できあがった決算書を見て社長が困惑するばかり。そんな「ダメ決算書」があります。
ダメ決算書とはどのようなものか、その「ダメ」にはどう対応すればいいか。お話をしていきます。
社長を困らせる2大ダメ決算書とは?
本来、経営に役立つはずの決算書が、社長を困惑させるばかり。そんな「ダメ決算書」があります。
次の2つの決算書です↓
- 融資が受けられない決算書
- 税金が高過ぎる決算書
いずれの決算書も、それを見た社長は困ってしまうことでしょう。
そんなことにならないように。
なぜ、このようなダメ決算書ができてしまうのか、どうしたらダメ決算書を回避できるか、についてお話をしていきます。
融資が受けられない決算書
「銀行からおカネを借りたい」あるいは「借りるかもしれない」という会社は気をつけましょう。
気をつけるべきは「赤字(利益がマイナス)」の決算書です。
利益が無ければおカネは借りられない
赤字の決算書を見て、「いやぁ、税金が出なくてよかったね」などと言っている場合ではありません。
なぜならば。「赤字」というのは、銀行がもっとも忌み嫌う決算書の特徴だからです。
銀行融資のしくみとして。借りたおカネの返済原資は「利益」です。会社は売上から経費を支払い、残った利益で借りたおカネを返済します。
これを言い換えると。利益が出ていなければ、会社は借りたおカネを返せない。ということです。
おカネを貸すことを「ビジネス(=慈善事業ではない)」にしている銀行からすれば、「利益が出ていない会社に融資はできない」と考えるのは当然でしょう。
税金ゼロを喜ぶノンキ者は誰だ?
決算書の作成に関わる税理士もまた、「この点」を理解していないケースがあるので注意が必要です。ここで言う「この点」とは、
- 赤字の決算書では、銀行融資がとても難しくなること
- その会社が「融資を受けたい」と考えていること、あるいは、近い将来に融資を受ける可能性があること
税理士は「税金が高いっ!」と責められる立場にあることが多く、税金ゼロ(=赤字)だとどこかホッとするところがあります。
ゆえに、社長といっしょになって「税金ゼロでよかったね」と喜んでしまうという…
また、税理士が会社の状態をわかっていないこともあります。
社長が融資を受けたいと思っていることや、近い将来に融資が必要になるかもしれない(おカネが足りなくなるかもしれない)ことを、税理士がわかっていないことがあります。
これは、税理士はもともと「税の専門家」であって、「財務(おカネ)の専門家」ではないからです。
そういう意味では、「財務(おカネ)」のことまで考えてくれる・言ってくれる税理士がいたとしたら。それは「とてもラッキーだ」と言ってよいでしょう。
いずれにせよ。融資を受けたい、あるいは、融資を受けるかもしれないのであれば。税金ゼロを喜んでいる場合ではありません。
1円でも黒字を目指せ
極端なことを言えば、たとえ「1円」であっても「黒字」の決算書を目指しましょう。理由は前述したとおり、銀行は赤字が大嫌いだからです。
数万円から数十万円くらい赤字という決算書であれば、「なんとかならなかったのか」をよく考えるべきです。繰り返しますが、1円でも黒字の決算書にはそれだけの価値があるからです。
もちろん、「粉飾をしろ」と言っているわけではありません。認められている経理処理の範囲において、できることはなかったのかを考えるということです。
そう考えると、決算予測がいかにたいせつなものであるかがわかります。赤字の予測額を知るのが早ければ早いほど、黒字化に向けてできることは多くなるからです。
それが、決算日直前、あるいは決算日後になってはじめて赤字額を知るというのではできることなど知れています。結果、赤字を容認するだけです。
「融資が受けられない決算書」をつくってしまう原因はそこにあります。税務申告の間際になってあわてて決算書をつくるという過程に問題があるのです。
毎月の月次決算をきちんとやること、月次決算にもとづいて都度決算予測をすること。税理士とも相談してみましょう。
税金が高過ぎる決算書
税理士まかせにしていて困ったことになる決算書として、「税金が高過ぎる」という決算書があります。
つまり、「予想以上に利益が出ていた」という決算書です。
あまりの税額に度肝を抜かれる3つのワケ
税理士から渡された決算書を見て、想像以上の利益額と税額とにびっくりした。という経験がある社長は少なくないはずです。
びっくりしてもなんとかなる税額であればよいですが、なんとかならないこともあるわけで。「想像以上」は避けたいところです。
そんな「想像以上」になるのには、主に3つの理由が挙げられます↓
- 月次決算もしておらず、毎月の利益を把握していなかった
- 月次決算の精度が低かった
- おカネが無い(あるいは増えていない)ので、利益が出ているとは思っていなかった
これらについて、見ていきましょう。
月次決算もしておらず、毎月の利益を把握していなかった
ふだんは経理処理をしておらず、決算のときにまとめて税理士にお願いしている。というケースがこれです。
経理処理をせずとも、社長のアタマの中の利益と実際の利益とが一致していればよいのですが。そうそううまくいくものでもありません。
経費になると思っていたものが実はならなかったり、収入だと思っていないものが実は収入になったり、と思い違いもあるものです。
そのあたりのズレ(思い違い)を、毎月の月次決算で修正しておかないと、蓄積された大きなズレとして決算で襲いかかってきます。
月次決算の精度が低かった
月次決算をしていてもなお、決算のときの利益に驚くというケースがこれです。たとえば、「在庫」の経理処理が挙げられます。
在庫について毎月棚卸をせず、決算のときだけ棚卸をしているような場合。期首よりも在庫が増えていれば、決算ではその分だけ利益も増えることになります。
在庫金額の変動が大きい会社は、月次決算で棚卸をすべきですが。このあたりのことがわかっていないと、決算で思わぬ利益が吹き出すことがあります。
毎月の利益を12ヶ月積み上げた金額と、決算での利益に大きな誤差が生じるような会社は、月次決算の精度に問題があります。月次決算のやり方を見直しましょう。
おカネが無い(あるいは増えていない)ので、利益が出ているとは思っていなかった
利益は出ているのにおカネが無い、というのは「経営あるある」です。
理由はさまざまですが、利益とおカネの動きは別モノであることを心しておかねばなりません。「勘定合って銭足らず」や「黒字倒産」の言葉がその証左です。
おカネが無いから利益も無い、とは限りませんので気をつけましょう。
まとめ
社長を困らせる2大ダメ決算書についてお話をしてきました。
融資を受けることができない、税金が高過ぎる、いずれも社長は困る決算書です。
これら2つに共通するのは、「受け身でできた決算書」だということです。
経理・月次決算を後回し、税理士任せにしすぎ。そんな「受け身」の姿勢に注意しましょう。
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きょうの執筆後記
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