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決算書に『役員貸付金』は銀行融資NG!だから返済・解消する方法を考える

役員貸付金の返済・解消

”決算書に「役員貸付金」? あるよ。”

って、それ。銀行融資でNGになりますから。というわけで、役員貸付金を返済・解消する方法についてお話をします。

目次

決算書に「役員貸付金」が載っていないか確認したの?

銀行融資を受けたい、あるいは、銀行融資を受けるかもしれない、というのであれば大事なことをひとつ。

決算書に「役員貸付金」はNGです。

もう少し具体的に言うと、決算書のなかの貸借対照表、その資産の部に「役員貸付金」がある。これはマズい、ということです。

役員貸付金は、その名のとおり、会社から役員(主に社長)への貸付金です。

役員貸付金を銀行が嫌う2つの理由

役員貸付金があると銀行融資がNGになるのはなぜか?

それは、決算書に計上されている役員貸付金を見て、銀行はこんなことを考えているからです ↓

  1. この会社におカネを貸すと、社長個人のプライベートで使われてしまうかもしれない
  2. 銀行からおカネを借りる前に、貸しているおカネを返してもらうべき

上記①について。そもそも銀行は「会社で使うおカネ」として融資をします。この点で役員貸付金があると、会社に貸したおカネが社長個人に流れる(=役員貸付金)のでは? と、銀行は懸念します。

上記②について。誰かにおカネを貸す余裕があるのなら、融資なんて受ける必要なくない? おカネが必要なら、貸したおカネ(=役員貸付金)を返してもらいなよ、というハナシです。

というわけで、いますぐ決算書の確認を。

以上のとおり、役員貸付金は銀行に嫌われますので。決算書に役員貸付金がないかどうかを確認してみましょう。

自覚なき役員貸付金が計上されていることもあるので要注意です。とくに、経理を税理士や経理担当者に任せっきりにしているケース。

細かい説明は省きますが、「よくわからない出金」があると、税理士や経理担当者が役員貸付金として処理することがあるのです。

な、なんだとぉぉ! おのれ税理士(あるいは経理担当者)めっ!! と怒るのはお門違いです。

なぜなら、社長が銀行から引き出したり金庫から持ち出した現金、社長が使った使途不明の領収書が原因であることが少なくないからです。

税理士や経理担当者から見て、「よくわからない出金」は、その分のおカネを会社が社長に貸し付けたとして、「自覚なき役員貸付金」が計上されていることがあるわけです。

というわけで、役員貸付金の有無に自信がないのなら、あらためて決算書(あるいは試算表)を確認されることをおすすめします。

それはそれとして。

自覚があろうとなかろうと、役員貸付金が銀行融資によくないことは前述したとおりです。役員貸付金があるのであれば、その返済・解消を考えていきましょう。

役員貸付金を「一気」に返済・解消する方法

ここからは、決算書に載ってしまった役員貸付金を返済・解消する方法について見ていきます。

役員貸付金がマズいというのなら、一気に返済・解消したいですよね。その方法は次の4つです ↓

  1. 社長が持っているおカネで返済する
  2. 社長が他から借りたおカネで返済する
  3. 社長が持っている資産を売却して返済する
  4. 会社が債権放棄(返してくれなくていいよ、と言う)する

このあと、順番に説明をしていきます。

《方法①》社長が持っているおカネで返済する

役員貸付金を一気に返済・解消する方法の1つめは、社長が個人で持っているおカネで返済をすることです。

会社から社長が借りたおカネを返す、というもっともスタンダードな方法です。

が。貸付金の額が大きく、「一気に返すのはムリ・・・」となるケースも散見されます。

《方法②》社長が他から借りたおカネで返済する

社長が持っているおカネで一気に返せないのであれば。社長が他から借りてきて返す、という方法です。

借りる先は、親族、金融機関などいろいろではありますが。当然、社長は借りたおカネを返済していかななければいけません。

したがって、毎月の返済額に応じて役員報酬を増額するなどの対応が必要になります。

【参考】保険を使った役員貸付金清算プラン

いっとき、保険を使った「役員貸付金清算プラン」なるものが流行りました。その後、保険業法の締め付けにより下火になりましたが・・・
その詳しいしくみについては省略しますが、「役員貸付金清算プラン」もまた、社長が他から借りたおカネで返済する方法のひとつです。

《方法③》社長が持っている資産を売却して返済する

おカネは無いけれど、不動産など売却できるものをもっているのなら。売却したおカネで返済をする、という方法です。

第三者に売却しておカネで返済をする以外にも、社長が会社に売却して、貸付金と売却代金を相殺する方法もあります。

ただし、売却したことにより「売却益(買った値段よりも売った値段が高い)」がでると、社長個人に所得税が発生することもある点には注意です。

【注意】社長と会社の間での売買

社長と会社との間で、不動産などを売買する場合には、売買金額に注意が必要です。
「内々」の取引であることから、恣意性のある売買金額は税務上問題が発生します。よくわからないのであれば、税理士に相談しましょう。

《方法④》会社が債権放棄(返してくれなくていいよ、と言う)する

返済するのもたいへんなので、会社が役員貸付金について債権放棄をする。という方法もあります。

債権放棄、つまり、会社が社長に対して「もう返してくれなくていいです、あきらめます」と言うわけです。

が。これは税務上の問題が大きく、広くおすすめできるような方法ではありません。

税務上の問題について、結論だけを端的に言うと。放棄された役員貸付金の金額は「役員賞与」として、社長に所得税や住民税がかかります。

さらに、会社側。通常、債権放棄については経費(損失)として節税効果が望めるところですが、役員貸付金の債権放棄は税金計算上の経費とは認められません。節税効果なし。

そう都合よくはいかない、ということです。

【参考】必ずしも役員賞与ではない

債権放棄について、必ずしも社長の役員賞与で、必ずしも会社の経費にならないわけではありません。
社長個人が自己破産状態など、「ほんとうに債権放棄するしかない」というような状況ではまた別、であることを申し添えます。

役員貸付金を一気に返済・解消できないときの方法

役員貸付金を「一気」に返済・解消する方法を見てきましたが。

結局、一気に返済・解消は難しいなぁ・・・ というケースは少なくありません。

打つ手なしか、というとそうでもありません。返済・解消ほど有効ではないけれど、最低限としてできること・やるべきことはあります。

それは、定期的にきちんと返済をしていく計画を銀行にアピールすることです。

いつか返す、を銀行は信じない

決算書に載っている役員貸付金を、どうしても一気には返せないというのなら。

会社と社長個人とのあいだで、定期的にきちんと返済をしていく約束をしましょう。具体的には、契約書と返済予定表をつくることです。

この契約書と返済予定表を銀行にも提示して、役員貸付金を返済・解消する意思があることをアピールしましょう。もちろん、つくるだけではなく、実際に返済をしている実績がたいせつなのは言うまでもありません。

これに対して、「いつか返済します」なんてことを銀行は信じませんし。いつか返すという姿勢自体を銀行は嫌います。ですから、いますぐは無理だけど、少しずつでもぜったいに返済してみせるという意思表示をするわけです。

ただこれとて、「だったらOK」ということにはなりません。

やはり役員貸付金そのものは銀行融資にNGに変わりないのであり、「定期的にきちんと返済をする」のは最低限・普通のことでしかないのです。

それでも、最低限・普通のことですらできない、やっていない会社があるのでアピールしてみる価値はある。そのように考えましょう。

【補足】役員貸付金の経理処理

返済予定表にしたがって、決算日から1年以内に返済日が到来する分の金額は、「1年以内回収役員貸付金」として「流動資産」に掲載しましょう。1年を超えて返済日が到来する分の金額は、「長期役員貸付金」として「固定資産」に掲載します。

この区分をせずに、ただただ「役員貸付金」として「固定資産」に掲載していると、銀行からは「回収する気がないのかな?」と見られるものです。

また、確実に回収をするためにも、回収の履歴を残すためにも、毎月の回収は「役員報酬からの天引き」とするのがおすすになります。

まとめ

決算書に「役員貸付金」はNG、その返済・解消の方法についてお話をしてきました。

役員貸付金については、早いうちに対処するのがいちばんです。そのためには普段から、使途不明な出金を放置しないことです。

また、すくなくとも決算書が確定してしまう前には、「役員貸付金」が決算書に残ることがないかを確認しましょう。

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きょうの執筆後記
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