終わっただけじゃダメ!月次決算で本当にやるべき3つのこと

月次決算で本当にやるべきこと

月次決算終わった〜

って、それ、「終わっただけ」じゃありませんか? 作業として終わった月次決算ではまだ不足。月次決算で本当にやるべきことについてお話をしていきます。

目次

月次決算が「早く終わっただけ」を喜んでいるようではダメ

1年に1回の「本決算(ほんけっさん)」に対して、毎月1回の「月次決算(げつじけっさん)」という言葉があります。通称、「月次(げつじ)」。

1年という長い期間中たった1回だけ決算をする(数字を集計する)のでは不十分であるとの考えから、「せめて毎月1回くらいは決算をしようか」というのが月次決算です。

ちなみに、本決算が「義務」であるのに対して、月次決算は「任意」になります。

したがって、月次決算が早い会社もあれば、遅い会社もある。もっと言えば、本決算はやるけれど(義務だから)、月次決算はやっていないという会社もあります。

このそれぞれにさまざまな状況について、世間一般に言われることがあります ↓

  • 月次決算をやらないのは論外(1年間数字を見ずに過ごすなど、事業者として正気の沙汰ではないから)
  • 月次決算は早ければ早いほどいい(早く終わるほど、数字をもとにした意思決定・行動が早くできるから)

いずれも「ごもっとも」なことです。まったくもって正しい。

ただし、ちょっと足りない。月次決算をやるだけ、早く終えるだけではまだ足りない。月次決算で本当にやるべきことをやっていますか? というのが今回のお話です。

月次決算で本当にやるべきこと、それは次の3つです↓

  1. 売上額だけではなく、利益額も言える
  2. 「利益の増減」と「おカネの増減」のズレの理由が言える
  3. 向こう1年の見通しが言える

ここまでできて、「本当の月次決算」です。これらをできずして、「ウチは月次決算が早い」などと喜んでいる場合ではありません。早いのもけっこうですが、本当にやるべきことをやってこそ。

上記3点について、それぞれのポイントをこのあとお話していきます。

 

月次決算で本当にやるべき3つのこと

終わればイイわけじゃない、早ければイイわけじゃない。月次決算で本当にやるべき3つのことについて。

《本当の月次決算①》売上額だけではなく、利益額も言える

月次決算の成果物である「月次試算表」には、利益額が記されています。その月にいくらの利益が出たのか、という利益額が記されています。

ところが、「売上」ばかりに注目し、「利益」をなおざりにしているケースは意外と多いのです。

その証拠として、「先月の売上はいくらですか?」に答えられる社長はたくさんいるのに、「先月の利益はいくらですか?」に答えられる社長は少ない、という現実があります。

これは、月次試算表の売上ばかりを見て、利益はあまり見ていなかったことをあらわしています。せっかく、月次決算が早く終わっていても、これでは宝の持ち腐れです。

言うまでもないことですが、いくら大きな売上額があろうとも、それ以上にコストがかかっていれば「赤字」です。そう考えれば、売上と利益のどちらが大切かは明らか。

売上が多いけど赤字の会社と、売上が少ないけど黒字の会社、どっちがいいですか? そういうことです。

利益があってはじめて、会社は将来におカネを残すことができます。利益があってはじめて、銀行から融資を受けることができ、きちんと返済をすることができます。

また、規模(売上)にこだわる経営は薄利多売になりやすく、会社(事業)が消耗が激しく疲弊しやすい一面があります。

売上至上主義から利益至上主義へ。「スケールダウン(売上規模縮小)させてでも利益を増やせばいい」という視点も持ちましょう。利益額にも注目しましょう。

《本当の月次決算②》「利益の増減」と「おカネの増減」のズレの理由が言える

月次決算で「利益の増減」までは見ているのに、「おカネの増減」までは見ていない。というケースも散見されます。

たとえば。ある月1ヶ月の利益は100万円でした。では、その月1ヶ月でおカネ(現金預金)はいくら増えたのですか? この質問に答えられるかどうかです。

また、答えられたとしても。おカネの増減額と、利益の金額とのズレに答えられなければ不十分です。

ちなみに、「1ヶ月の利益」と、「1ヶ月のおカネの増減」が一致することはまずありません。利益が100万円だからと言って、おカネも100万円増えるわけではないのです。

カンタンな事例で見ると、こういうことになります↓

【問】次の会社の、今月の「利益」「おカネの増減額」はいくらでしょう?

  • 今月の売上 200万円 … 入金は翌月
  • 今月の経費 100万円 … 支払は今月

【答】

  • 利益 … 売上 200万円 – 経費 100万円 = 100万円
  • おカネの増減額 … 入金 0万円 ー 支払 100万円 = ー100万円

というわけで、「今月1ヶ月の利益」と、「今月1ヶ月のおカネの増減」は一致しません。

もし、事例の会社が、今月のはじめに100万円以上のおカネを持っていなければ、経費支払ができずに倒産です。利益が100万円出ていても、おカネが無ければ倒産する。いわゆる、黒字倒産です。

ですから、「利益が出ているだけ」で安心していてはいけないのです。利益の金額だけではなく、おカネの増減額もチェックしましょう。そのズレの理由にも注目です。

【参考】キャッシュフロー決算書
実際には、上記事例の会社のように、コトはカンタンではありません。もっと複雑な条件によって、利益とおカネのズレを把握することは難しくなります。
そんなときに重宝する帳票・考え方が「キャッシュフロー計算書」です。会計ソフトの付属機能を使う、Excelで自作する、税理士に相談するなどとして作成してみましょう。
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《本当の月次決算③》向こう1年の見通しが言える

月次決算で本当にやるべきことのさいごは、「未来」までを把握しているかどうかです。

1ヶ月の数字をまとめても、それは「過去」でしかありません。過ぎ去ったものだけを見ているのではやはり不十分です。いくら眺めていても、過去は変わりません。

せっかく「過去」という確かなデータがそろったのですから、それにもとづいて「未来」を見通すことにしましょう。過去は変わらなくても、未来ならば変えられます。

そこで、これまでの月次決算の実績を見ながら、向こう1年ていどの「毎月の利益」「毎月のおカネの増減」を予測していくのです。

具体的には、毎月の利益は「予測損益計算書」を作成して、毎月のおカネの増減は「予測資金繰り表」を作成します。

いずれも、過去のデータを参考にする点で、必然的に「現状分析」をすることになります。

利益に関してであれば、○○費にムダがあるなぁとか。おカネに関してであれば、△△社の支払条件を交渉できないかなぁとか。課題が見えてきます。

また、現状分析により明らかになった課題に対して、おのずと「行動計画」が必要になります。○○費はどのように削減していくかとか、△△社とは誰がどういうスケジュールで交渉するかとか。

このように、向こう1年を見通すことには、きちんと現状を分析し、より確実に行動を促すという効果があります。

しかもその背景には、「数字」というもっとも客観的な根拠があるのですから申し分ありません。

月次決算は、「数字を集計しておしまい」にしないことです。集計は、単なる作業であり、後始末でしかありません。数字は未来に活かしましょう。

【参考】予測損益計算書、予測資金繰り表
これらの帳票は、会計データをもとに(CSVデータをエクスポートするなど)、Excelを使って自作するとよいでしょう。
絶対的な「型」があるわけではないので、自社(自分)が見やすいものをつくることがポイントです。
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まとめ

月次決算が終わっただけ、早くできただけ、になっていることがあります。

本当にやるべきことはやっていますか? というお話でした。次の3点、確認をしてみましょう。

  1. 売上額だけではなく、利益額も言える
  2. 「利益の増減」と「おカネの増減」のズレの理由が言える
  3. 向こう1年の見通しが言える

 

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  きょうの執筆後記
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