運転資金とはなにか、説明できますか? 運転資金が増加したら融資を受けよう、って説明できますか?
「それはちょっとムズカシイ…」と思ったら。ぜひとも押さえておきたい「運転資金」について学びましょう。
運転資金が増加したら融資を受けよう
事業を行うにあたって必要だとされる「運転資金」。運転資金とはいったい何者なのか、はのちほどお話するとして。
その「運転資金」が増加をしたときには、銀行融資を受けるチャンスがあります。
銀行は「使いみち(=資金使途)」がきちんと決まっているおカネしか貸してはくれません。貸し出すおカネの原資は、預金者からあずかった大事な預金だからです。
ですから、「なんに使うかはわからないけど貸して」というのでは、銀行融資を受けることはできないのです。
いっぽうで、「運転資金」は立派な使いみちとして、銀行融資を受けるチャンスがある。
ここから先は、運転資金とはなにかを理解し、その運転資金を理由としてきちんとおカネを借りましょう。というお話をしていきます。
運転資金ってなんだ?
では、そもそも「運転資金」とはなんなのか。
運転資金=事業をするのに必要な立替金
運転資金とは、事業をしていくにあたって必要になる「立替金」だと説明されます。
これによれば。運転資金を理由におカネを借りるというのは、「立て替えるにはおカネ(銀行融資)が必要だよね。だから貸して」という理屈になります。
じゃあ、ウチの会社はいくらの立替金(運転資金)が必要なのか? その具体的な金額を計算する方法は次のとおりです ↓
運転資金 = 売掛金 + 在庫 - 買掛金
いきなりの算式に面食らったかもしれませんが、ひとつずつ見ていきましょう。まずは、「在庫」から。
モノを売る商売をイメージしましょう。おカネを払って商品を仕入れます。売れるまでは、店舗の棚や倉庫の中で「在庫」になります。これは、おカネが在庫に化けている状態です。
在庫が売れればおカネになりますが、それまではおカネになりません。つまり、在庫の金額だけ、おカネを立て替えていると言えます。
次に「売掛金」です。売掛金とは、平たく言えば、ツケでの売上、未回収のおカネです。売り上げたけれども、ツケ(売掛金)であるあいだはおカネにならない。
これも、おカネが売掛金に化けている状態です。やはり、売掛金の金額だけ、おカネを立て替えていると言えます。
さいごに「買掛金」。「買掛金」は売掛金の逆です。仕入の支払をツケにして、おカネの支払いを待ってもらっている状態。立て替えの逆なので、算式上はマイナスをしています。
こうして計算された「運転資金(=立替金)」の金額分だけ、会社にはおカネを借りる理由があるということになります。
受取手形や支払手形がある場合の運転資金の計算式は次のとおりです。考え方としては、受取手形は売掛金と、支払手形は買掛金と同質だということです。
運転資金 = 売掛金 + 受取手形 +在庫 - 買掛金 - 支払手形
運転資金の計算を具体例で確認してみよう
では、運転資金の計算を具体例でみてみましょう ↓
《問題》下記を見て、運転資金の金額を計算してみましょう
- 売掛金 300
- 在庫 100
- 買掛金 100
さぁ、いかがでしょうか。さきほどの算式にあてはめれば、特に難しいことはありませんよね。答えは次のとおりです ↓
《解答》
運転資金 = 売掛金 300 + 在庫 100 - 買掛金 100 = 300
この具体例の会社であれば、運転資金 300を理由に、300の銀行融資を期待することができるということになります(もちろん、融資可否の審査は必要です)。
「増加」運転資金ってなんだ?
さきほどの「運転資金」の続きとして。こんどは「増加運転資金」の話をしていきます。
運転資金はいつも一定ではありません。そもそもあった運転資金がさらに増加したときには、その増加分は融資を受けるチャンスになります。
というのが、本記事の冒頭で触れた「運転資金が増加をしたときには融資を受けましょう」の意味するところです。それでは、詳しく見ていきましょう。
増加運転資金の計算を具体例で確認してみよう
「運転資金」の説明は済んでいますから、ここではいきなり具体例からいってみます ↓
《問題》下記を見て、増加した運転資金(平成28年10月末から平成29年10月末までのあいだに)の金額を計算してみましょう
[平成28年10月末]
- 売掛金 300
- 在庫 100
- 買掛金 100
[平成29年10月末]
- 売掛金 600
- 在庫 200
- 買掛金 200
さぁ、いかがでしょう。解答のポイントは、平成29年10月末の運転資金から平成28年10月末の運転資金をマイナスすることです ↓
《解答》
- 平成28年10月末の運転資金 = 売掛金 300 + 在庫 100 - 買掛金 100 = 300
- 平成29年10月末の運転資金 = 売掛金 600 + 在庫 200 - 買掛金 200 = 600
- 増加運転資金 = 平成29年10月末の運転資金 -平成28年10月末の運転資金 = 600 - 300 = 300
以上から、増加運転資金は 300です。もし、この具体例の会社が、平成28年10月末時点で運転資金としての借入 300があったとしても。
平成29年10月末時点では、さらに増加した運転資金分の 300について、増加運転資金を理由に銀行融資を期待することができるということになります(もちろん、融資可否の審査は必要です)。
ちなみに、上記の具体例では、取引の条件(入金サイト、支払サイト、月商に対する在庫の割合)は変わらずに、売上が倍増したケースをイメージしています。
つまり。売上が増加するだけで、運転資金(立替金)が増え、資金が枯渇することがある。おカネは不足することもあるのだということを覚えておきましょう。
売上増加はうれしいけれど、おカネが無くなることもあるのです。
問題発生! なぜ運転資金は増加するのか?
ところで、運転資金はなぜ増加するのでしょうか。さきほど、売上が増加をすれば、運転資金も増加すると言いました。
けれども、運転資金が増加する理由はそれだけではありません。
運転資金が増加する理由いろいろ
以下のようなケースもまた、運転資金が増加するケースとして挙げられます ↓
- 売掛金の入金サイトが長くなった、売掛金に未回収(不良債権)が発生した
- 売れない在庫(不良在庫)が発生した
- 買掛金の支払サイトが短くなった などなど
上記のケースを、運転資金の計算式にあてはめてイメージすれば、運転資金が増加をすることがわかるでしょう。
なにが言いたいかというと。運転資金が増加する理由には「ネガティブ」なものがあるということです。
たとえば、不良債権や不良在庫。いくら、運転資金が増加したとは言っても、銀行からしてみたら、不良債権や不良在庫の穴埋めにおカネを貸したくはありません。
支払サイトが短くなった背景には、仕入先からの信用低下がある(早く払え、と言われる)のかもしれないと考えれば、やはり銀行は警戒するでしょう。
銀行は運転資金増加の理由を知りたがる
前述したとおり、運転資金の増加にも理由がいろいろあります。ゆえに、銀行は融資審査の際に必ず、運転資金増加の理由を問います。
「運転資金を計算した結果、増加したから」ということだけでは、おカネを貸してはもらえません。
したがって、増加運転資金を資金使途にするのであれば、増加した理由をきちんと説明できなければいけません。
その理由が売上増加であれば、契約書や受注書、請求書などを証拠として説明することも必要でしょう。
不良債権、不良在庫でであれば、経緯や影響度合、今後の対応・対策などを説明できなければ、融資は難しいものになるでしょう。
また、支払サイトの短期化についても、そこにいたった経緯や今後の対応・対策の説明が求められることになるはずです。
大事なのは、計算の「結果」ではなく、結果にいたった「理由」です。
運転資金を資金使途にして融資を受けるのであれば、金額の根拠(計算結果)だけではなく、運転資金増減の理由をしっかりと押さえておきましょう。
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まとめ
運転資金、増加運転資金を理由に、銀行融資を受けるとはどういうことかについて、お話をしてきました。
ポイントは、運転資金については、不足するおカネ(立替金)として融資を受けるべきであること。
また、その運転資金の計算方法を押さえておくこと。
さいごに、運転資金の増減に注意をはらい(理由も含めて)、特に増加したときには増加分の融資を検討することです。