” 在庫が多いですね ” と言う銀行が、融資を渋っている。
さぁ、どうしよう? ということで、融資申込で「在庫が多い」と言われたときの銀行対応3ステップについてお話をします。
「在庫が多い」と銀行は融資をしたがらない
融資の可否に関して言えば。銀行が言う「在庫が多いですね」は、きわめてネガティブな反応です。
つまり、「融資はしたくないなぁ… しないほうがいいかなぁ」という思いのあらわれです。
なぜ、在庫が多いと銀行は融資を渋るのか?
もしも、在庫の中身が「不良在庫(売れ残り)」であれば、会社・事業の財務を悪くする要因になるからです。そんなところにおカネを貸したくはないでしょう。
はたまた「架空在庫(粉飾)」であれば、その不誠実に不審を抱くのは当然です。やはり、そんなところにおカネを貸したくはありません。
ですから、融資を受けたいのであれば、「在庫が多い」を放置してはいられないのです。
そこで、融資申込で「在庫が多い」と言われたときの銀行対応について、3ステップを押さえておきましょう。こちらです ↓
- なぜ在庫が多くなったかのかを説明する
- 在庫が多い状態をどうやって解消するのかを説明する
- ほんとうに在庫があることを説明する
それでは、このあと順番に見ていきます。
銀行が言う「在庫が多い」とは、次のいずれか、もしくは両方のことを指しています ↓
- 同業他社平均と比較して多い
- 自社の過去からの推移と比較して多い
比較する数値には、在庫金額そのものである「実数」のほかに、在庫回転期間などの「指標」があります。
融資申込で「在庫が多い」と言われたときの銀行対応3ステップ
《ステップ1》なぜ在庫が多くなったかのかを説明する
いちばんはじめにやるべきは、銀行に対して「なぜ在庫が多くなったのか」を説明することです。在庫が多くなった「理由」ですね。
これは、銀行から必ず聞かれることでもありますから。「う〜ん、なんでしょう?」というわけにはいきません。
在庫が多い理由は、あらかじめ自社・じぶんで把握をしておきましょう。
たとえば、次のようなことが「理由」として考えられます ↓
- 大型受注に備えて、商品をまとめ買いした
- 安かったので、商品をまとめ買いした
- 仕入れた商品が売れ残ってしまった
- 過去に粉飾をしてしまったときの名残り(架空在庫)
などなど
上記のような「理由」を、その特徴別に分類すると ↓
①②は、「意図的」な理由にあたります。あえてそうしている、というケースです。
③は、「想定外」の理由にあたります。そんなはずではなかったんだけど… という典型例です。
④は、「悪意」の理由にあたります。悪いことだとは知りながら… というケースですね。
これらのうち、自社・じぶんの「在庫が多い」が、いったいどの理由にあたるのかを確認しましょう。そして、きちんと銀行に伝えましょう。
③の想定外や、④の悪意は、イメージ悪化・評価悪化が避けられず、伝えるにも躊躇するかもしれません。
とはいえ、ウソをつくのはご法度です。ウソがばれてしまったときには、さらにイメージ悪化・評価悪化の憂き目を見ることになります。
ちなみに、ウソがばれないだろうなどとは考えないことです。銀行はクチにしないだけで「ウソをついていることなどお見通し」ということも少なくありません。
というわけで。まずは正直に、事実を正確に伝えることからです。
《ステップ2》在庫が多い状態をどうやって解消するのかを説明する
ステップ1は、言うなれば「現状」の説明でした。
ただ、いくら正直に・正確に現状を伝えても。「在庫が多い」という現状が変わらないのであれば、銀行のネガティブな思いもまた変わりません。
したがって、次にすべきことは、在庫が多いという現状をどうやって変えるのか、解消するのか、の説明です。
前述したケースを再掲して考えてみましょう ↓
- 【意図的】大型受注に備えて、商品をまとめ買いした
- 【意図的】安かったので、商品をまとめ買いした
- 【想定外】仕入れた商品が売れ残ってしまった
- 【悪意】過去に粉飾をしてしまったときの名残り(架空在庫)
①②は、在庫が多いとは言うものの、近い将来にはその在庫が減ることを見越しているケースです。
よって、①であれば大型受注の見込みを説明します。このとき、受注済みであれば契約書・請求書、商談中であれば見積書などがあるとよいでしょう。
②であれば、この先の販売見込みを説明します。販売計画や、過去の売れ行きに関するデータなども提示して、説得力を高めることが大切です。
③は、思わぬ在庫増で困ったなぁ、というケースです。
今後売ることができると言うのであれば、販売見込みを。売れる見込みがないのであれば、処分・廃棄などの予定を説明することになります。
販売見込みについては、契約書・請求書・見積書・過去の販売データなど、なにかしらの補助資料があるとよいでしょう。「がんばって売ります!」の言葉だけでは信じることができませんので。
結果、売れる見込みがない、あるいは処分・廃棄するしかないというものについては、その金額分だけ、銀行は「損失」とみなして融資審査をすることになります。
「いまは在庫が多けれど、ちゃんと売れるんです」ということを、客観性の高い根拠をもって説明するのがここでのポイントです。
なお、④は売れるも売れもないも、もともと無い(架空)のですから、ここで説明できることはありません。
《ステップ3》ほんとうに在庫があることを説明する
さいごのステップでは、決算書(試算表)に掲載されている金額分の在庫がほんとうにある、ということを銀行に説明します。
銀行は、「在庫が多い」の解消についてを疑っていますが、加えて、「在庫が実在しているか」も疑っています。いわゆる「架空在庫」を気にしているのです。
くわしいことは省きますが、会計上、在庫の金額を増やすと利益を水増しすることができます。粉飾ですね。
水増しされた利益を評価しておカネを貸してしまい、のちに回収できなければタイヘンなことですから。銀行が架空在庫を警戒するのは当然でしょう。
ゆえに、「ほんとうに在庫がある」ということを説明することが大切になります。その方法としては、
- 在庫表(品目ごとに数量×単価)を提示する
- 入出庫記録(いつ入荷していつ売れているのか)を提示する
- 倉庫を見せるなどして、実物を見てもらう
などが挙げられます。
基本は①の在庫表ですが、極端を言えば、いかようにもつくれてしまうものでもあります。
したがって、②の入出庫記録などを提示して、実際に「動いている」商品であることを説明すると説得力が増すでしょう。
また、③のように、実物を見せてしまうというのもひとつの方法です。銀行のほうから言われることもありますが、その前にこちらから声がけをすれば心象アップが期待できます。
いずれにせよ、どうしたら「ほんとうに在庫がある」ことを納得してもらえるかな? という視点で方法を検討し、対応しましょう。
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まとめ
融資申込で「在庫が多い」と言われたときの銀行対応3ステップについてお話をしてきました。
銀行が「在庫が多い」と言うのは、「このままでは融資が難しい」という意思表示でもあります。
本記事の3ステップで、状況の打開につとめましょう。
- なぜ在庫が多くなったかのかを説明する
- 在庫が多い状態をどうやって解消するのかを説明する
- ほんとうに在庫があることを説明する