銀行から融資を受けたい!
と言うのなら。「融資に強い決算書」をつくりましょう。その際に、経営者が持っておくべき考え方を3つお話します。
おカネを借りるなら、融資に強い決算書がなくっちゃね
事業を続けていくうえで必要不可欠な「おカネ」。そのおカネを集めるための貴重な手段が「銀行融資」です。
とくに小規模零細企業にとっては、数少ない資金調達手段であり。銀行融資活用のウマい・ヘタが、事業の行方(継続、成長)を左右すると言っても過言ではありません。
そんな銀行融資の審査にあたって、銀行がとりわけ注目するのが「会社の決算書」です。
会社の成績表とも言える決算書を見て、「おカネを貸した場合、返してもらうことはできるのか」を銀行はチェックしているのです。
ですから、おカネを借りたい・借りるかもしれないという会社は、「銀行融資に強い決算書」をつくることに気を配らなければいけません。
というわけで。経営者が押さえておくべき、融資に強い決算書をつくる際の考え方についてお話をしていきます。次の3つです ↓
- 「自腹を切ってでも利益」の策を持つ
- いちどは決算書を予測する
- 顧問税理士まかせにしない
それでは、順番に見ていきましょう。
《考え方1》「自腹を切ってでも利益」の策を持つ
融資の審査で、銀行が注目をする決算書。その決算書について、もっとも大事になるのが「利益」です。
利益があってはじめて、「借りたおカネを返すチカラがある」と見てもらうことができるからです。だから、利益は大きいほど良い。利益は大事。
利益が大事だなんて何をいまさら、と思われるかもしれませんが。実際には多くの決算書において、「利益」は大事にされていないものなのです。
例を挙げましょう。
- 税引後利益(税金を引いた後の利益)が数万円~数十万円ていどマイナスなのを放置している
- 納税を嫌い、税引前利益(税金を引く前の利益)をほぼほぼゼロに調整してある
上記例について、それぞれ説明を加えます ↓
《例①》税引後利益が数万円~数十万円ていどマイナスなのを放置
税引後利益(税金を引いた後の利益)が数万円~数十万円ていどマイナス、という決算書をしばしばお見かけします。
このような決算書は、おカネを借りることを考えると、「融資に弱い決算書」となってしまいます。
融資の審査において、黒字か赤字かには天と地ほどの差があるからです。極端な話、1円でもいいから黒字のほうが良い。
であるならば。たとえば交際費など経費の一部を、経営者が自腹を切ることで黒字化する。という策もあります。自腹を切った分だけ、経費が減り、利益が増えます。
数百万円の赤字となると自腹も難しいですが、数万円~数十万円ていどであれば、なんとかできることもあるものです。
もちろん、それとて小さな金額ではありませんが、その数万円~数十万円がのちのちの「何百万円、何千万円の融資」の実行可能性を高めるかと思えば・・・
おカネを借りたい・借りるかもしれないのであれば、経営者は「自腹を切ってでも利益」の発想と覚悟を持っておきましょう。
「自腹を切る」とは、会社経費の一部を除外する、つまり、粉飾(利益の水増し)ではないのかとの見方もあるでしょう。
しかしながら、「自腹」が経営者が経営責任を果たす手段と考えれば、偽装や不正による粉飾とは性質を異にするものです。「自腹」はアリだ、とわたしは考えます。
《例②》納税を嫌い、税引前利益をほぼほぼゼロに調整
税引前利益(税金を引く前の利益)をほぼほぼゼロに調整してある、という決算書もまた、しばしばお見かけします。
どういう手を使って「ほぼほぼゼロ」にしたかはともかく、本来もっと大きな黒字であったのであれば、やはり「融資に弱い決算書」になってしまいます。
必要な節税はすべきですが、過度な節税はいけません。納税を嫌っての過度な節税になっていないかを問いましょう。
いまはよくても、1年後、2年後にはおカネが必要になるかもしれません。融資の審査では、2~3年分の決算書を銀行はチェックします。
そのときになって、「あのときもっと利益を出しておけばよかった・・・」というのでは後の祭りです。気をつけましょう。
《考え方2》いちどは決算書を予測する
月並みなことではありますが。決算日を迎える前に、いちど決算書の予測をしておくことがベストです。それもできるだけ早く予測する。
予測により黒字であることがわかれば、その利益額から納税額も試算できます。結果、決算・申告前に、慌てて過度な節税に走ることもなくなります。
予測が早ければ早いほど、納税資金を準備するための時間に余裕ができるからです。
また、予測により赤字であることがわかれば、なんとか黒字にできないかと考えることもできるでしょう。予測が早ければ早いほど、取れる打ち手は多くなります。
たとえば、《考え方1》でお話した「自腹を切る」というのも、黒字化に向けた打ち手のひとつです。
ところが、決算日の前日になって突然、自腹を切ろう(個人的なおカネを用意しよう)かという場合。その金額によってはムリだ、ということがあるかもしれません。
それが、1か月前であればやりようがあったのに・・・ ということもあるのですから、予測は早め早めに限ります。
ちなみに、自腹はおカネを払うそのときに切るから自腹なのであって。少なくとも、決算日を過ぎてから切るような自腹は「粉飾(利益の水増し)」と受け取られかねません。
自腹を切るハナシは一例として。何にせよ、取りうる打ち手を増やすために、ムリなく打ち手を実行できるように、なるべく早くにいちど決算書を予測しましょう。
会社のおカネを使っていちど経費に計上していたものを、決算日を過ぎてから「やっぱり社長が負担する」としようとすると。
決算書には、「貸付金(社長への)」などの勘定科目が残ってしまいます。そのような勘定科目は銀行が嫌うものでもあり、せっかくの自腹も逆効果になります。
《考え方3》顧問税理士まかせにしない
決算書の作成を顧問税理士にまかせている会社は少なくないでしょう。それはそれでかまいません。
けれども、まかせすぎないようにしましょう。まちがっても、決算書をロクロク見もせず、OKしてはいけません。
誤解を恐れずあえて言います。税理士は、税金の申告をするための決算書をつくるのであって、融資に強い決算書をつくっているわけではありません。
利益がマイナス(赤字)、利益がトントン(ほぼほぼゼロ)である場合、「社長、税金が無くてよかったですね」の世界です。
経営者のほうもまた、「税金を出さない税理士は腕が良い」と勘違いをしていることがあります。
決算書がちょっとマイナスであろうと、トントンであろうと、違和感を感じることもなく。「融資に弱い決算書」の出来上がりです。
ですから、決算書の作成を税理士に任せるのであれば。おカネを借りたい・おカネを借りるかもしれない経営者は、「融資に強い決算書を頼む」と税理士に言わなければいけません。
とはいえ、すべての税理士が融資に精通していることはなく。むしろ、融資に精通している税理士は少数派です。
これは非難をしているのではなく、税理士資格をとるにあたって「融資」の試験などないのですからしかたのないことでもあります。税理士は、基本、税の専門家であり、融資の専門家ではないのです。
これらを踏まえて、経営者は、「融資に強い税理士を選ぶ」「自らも勉強する」という選択肢を検討しましょう。
まとめ
融資に強い決算書をつくる3つの考え方についてお話をしてきました。
事業をしていれば、いつなにが起きるかはわからず、おカネがいつ必要になるかは分かりません。
そんなときに困ることがないように、「融資に強い決算書」を意識しておきましょう。
- 「自腹を切ってでも利益」の策を持つ
- いちどは決算書を予測する
- 顧問税理士まかせにしない
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きょうの執筆後記
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