銀行員が来たけれど、何を話せばいいものやら・・・
そんなことはありませんか? 何も話さなければもちろん、銀行に関心のないことを話すのでは、銀行員の足は遠のくばかり。良いコミュニケーションがとれません。
というわけで。銀行員と何を話してよいかわからないときこそ話して欲しい5つのこと、についてお話をします。
銀行担当者の関心事を話せば、融資はよりスムーズになる
銀行の担当者が会社にやってきた。そんなときに、話をすることを面倒くさがってはいませんか?
銀行員がやってくるのには理由があります。たとえば、ノルマ達成に向けた「セールス」という理由はあるでしょう。
「だから、銀行担当者の話を聞くのはイヤなんだ」とおっしゃる社長さんもいます。
けれども、セールス目的だけというものでもなく。「会社のことがもっと知りたい」という理由もあるものです。
これまた「調べられているようで気味が悪い」とおっしゃるかもしれませんが。会社について知らせることは、会社側にもじゅうぶんなメリットがあります。
それは、融資の審査・実行がスムーズになるということ。
銀行は融資をするときには、相手先のことを審査します。貸しても大丈夫だろうか、返してもらえるだろうか、ということを多面的に審査します。
この点、普段からお付き合いのない会社だと、一から調べることになり時間がかかります。時間がかかるだけならまだしも、「よくわからないので貸すのは不安だ」ということにもなりかねず。
そんなことにならぬよう。融資を受けようとするときばかり話をするのではなく、普段から、良質なコミュニケーションをとることでスムーズな融資の審査・実行を目指しましょう。
銀行は内容や状況がよく理解できている会社には融資をしやすいと感じます。銀行に自社のことをよくわかってもらえるよう、「会社について」知らせていくのです。
銀行の担当者がやって来たけれど、何を話してよいかわからない。そんなときこそ、「会社について」を話してみましょう。
そのために知らせるべき「会社について」とは具体的にどんなことなのか? このあとお話をしていきます。次の5つです。
- ウチはこんな会社、ウチの商品はこれ
- 売上や利益の現況、見込み
- おカネの動き
- 他の銀行との話
- 自分自身のこと
ウチはこんな会社、ウチの商品はこれ
銀行員に話をすべきことの1つめは、「ウチはこんな会社」「ウチの商品はこれ」ということについて。
いやいや、そんなことはさすがにわかっているだろう。そう思うかもしれませんが、そうでもありません。
よかったらこんど、銀行の担当者に聞いてみてください。ウチの会社の特徴ってなんだと思います? とか。ウチの会社の商品って説明できます? って。
もし答えることができなかったとしても。それは、銀行員の怠慢や勉強不足だとは言い切れません。むしろ、会社がきちんと伝えていない。そう理解すべきです。
たとえば、伝え方としては、
- 会社案内や商品(あるいはサービス)のパンフレット、写真などを使って説明する
- 新聞や雑誌など、メディアで取り上げられた記事を見せる
- 会社の中(事務所、営業所、工場など)を見学してもらう などなど
一例として、ネジを製造している会社があるとします。この会社について、銀行員が「ネジ製造業」だとしか答えられないのでは不十分です。
どんなネジを、どんな得意先に、どんな売り方で製造・販売しているのか。ビジネスモデルの理解が大切です。
他の会社が容易にマネできないようなネジをつくっている、得意先に大手企業がある、独自の販売ルート・ノウハウを保持しているなど。優位性があるのであれば、融資審査には好材料です。
そういった会社の強みや個性をきちんと知ってもらうこと。これが意外とできていないというケースが少なくありません。
銀行担当者に「えっと・・・ ネジをつくってる会社でしたよね」くらいの不十分な回答をされないようにしましょう。
それにはお客さまに説明するのと同じくらいの気持ちと姿勢で、銀行にも自社のことを日頃から伝え続けることです。
売上や利益の現況、見込み
銀行は、会社の売上や利益について、知りたがっています。
売上があってはじめて経費を払うことができ、その残りとして利益が生まれる。その利益で借入金の返済をすることができる。だから、売上や利益に強い関心があるのです。
「それなら、決算書を毎年見せているじゃないか」と言われるかもしれませんが。それは、決算日時点でのこと。決算日から時が過ぎれば、情報は陳腐化します。
決算から数か月もしたら、もしかしたら業績が悪化してはいないだろうかと気になります。できるだけ最新の情報を知りたい、それが銀行の思いです。
ですから銀行との話の中で、たとえば、
- 月次試算表で、毎月ベースの業績について説明する
- 計画書と現状との差異を明示し、差異の大きなところについての分析結果と対応策を説明する
などが有効になります。
業績が安定あるいは伸びていれば、銀行は安心するでしょう。不安定あるいは下がっていても、対応策が明瞭であれば期待を持ってもらうことができるかもしれません。
また、なによりも。試算表をつど作成し、検証し、それを語ることができる会社として、「しっかりした信用できる会社(あるいは経営者)だ」との評価にもつながります。
これに対し、融資を受けたいというタイミングでのみ試算表を提示するようでは、銀行としてもにわかには信じがたいこともあるもので。「次の決算まで待ちましょうか」といった反応もありえます。
いざという時のスピーディーな融資への備えとして、スピーディーな情報開示にも努めましょう。
おカネの動き
先述した「売上・利益」の動きに関する数字とは別に。「おカネ」の動きに関する数字についても伝えましょう。
「おカネの動き」について、別の言い方をするのであれば「資金繰り」です。銀行員は、その会社の資金繰りについても知りたがっています。
なぜなら、売上・利益の動きと、おカネの動きは必ずしも一致しないからです。売上や利益が順調だから、その会社は大丈夫だとは言い切れないのです。
ときおり耳にする「黒字倒産」の言葉が示すとおり、利益が出ていても潰れてしまう会社があります。これを「勘定合って銭足らず」とも呼ぶわけですが、そのようなことがないかを銀行は危惧しています。
会社としても当然に危惧すべきであり、売上・利益とは別に、おカネの動きについても把握する必要があります。これを銀行員に伝えるようにしましょう。具体的には、
- 資金繰り表を見せながら、向こう半年から1年程度のおカネの動きを説明する。併せて、融資が必要になりそうな時期・理由について明示する
- 売上先や仕入先の決済条件変更(翌月末入金が翌々月末入金になった、など)など、資金繰りに影響を与える出来事を知らせておく
上記のような「おカネの動き(資金繰り)」に関することは、会社が話をしない限り、銀行には知る術がないと言っていいでしょう。決算書や試算表から読み取ることも難しく、そもそも読み取ることができない内容もあるからです。
この点、会社が普段から銀行に情報開示しておくと、銀行は融資に対する準備が早くできるようになります。融資が必要な理由や経緯も把握しているので審査もスムーズでしょう。
理想は銀行の担当者が、会社の資金繰りをイメージできること、理解できることです。そこまでできれば、融資をお願いする以前に、銀行の方から融資提案をもらえるような関係性が期待できます。
他の銀行の動き
銀行が知りたいことのひとつとして、「他の銀行の動き」が挙げられます。他の銀行が、その会社とどのようなお付き合いをしているのか、ということです。
銀行は、自分のお客さまが競合相手に取られてしまうことを嫌います。これは「普通の会社」といっしょです。
一例を挙げれば。自行の融資先が、他の銀行から融資を受けて、自行の融資を完済されてしまった。なんてことは困るわけで。他行の抜け駆けに注意を払っています。
ですから。融資先の会社に、他の銀行がどのような「提案」をしているのかは、銀行の関心事なのです。たとえば、
- 既存の借入金よりも低利率での融資提案を他の銀行から受けている
- 他の銀行から、「ぜひ融資を受けて欲しい」と頼まれている など
これらの情報により、銀行には「(他の銀行に)負けてなるものか」の競争原理が働きます。
話を聞いた銀行にとっては営業活動の機会となりますし、話をした会社側も有利な条件を引き出す機会になりえます。
そういう意味では、銀行員に伝えるのは「自社にとって有利な情報だけにする」ようにしましょう。
たとえば、「別の銀行で金利引上の要請をされちゃって・・・」なんて話をしようものななら、「ウチの銀行も金利引上げなきゃ」という、会社にとっては不利益な競争原理が働くことになりかねません。
いずれにせよ。他行の動向に関する話というのは、銀行担当者は関心をもって聞いてくれることでしょう。
自分自身のこと
銀行員と話をすべきことのさいごとして。「自分自身のこと」が挙げられます。
自分自身のことと言っても。プライベートなことをおしゃべりすればいい、というよりは。これまでの経営者の経歴、会社の社歴や業歴に関することです。
創業社長であれば、どういう思いで事業を起こしたのか。2代目社長などであれば、どういう経緯で会社を引き継いだのか、など。
その後の現在までの過程や、現在抱える課題や問題、今後の目標などについて触れていくのも良いでしょう。
これにより銀行員は、社長のひととなりや考え方。会社の状況や方向性などをうかがい知ることができます。
銀行は会社とお付き合いをするにあたり数字で測れるモノ(定量要因と呼びます)だけを見ているわけではなく、数字では測れないモノ(定性要因と呼びます)も見ているのです。
極端に言えば、いくら会社が儲かっていようと、経営者の人間性に問題があれば融資をしたくはないでしょう。逆に、少しくらい業績が悪くても、経営者の人間性を評価していればなんとか応援したいとも思うでしょう。
そこに、会社や経営者自身のことを話す意味があるわけです。
もっとも、突然に昔話をされても面食らうでしょうから。経営計画書などを説明しながら、ふと昔語りを加えてみるとか。試算表を説明しながら、現状の課題・問題点から過去の課題・問題点への対応結果にも触れてみるとか。自然な流れで話してみましょう。
ちなみに。経営者自身の趣味などプライベートに触れることも悪くはありません。単純に「マラソンが趣味」という話もあれば、日常的な運動で健康管理に余念がないことをアピールするのもいいでしょう。
松下幸之助の経営哲学が好きだ、などという話も人間性が垣間見えておもしろいかもしれません。
とはいえ、毎回毎回プライベートな話ばかりを長々と、はやめておきましょう。忙しい銀行担当者の足が遠のく原因になってしまうかもしれないので。
まとめ
銀行員と何を話してよいかわからないときこそ話して欲しい5つのこと、についてお話をしてきました。
- ウチはこんな会社、ウチの商品はこれ
- 売上や利益の現況、見込み
- おカネの動き
- 他の銀行との話
- 自分自身のこと
これらは銀行員が来た時ばかりでなく、こちらから銀行に足を運びお話をするのも良いでしょう。
銀行が「聞きたい」と思っている話を、折に触れてし続ける。結果、銀行の側から寄ってくる、そんなコミュニケーションが理想です。
銀行と良いお付き合いができれば、融資の機会が広がります。資金調達力にも差が出ます。面倒がらずに、ぜひ、銀行と話をしてみましょう。
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きょうの執筆後記
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