社の事業資金として貸付したものの。子会社の事業は軌道に載らず、いまは休業状態。やはり、決算書上は貸付金のまま、とか。
こういうことは珍しくないので、銀行は貸付金の価値を査定しています。価値無きモノはやはり減額です。
さきほど触れた社長への貸付金も、意外といつ返してもらえるかわからないよねぇ。という意味で、資産の金額から減額されることもしばしば。
会社から社長への貸付金が常態化している決算書は要注意です。
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まとめ
決算書の勘定科目には、「載っているとよろしくない勘定科目」についてお話ししてきました。
資産が十分だと見える決算書も、銀行はそうは見ていないということがあるものです。
銀行融資を考えるのであれば、銀行の視点で決算書を見るという眼を養っておきましょう。