” どうせ経費なんだから、勘定科目はなんだっていっしょでしょ ”
ってそれ。たしかに納める税額はいっしょですが、いろいろ問題ありますよ。ということで、勘定科目はなんでもいいとは言えない「ダメな勘定科目の選び方」のお話です。
フリーランス・個人事業者の勘定科目は「なんでもいい」の?
フリーランス・個人事業者の帳簿つけ(経理)で、アタマを悩ませるもののひとつに「勘定科目の選び方」が挙げられます。
いったいどの勘定科目にすればいいんだ? と、いちどは迷ったり悩んだりしたことがあるでしょう。
そのいっぽうで、「勘定科目なんて、なんでもいいんだよ」というハナシもあったりします。
どういうことかというと。
税金は、「(収入 − 経費)× 税率」で計算します。ですから、経費かどうかが重要なのであり。経費でありさえすれば、勘定科目がなんであれ納める税金は変わらないでしょ。ということです。
たしかに、そのとおりではありますが。問題は、納める税額の正否だけではありません。税額以外の面で、「勘定科目はなんでもいい」には問題があるのです。
そこで、経費は経費だとしても、それでも「ダメな勘定科目の選び方」についてお話をしていきます。
- 明らかにおかしい
- 特定の勘定科目に偏る
- 選ぶ基準がつど変わる
- 「雑費」を使う
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
やってはいけない!ダメな勘定科目の選び方
フリーランス・個人事業者が、やってはいけない勘定科目の選び方についてお話をします。
明らかにおかしい
たとえば、お客さまの接待をしたときの飲食代。一般には「接待交際費」とされるところを、「旅費交通費」として帳簿つけをしたとします。
これについて、旅費交通費だろうが接待交際費だろうが、支払う「税金」の額に変わりはありません。どちらにせよ「経費」だから、ですね。
じゃあやっぱり勘定科目はなんでもいいのかと言うと、このケースは違います。
理由は2つ。
1つは、「対税務署」的によろしくないから。
接待飲食代が「旅費交通費」だという帳簿は、あまりに実態とかけ離れています。したがって、税務調査で見つけた調査官は「イイ加減だ」と思うことでしょう。
そして、一事が万事、ほかにもいろいろとイイ加減なんじゃないの? と、みっちりしっかり調べられることになる。調査をされる側は、よろしくありませんよね。
2つめの理由は、「対じぶん」的にもよろしくないから、です。
あるとき「もしかして、接待飲食代を使いすぎじゃなかろうか?」と帳簿を見ても、正しい情報を得ることができません。飲食代と交通費がゴッチャですから。
正しい情報を得ることができない帳簿は、意思決定には使えません。意思決定に使えない数字のために、帳簿つけをするのももったいないことです。やはりよろしくありません。
というわけで、「勘定科目はなんでもいい」を拡大解釈しないことに気をつけましょう。「なんいでもいい」のは、「明らかにおかしい」とは言えないケースのハナシです。
たとえば、「コピー用紙は、消耗品費か事務用品費か?」とか、「名刺代は、広告宣伝費か消耗品費か?」とか。
そのように、どっちとも言えそうなものには「どっちでもいいんじゃないの、なんでもいいんじゃないの」なのであって。明らかにおかしいものにまで「なんでもいい」のではありません。
特定の勘定科目に偏る
たとえば、お客さまとの飲食代が年間 50万円あったとして。
飲食代のすべてを「接待交際費 500,000円」としている決算書と。飲食の目的に応じて「接待交際費 35万円、会議費 15万円」と区分をしている決算書と。どちらがよいか?
まず、「対税務署」で言えば、「接待交際費 35万円、会議費 15万円」のほうがよいでしょう。「接待交際費 500,000円」に比べると、内容が明快だからです。
偏った勘定科目選びをしていると、特定の勘定科目の金額が大きくなります。金額が大きくなればなるほど、「中身はなんだろう?」と税務署の関心は高くなるものです。
そのような税務署の関心を抑えるには、勘定科目を分散させること。金額を分散させること。全体のバランスをとる、という考え方を覚えておきましょう。
また、「対じぶん」にしても同じことです。「接待交際費 500,000円」の帳簿よりも、「接待交際費 35万円、会議費 15万円」の帳簿のほうが、やはり内容は明快ですよね。
ただし、勘定科目を分散させようとするあまり、細分化をしすぎないことです。
年間で見てたいした金額にならないような勘定科目であれば、分散をする意味はありません。帳簿つけがわかりずらく・わずらわしくなるだけです。
だいじなのは分散をすることではなく、全体のバランスをとること。できるだけ勘定科目どうしの金額差をならす、というイメージです。
選ぶ基準がつど変わる
勘定科目を選ぶときの基準が、そのときどきで変わってしまうのはよくありません。
たとえば、サーバー利用料を、あるときは「広告宣伝費」にしたり、またあるときは「通信費」にしてみたり。
これだと、広告宣伝費と通信費の金額はブレてしまいます。サーバー利用料が、どちらの勘定科目に入っているかわからないからです。
ブレてしまうと困るのは、「比較」ができないこと。前月と今月、前年と今年とで広告宣伝費を比べてみよう、ということができませんよね。
結果、比較ができなければ、意思決定もできません。せっかく帳簿つけをしているのですから、「意思決定ができる数字」の帳簿をつくりましょう。
帳簿つけをはじめたばかり、など。勘定科目を選ぶときの基準に自信がなければ、じぶんなりの「勘定科目一覧・勘定科目辞典」をつくっておくのがおすすめです。
よろしければ、こちらの記事も参考にどうぞ ↓
CHECK! みんなでつくろう!個人事業者・フリーランスの勘定科目辞典
「雑費」を使う
一般的に使われる勘定科目のなかに「雑費」というものがありますが。これは極力使わないようにしましょう。
雑費は本来、他の勘定科目にどうしても当てはまるものがなく、さいごにどうしようもなくて使う勘定科目です。
ところが、「どうしても当てはまる勘定科目がない」という経費は、無いと言えば無いのです。なにかしらの勘定科目に当てはめることができるはず。
したがって、「どの勘定科目にすればいいかよくわからないから、雑費でいっか」という使い方は間違いです。
よくわからないままにせず、どの勘定科目に当てはまるのかを調べましょう。
いちいち調べるなんてメンドーだなぁ、と思われるかもしれませんが。雑費が多いと「対税務署」の面で、悪影響があることは覚えておきましょう。
決算書の「雑費」に掲載される金額が大きいほど、税務署は「中身はなんだろう? ほんとうに経費なのかなぁ?」と関心を持ちます。調べたくなります。でも、調べられたくはないですよね。
ハタから見て不明瞭な「雑費」は使わないことです。もちろん、じぶんで見ても「雑費」ではなんのことだかわからなくなってしまいますから。
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まとめ
勘定科目はなんでもいいとは言えない「ダメな勘定科目の選び方」についてお話をしてきました。
「どうせ経費なんだから、勘定科目はなんだっていっしょ。納める税金はいっしょ。」
この考え方には、納める税額以外の問題があることを押さえておきましょう。