銀行とは長くお付き合いをしたいもの、ではあるけれど。
こんなときには変えたほうがいいという「変えどき」と、実際に「変えるときの注意点」についてお話をします。
取引銀行の「変えどき」と言える2つのタイミング
事業をしていくうえでの資金調達手段として、欠かすことができない銀行融資。
融資をしてくれる銀行とは永く安定的なお付き合いをしたいものです。原則、そうすべきでしょう。
とはいえ、「これは取引銀行を変えたほうがいい」というタイミングもあるものです。そのタイミングとは次の2つ ↓
- 取引銀行の「貸し出し姿勢」が悪くなった
- 取引銀行の「良くないハナシ」を聞くようになった
それではこのあと、それぞれについてお話をしていきます。
本記事で対象にする「銀行」は、「○○銀行」に限らず、信用金庫・信用組合なども含めた金融機関全般を含みます。
それら金融機関を総称し、便宜的に「銀行」の言葉で統一しておりますことを申し添えます。
《変えどき①》取引銀行の「貸し出し姿勢」が悪くなった
取引をしている銀行を変えたほうがいいというタイミングとして、自社に対する貸し出しの姿勢が悪くなったときが挙げられます。
具体的には、次のようなことが起きる場合です ↓
- なかなか融資をしてくれなくなった
- 融資の回収をしてくるようになった
- 追加の担保・保証人を要求されるようになった
上記のようなことが起きる原因として、大きく2つのことが考えられます。
自社の財務状況・業績が悪いために、銀行から融資をしにくい・したくない会社だと見られている。これがひとつ。
もうひとつは、お付き合いをすべき銀行のミスマッチ。つまり、そもそもお付き合いすべき銀行が、自社にふさわしくないというケースです。
それぞれの理由に分けて見ていきましょう。
自社の財務状況・業績が悪い
銀行は、貸し出すおカネをきちんと返済できそうな会社に融資をします。端的に言えば、黒字の会社に融資をして、赤字の会社には融資をしないという考え方です。
したがって、会社の財務状況が良くない・業績が悪いほど、銀行はあらたな融資に慎重になるし、既存の融資に対する姿勢もきびしくなります。
新規の融資を受けづらくなった。既存の融資を回収しようとしてくる、追加の担保・保証人を求められる、というのはその表れです。
この場合、大原則は「財務状況の改善・業績の向上をはかる」こと。それが第一です。
そのいっぽうで、現状でも融資を検討してもらえる銀行がないか、取引銀行を変えることも考えに入れるべきです。
なぜなら、そんなに簡単に財務状況・業績は良くならないからです。もたついているうちにおカネが尽きてしまえば元も子もありません。
ただし、取引銀行を変えるときは慎重に。既存の融資を他の銀行で借り換えるという行為は、もともとの銀行との「縁切り」を意味します。
銀行からしてみれば、他の銀行に融資を奪われる(借り換えられる)ことは、非常にくやしいこと、ガマンのならないことでもあるからです。
さいごのさいご、あらたな銀行と借り換えの段取りが決定的になるまでは、もともとの取引銀行には慎重な対応(借り換えをさとられない)が必要です。
お付き合いをすべき銀行のミスマッチ
銀行の貸し出し姿勢が悪くなる背景に、そもそもお付き合いをすべき銀行がふさわしくないというケースがあります。
世の中にはたくさんの銀行があるわけですが、本来、「自社に合った銀行選び」をする必要があるのです。
「自社に合った銀行選び」とは、簡単に言うと、自社の身の丈に合った銀行を選ぶということ。大きい会社は大きい銀行と、小さい会社は小さい銀行と。そういうイメージです。
したがって、小さな会社が都市銀行に行くのはおすすめできません。都市銀行のような大きな銀行は、大企業に融資をしたいし、大企業に融資できれば十分なのです。
いっぽうで地方の信用金庫などには、大企業が回ってきません。都市銀行に取られているから。それに、大企業の大きな資金ニーズに応えるだけの資力もないのが信用金庫です。
ですから、小さな会社は信用金庫・信用組合で融資を受けるべきなのです。ちょっと大きくなったら地方銀行、もっと大きくなったら都市銀行。
小さな会社が背伸びをして、大きな銀行から融資を受けようとするとミスマッチが起こります。ミスマッチがあるのであれば、取引銀行の変えどきです。
同じ財務状況・業績であっても、都市銀行は貸してくれないが、信用金庫なら貸してもらえる。それは十分に起こりうることを覚えておきましょう。
《変えどき②》取引銀行の「良くないハナシ」を聞くようになった
取引をしている銀行を変えたほうがいいというタイミングとして、取引銀行の「良くないハナシ」を聞くようになったときが挙げられます。
具体的には、次のようなハナシを耳にする場合です ↓
- 取引銀行が、再編により合併・吸収される
- 取引銀行の業績がかんばしくない
上記のような場合、取引銀行を変えることを検討しましょう。
どうしてかと言うと。現在取引をしている銀行が、他の銀行に合併・吸収されるようなことがあれば、「貸し出し姿勢」が一変する可能性があるからです。
合併・吸収されることにより、従来の貸し出し姿勢ではなく、合併・吸収する側の銀行によるあらたな貸し出し姿勢に変わります。
単純に貸し出し姿勢がきびしくなることもあれば、場合によっては前述した「お付き合い銀行のミスマッチ」も起こりえます。
そのようなことを想定しながら、新規に安定的な取引ができそうな銀行探しをしなければいけません。後手に回らないよう、早めの対応がたいせつです。
また、取引銀行に業績悪化のニュース・うわさなどがある場合。その真相を知ることは難しいものがありますが、火のないところに煙は立たないとも言えます。
合併・吸収の話と同じく、他に安定的な取引が期待できる銀行を探すのが賢明でしょう。
ちなみに。銀行は「まったく新規の会社」と取引をする(融資をする)ことに消極的です。
突然に「借り換えするんで貸してくれ」なんて言うと、銀行は「もともとの銀行が嫌がるような問題がある会社ではなかろうか?」などと考えるからです。
ですからそこは正直にきちんと伝えましょう。「現在の取引銀行に不安がある。安定的に安心してお付き合いできる銀行を探している」、そんなふうに伝えると銀行も安心します。
《おまけ》担当者に不満があるから銀行を変える! はOKか
さいごによく聞くハナシとして。「銀行の担当者が気に入らない! もう銀行変える!」というのは、変えどきとしてどうなのか。
結論から言うと。よほどのことでなければやめたほうがいい、ということになります。
銀行そのものに対する不満であればともかく、担当者一個人のことであれば、冷静に慎重に考えましょう。
ご存知のとおり、「担当者」はいずれ変わります。銀行の担当者は、数年ごとに変わる「しくみ」です。
相性が合わないくらいであればガマンする、必要に応じて担当者の上司を通じて話をするなど。担当者が変わることを待ってみてはどうでしょう。
ここで取引銀行を変えたとしても、担当者一個人の問題というのはいっしょです。良い担当者もいれば、そうでもない担当者もいるのは、どこの銀行でも同じです。
そういう意味では、いま現在の担当者に満足をしていても、いずれ変わってしまうという逆パターンもあるわけですが。
いずれにせよ。取引銀行を変えるにはパワーがいります。時間と手間もかかるし、簡単なことではありません。くれぐれも冷静に慎重に。
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まとめ
取引銀行の「変えどき」と「変えるときの注意点」についてお話をしてきました。
融資を受ける銀行とは、永く安定的なお付き合いをしたいものです。その前提が揺らぐ「変えどき」は押さえておきましょう。
- 取引銀行の「貸し出し姿勢」が悪くなった
- 取引銀行の「良くないハナシ」を聞くようになった
変えどきへの対応が後手に回ると、最悪手遅れ(資金調達できない、資金繰りが回らない)が待っています。