おカネを貸して欲しい?なんに使うの?
という疑問は、おカネを貸す側にとって当然の疑問と言えます。
銀行から融資を受けるときも同じ。なぜおカネが必要なのかという「資金使途」をはっきりさせておきましょう。
銀行融資に欠かせない『資金使途』
銀行から借入をしたいという時に。大事になるものの一つに「資金使途(しきんしと)」があります。
そもそもどうしておカネが必要か?
もしもあなたが、人からおカネを貸して欲しいと頼まれたなら。相手にこんなことを尋ねるのではないでしょうか。
- いくら貸して欲しいの?
- どうしておカネが必要なの?何に使うの?
返してもらえそうな金額か、自分が貸せそうな金額か、という点で。いくら貸して欲しいのか、という金額を聞くでしょう。
そしてもうひとつ。
そもそも、「どうして」お金が要るのかという理由、「何に」使うのかという目的も知りたい。きっとあなたは、そう考えるはずです。
貸したおカネの使いみち
それは「おカネを貸すこと」を仕事にしている銀行も同じことです。
返してもらえそうな金額か、貸せそうな金額かということは、会社の決算書や計画書などを確認しながら判断します。
加えて、おカネを貸し出す理由と目的を確認します。どうして借入が必要なのか?借りたおカネは何に使われるのか?
いわば、借りたおカネの使いみち。これを「資金使途(しきんしと)」と言います。
たとえ貸し出す「金額」に問題がないとしても。資金使途がわからない、あるいは資金使途に問題があれば、銀行がおカネを貸すことはありません。
資金使途あれこれ
それでは、銀行が認める「資金使途」についてみていきましょう。けっこういろいろあります。
資金使途を一覧する
はじめに、資金使途を一覧にしてみます ↓
運転資金 | 経常運転資金 |
増加運転資金 | |
季節資金 | |
賞与資金 | |
決算資金 | |
その他 | |
設備資金 |
大きく分けて「運転資金」と「設備資金」
資金使途を大きく区分すると、まず2つに分かれます。
運転資金と設備資金です。それぞれをひとことで言うならば。
- 運転資金・・・日々の事業で日常的に必要な資金(商品仕入、経費支払)
- 設備資金・・・本社・工場、社用車、機械、備品など、いわゆる設備投資に必要な資金
さきほどの一覧表のとおり、資金使途はさらに細かく分類されます。続いて、そのお話をしていきましょう。
運転資金いろいろ
日々の事業で日常的に必要な資金である「運転資金」はさらに細分化されます。
- 経常運転資金
- 増加運転資金
- 季節資金
- 賞与資金
- 決算資金
- その他運転資金
経常運転資金
運転資金の代表格が「経常運転資金」です。
会社は、モノやサービスを売っておカネを獲得しますが、「時間」が必要になります。モノを仕入れて、ツケで売り上げる商売だとすれば ↓
- 商品仕入 → 売れるまで在庫 → ツケで売上 (売掛金・受取手形)→ 現金回収
ということで、商品を仕入れてからおカネになるまでには「それなりの時間」がかかることになります。
であれば、その分のおカネが無ければ会社は立ちいかなくなってしまうわけですが、「その分のおカネ」が経常運転資金です。
ちなみに、仕入もツケで行う(買掛金・支払手形)場合、売上とは逆で、支払いを待ってもらうことになります。
その点を踏まえて、経常運転資金の具体的な計算方法を示すと次のとおりです。
- 経常運転資金=在庫(棚卸資産)+売掛金・受取手形-買掛金・支払手形
増加運転資金
さきほどの経常運転資金にプラスアルファの条件が付いたのが「増加運転資金」です。その条件とは、
- 売上が好調で、売掛金が急増した
これがキホンです。売上が増えれば仕入も増えますが、通常は「売掛金の伸び >買掛金の伸び」となり、必要な運転資金が増加します。これが増加運転資金。
これに対して、諸事情で買掛金や支払手形の支払期限が短くなった場合。売上が増加しなくても、やはり運転資金は増加します。これも増加運転資金のひとつです。
季節資金
「季節変動」という言葉があります。 年間を通じた商品の売行きには好不調がある、ということです。
気候の変化であったり、折々のイベントなどが要因となって、売上が大きく変動する商売は少なくありません。
この場合、商品の売行きが上がる前には。販売チャンスを逃さぬよう、在庫をたくさん準備することが必要です。
このように季節変動に合わせて、商品在庫を蓄えるための仕入資金などを「季節資金」と呼びます。
賞与資金
文字通り、賞与を支給するための資金です。
賞与時期には、短期的に大きなおカネが必要になります。結果、手元のおカネが目減りし、日々の資金繰りに難がある。
このときに融資を受ける際の資金使途が「賞与資金」です。
短期的な資金不足に対する融資になることから、その返済期間も短期です。半年ごとの賞与支給であれば、原則、返済期間は半年という考え方です。
決算資金
決算時、会社は税金を払います。法人税です。儲かっている会社ほど、法人税の支払額も大きくなる。
税金の支払い分のおカネを貯めてあればよいのですが、余裕のある会社ばかりではありません。黒字とはいえ、納税のためのおカネが必要・・・
そんなときの資金使途が「決算資金」です。賞与資金同様、短期的使途として6か月の返済期間が通常です。
納税のほかにも、株式配当金の支払、役員賞与の支給なども「決算資金」に含まれます。
ちなみに、同じ税金といっても消費税や源泉所得税を支払うための資金融資はイヤがられます。
どちらの税金も「預り金(顧客あるいは従業員からの)」としての性格を持ち、会社に貯まっているはずのおカネだからです。気を付けて。
その他運転資金
ちょっとビミョーな理由の資金使途も、実はあったりします。それが「その他」。
一時的な赤字などを理由に業績が落ち込んでいる会社は、持っているおカネもまた落ち込むことがあります。
赤字でおカネを返すチカラが無い、返済する元手が無い会社には、銀行は原則おカネを貸しません。
とはいえ。それが融資先である場合、もしも倒産してしまうようなことがあれば貸したおカネは貸し倒れ。元も子もありません。
「しかたがない、メインバンクとしてここはひとつ・・・」というような融資をすることを「追い貸し」と言ったりします。
また、赤字とまではいかないにせよ。貸したおカネの返済が続いている中で、会社の資金残高が厳しくなることがあります。
このままいくと、資金繰り的にマズい。おカネが足りない。そんなケース。
このときもまた「しかたない・・・」というような判断のもと、行われる融資があります。通称、「ハネ資金」。
もちろん、「おカネを返すためのおカネを貸す」なんてことはおかしいわけで。
表向きの理由は、「経常運転資金」や「増加運転資金」のように振る舞うのが大人のマナーとなっております。悪しからず。
シンプルな設備資金
本社・工場、社用車、機械、備品など、いわゆる設備投資に必要な資金である「設備資金」について。
何を買うかはいろいろだけど
設備資金をカンタンに言えば。設備を買う、ということ。それだけです。
ところが、「なにを買うか?」と言えばいろいろあります。たとえば、
- 本社や事務所
- 工場とその機械
- 店舗とその内装
- 社用車
- 器具備品類 などなど
そのように、それぞれ買うモノをはっきりさせておカネを借りる。これが「設備資金」です。
長期返済のメリット
さきほど列挙した「買うモノ」は、通常、長く使うことが前提のものばかりです。
長く使うことで、長く会社の事業に貢献し、売上が安定あるいは増加し、返済資金へと回ります。
よって、設備資金の返済期間は、1年を超える「長期」になります。
長期で返済できるということは、一回一回の返済金額を抑えられるということです。
反対に、設備資金のような大きな金額を、短期で返済するのでは会社の資金繰りはもちません。
何を言いたいのかというと、ほんとうは設備資金なのに運転資金で借りたりしないように、ということ。
いろいろな理由で設備資金の名目を出しづらいからといって。ほんとうは設備を買うのに運転資金として都合するようでは、近々厳しい現実が待っています。
まとめ
銀行融資の資金使途についてお話をしてきました。
これらの資金使途に当てはまらないものというのは、銀行融資はムリ、困難であることを覚えておきましょう。
銀行からおカネを借りるのに「資金使途」は重要です。
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きょうの執筆後記
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