” 決算が終わりましたよね。決算書のコピーをもらえますか? ”
と銀行に言われ。「はい、どうぞ」とただただ渡していませんか。融資の可否を左右するのが決算書です。きちんと説明をして渡しましょう。その際のポイントをまとめます。
決算書は渡すだけじゃダメ! 銀行には「説明」をしよう
融資を受けようとする際、銀行は「決算書」のコピーを求めます。
また、すでに融資を受けている場合でも。決算が終わるつど、銀行は「決算書」のコピーを求めます。
銀行が融資をするにあたって、あるいは、今後の融資姿勢(積極的に貸し出すか、消極的か)を決めるにあたって、「決算書(数字)」に大きなウエイトを置いているからです。
決算は1年に1度。その決算書が、向こう1年間の銀行融資の可否を左右します。そんな大事な決算書をただただ渡しているだけではいけません。
銀行が決算書をきちんと理解して、じゅうぶんに評価をしてもらえるように「説明」をしましょう。その説明をするときのポイントを、次の流れでお話ししていきます ↓
【 貸借対照表の説明ポイント 】
- 資産を「過小評価」されないように
- 「他の銀行は融資に消極的なのかな」と思われないように
【 損益計算書の説明ポイント】
- 利益の「実績」を「過小評価」されないように
- 利益の「予測」を「過小評価」されないように
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
貸借対照表の説明ポイント
まずは決算書のうち、貸借対照表の説明ポイントについてお話をします。
資産を「過小評価」されないように
銀行が貸借対照表を見るにあたって、真っ先に確認することは「債務超過」がないかどうかです。
債務超過とは、資産よりも負債が大きい状態を言います。別の言い方をするならば、純資産の部がマイナスである状態です。
決算書が債務超過状態である会社を、銀行は「危険な会社」と評価します。逆に、負債よりも資産が多いほど、「安全な会社」と評価します。
したがって、これに対する説明のポイントは、いかに資産を過小評価されないようにするかです。
銀行は、資産を保守的(いわゆるコンサバ)に評価しようとします。放っておけば過小評価されてしまうような内容については、「ちがうちがう、そうじゃない」という説明が必要です。
たとえば、銀行は資産についてこんなことを考えています ↓
貸借対照表のようす | 銀行の保守的な考え方 | |
現金が多い(◯百万円など) | → | ほんとうにある? 社長が流用? 使途不明金? |
売掛金が前年よりも増加している | → | 不良債権がある? 粉飾をしている? |
在庫が前年よりも増えている | → | 不良在庫がある? 粉飾をしている? |
社長への貸付金がある | → | 返してもらえるの? 社長が流用? 使途不明金? |
上記について、銀行の考え方が事実であれば「しかたなし」といったところではありますが、「誤解」ということもあるでしょう。
決算日直前にたまたま現金で売上代金を回収することだってありますし、決算日直前に大きな掛売上が生じることもあれば、値引き交渉を目的にまとまった仕入をすることもあります。
社長への貸付金は、そもそも銀行評価にマイナスですが。使途や返済計画を示すことで、マイナス評価を軽減する効果はあるでしょう。
これらの説明を省いて、決算書を渡すだけでは、知らないところで評価を下げられているかもしれないのです。資産を過小評価されないように、きちんと説明をしましょう。
「他の銀行は融資に消極的なのかな」と思われないように
貸借対照表の負債の部、銀行からの借入金について。複数の銀行から融資を受けている場合、銀行は「他の銀行の動向」を気にするものです。
他の銀行の融資額が増えていれば、「評価は悪くないということか、ウチも負けずに融資しよう」と考えます。
逆に、他の銀行の融資額が減っていれば、「評価が悪くて融資をしないのかな、ウチも回収の姿勢にしよう」と考えます。
このうち、問題は後者のほうです。融資額が減る(借入金残高が減る)こと自体が悪いわけではありませんが、「他の銀行の評価が悪い」という誤解を招く可能性はあります。
したがって、他の銀行のようすについては、情報提供をしておくことをおすすめします。
たとえば、「◯◯銀行さんが、◯◯万円のプロパー融資を提案してきています」とか。「△△銀行さんは、△△万円ならば融資ができそうだと言っていました」とか。
あえて借りていないだけ、ということを説明するのです。また、融資条件(返済期間、金利など)が良いのであれば、それも伝えることで銀行間の競争を促す効果も期待できます。
決算書に載っている借入金については、このような説明ができるように、普段から各銀行の融資姿勢を確認しておくようにしましょう。
損益計算書の説明ポイント
続いて決算書のうち、損益計算書の説明ポイントについてお話をします。
利益の「実績」を「過小評価」されないように
銀行が損益計算書を見るにあたって、真っ先に確認することは「利益」の大きさです。
融資をしたおカネの返済原資は利益である以上、利益が大きいほど良し、と考えるのは当然でしょう。
したがって、これに対する説明のポイントは、いかに利益を過小評価されないようにするかです。
具体例として「役員報酬」が挙げられます。役員報酬の金額があまりに少ない場合、「これじゃあ生活できないだろうし、役員報酬が過少だ」と銀行は考えます。
役員報酬が過少、つまり、その分だけ利益が過大だと考えるわけです。
これについて、会社の利益が不十分で役員報酬を増やせないと言うのであればしかたがないのですが、誤解ということもありえます。
たとえば、他に社長個人に不動産収入があるとか、配偶者がよその会社で正社員として働いているとか。この場合、「役員報酬は過少ではない」という主張をすべきです。
決算書を渡すだけでは、利益を過小評価されるばかりかもしれません。役員報酬が少額である場合には、きちんと説明をしましょう。
利益の「予測」を「過小評価」されないように
利益の過小評価については、もうひとつポイントがあります。それは、「予測の利益」を過小評価されないようにする、ということです。
さきほどの、役員報酬の話は「実績の利益」に関わることでしたが、それとは別に「予測の利益」についても説明が必要です。
たとえば、今期の最終利益は赤字でした、という場合。けれども、赤字の主な原因は、遊休固定資産の売却損ですというのであれば、赤字は一過性だとの説明ができます。
よって、「本来の利益で見れば黒字だ」という主張をするわけですが、銀行としては「ほんとうに来期は黒字になるの?」と疑いたくなるものです。
その疑いを軽減するためには、事業計画書や予測資金繰り表を添えて話をすることです。口だけの話と、書類があるのとでは説得力に格段の差が出ます。
銀行は書類文化であるにもかかわらず、多くの会社は口だけで説明をします。書類がある、ということだけでも一定の評価につながることを覚えておきましょう。
また、そもそも本来の利益が赤字だという場合。その説明はますます重要になります。
赤字の事実(実績)を変えることはできませんが、将来(予測)の黒字化について説明をすることで、銀行のネガティブな姿勢をやわらげることはできるからです。
「赤字の原因分析」「課題・問題点の抽出」「解決策」「行動計画」「数値計画」などを書類にまとめて、経営改善計画書という位置づけで説明をするとよいでしょう。
説明もせずに放っておけば、これまで(実績)も・これから(予測)も、ネガティブに見られてしまいます。変えられる未来(予測)についてまで、過小評価をされないようにしましょう。
まとめ
銀行に対する「決算書の説明」ポイントについてお話をしてきました。
決算書はただ渡すのではなく、紹介した4つのポイントを中心に説明を添えるようにしましょう。
【 貸借対照表の説明ポイント 】
- 資産を「過小評価」されないように
- 「他の銀行は融資に消極的なのかな」と思われないように
【 損益計算書の説明ポイント】
- 利益の「実績」を「過小評価」されないように
- 利益の「予測」を「過小評価」されないように
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