ウチ(の会社)はおカネを借りなくてもだいじょうぶ。
ほんとうに? 実は、融資を受ける必要がある、融資を受けたほうがいいにもかかわらず。その必要性に気付いていないことが少なくありません。
ということで。決算書を見て「融資が必要か?」を3分で見極める方法、についてお話します。
「融資が必要だ」ということに気付きましょう
会社・個人事業者がおカネを集める(資金調達する)手段のひとつに銀行融資があります。
などと言うと。こんなことを思われるかもしれません ↓
- いやいや、ウチには融資なんて必要ない
- おカネはなんとか回っているからだいじょうぶ
- 融資は受けているけど、これ以上は考えていない
それはそれで、ひとつの方針ではありますが。
ほんとうに融資が必要ないのかどうか、決算書を見て確認をしておきませんか? むずかしいことはありません、一瞬です。
決算書(あるいは試算表)を引っ張り出して、「現金預金」の残高を見てみましょう。融資が必要だ、と言える決算書は次のとおりです ↓
現金預金の残高 < 月商2ヶ月分(年間の売上高 ÷ 12ヶ月 × 2ヶ月)
つまり。「現金預金」の残高が、月商2ヶ月分より少なければ、「融資は必要だ」と判断します。
言うまでもないことですが、現金預金の残高が月商の2か月を割って、少なければ少ないほど資金繰りが厳しくなります。なかには、1ヶ月を割っているという決算書もあるでしょう。
「なぁんだ、そんなことか」と思うかもしれませんが、問題はそこです。
資金繰りが厳しいのが「あたりまえ」で慣れてしまったがゆえに、融資の必要性に気付かない。気付いていない。
経営者に加えて、顧問税理士でさえ、「まぁ、こんなもんだろ」と考えてしまうほどですから。あらためて確認が必要なポイントです。
「月商2ヶ月分より少ない現金預金」の世界で起きること
ではなぜ、現金預金の残高が月商2ヶ月分よりも少ないと融資が必要だと言えるのか?
理由は、現金預金の残高が少なければ少ないほど、次に挙げるリスク(危険)が高まるからです ↓
- 売上入金のタイミングと仕入・経費支払のタイミングによっては資金ショート(おカネが足りない)しやすくなる
- 不測の事態が起きたとき(得意先の倒産、突発的な費用の発生など)に、体制を立て直すまでの時間稼ぎができない
これらのリスクを考えたときに、月商2ヶ月分の現金預金は「最低ライン」だと言えます。
現金預金は多ければ多いほどよいけれど、この「最低ライン」を割るようであれば、融資の必要性を考えるべき。そういうことです。
事業・会社に将来性が無く、借りたおカネを返せないというのであれば融資を受けるべきではありません。
しかしながら、たいていの場合、事業の継続を考えているはずです。そのような状況にあっては、おカネが足りなくなれば「おしまい」なのであり、「借りてもだいじょうぶなのか?」は愚問です。
事業を継続するために、つぶさないために、必要であれば借りる。借りるしかありません。
「融資が必要=借りられる」わけではない
融資が必要であることはわかった。では、銀行からおカネを借りようじゃないか。と言うのでは、まだちょっと早すぎます。
おカネを貸してくれるか否かは、銀行の判断にかかっているからです。融資を受けるにも、銀行の審査をパスしなければなりません。
というわけで。こんどは、銀行の眼で決算書を確認しておく必要があります。だいじょうぶ、これも難しくはありません。
「貸しても安全?」を確かめる3つのポイント
ではさっそく。銀行が、「この会社におカネを貸しても平気かな? 安全かな?」ということを判断するときのポイントから。
決算書を見ながら、電卓片手にチェックをしてみましょう ↓
- 「税引後利益+減価償却費」がプラス
- 「資産」の総額が「負債」の総額よりも大きい
- 「借入金 ÷ (税引後利益+減価償却費)」が10以下
①の「税引後利益+減価償却費」は大きければ大きいほど良し。返済をする「収益力」が高い、と見られます。
②も「資産」が「負債」よりも大きければ大きいほど良し。万一にも耐えうる「財産力」が高い、と見られます。
③は、①で計算した「収益力(税引後利益+減価償却費)」に対して、借入金が大きすぎないかを見ています。収益力の10年分以下の借入金が望ましい、という意味です。
上記の3つのポイントについて、クリアできないものが多いほど、融資を受けることは難しくなります。
また、クリアできていても、クリアの度合が小さいほど、融資は厳しい目で見られることになります。
そのように考えると。融資を受けるのにもタイミングがある、ということです。
決算書が良い状態のときにきちんと借りておく。これが融資を活かす王道です。
「アヤシゲなおカネはない?」を確かめる2つのポイント
さきほどの「貸しても安全?」に続いて、もうひとつ。決算書のなかに「アヤシゲなおカネはない?」をチェックです。ポイントは次の2つ ↓
- 「仮払金」が計上されているとアヤシイ
- 「貸付金」が計上されているとアヤシイ
①の「仮払金」は、銀行から見ると「使途不明金」です。なにに使ったかわからないおカネ。
こういう会社におカネを貸すと何に使うかわからない。だから「仮払金」があるような会社にはおカネは貸さない、となります。
また、「仮払金」とは文字どおり仮の勘定科目であり、決算書に掲載されるべきものではありません。決算書の「仮払金」は、経理の機能不全を露呈するばかりですからやめましょう。
②の「貸付金」は、多くの場合、経営者やその親族・関連会社への貸付です。銀行は、この貸付金を嫌います。
なぜなら、銀行がその会社のために貸したおカネを、別の人(経営者やその親族・関連会社)に使われてしまうかもしれないからです。
そもそも、貸付金があるのなら。おカネを借りる前に、「まずはそれを返してもらいなよ」という話なのであり。「貸付金」が掲載された決算書は、おカネを借りにくくするばかりです。
まとめ
決算書を見て「融資が必要か?」を3分で見極める方法についてお話をしてきました。
- 現金預金は月商2ヵ月分より少ないか?
- 収益力、財務力、借入金が多過ぎないか、をチェック
- アヤシゲなおカネをチェック
厳密に言えば、決算書を見るべきポイントはほかにもありますが。3分で見極めるのであれば、ざっとこんなところです。
たったの3分。すぐにチェックをはじめましょう!
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きょうの執筆後記
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