” 賞与の時期は資金繰りが厳しいんだよね ”
と言うならば。賞与を支払うためのおカネは、銀行融資を受けましょう。賞与資金の借入についてのお話です。
賞与を出すなら「賞与資金」をあえて借り入れる
会社が社員に賞与を支払うときに、手元のおカネ(自己資金)で支払いをしていませんか?
手元のおカネで支払うことができるという場合でも、あえて銀行から融資を受けて、そのおカネで支払いをするのがおすすめです。
このように、賞与を支払うために受ける融資のことを「賞与資金(の融資)」と呼びます。
基本的に、賞与資金は「期間6ヶ月の分割返済」です。
多くの場合、賞与は夏・冬の2回であることから、次の賞与を支払うまでには完済するように。というのが「期間6ヶ月の分割返済」の理由になります。
この賞与資金をおすすめするのは、賞与資金をあえて借りることに「メリット」があるからです。
そこで、次の3つのメリットについてお話をしていきます ↓
- 資金繰りが安定する
- 借りやすい
- 次もまた借りやすい
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
賞与を出すなら銀行融資を受けるべき3つのメリット
《メリット1》資金繰りが安定する
手元にあるおカネで賞与を支払うと、資金繰りが不安定になります。
いっぽうで、銀行から賞与資金を借り入れて、そのおカネで賞与を支払うことで資金繰りは安定します。
具体的に確認してみましょう ↓
- 6月と12月に、それぞれ 300万円の賞与を支給する
- 預金残高は毎月 50万円増加する(賞与支給とは別に)
- 6月月初の預金残高は 750万円
- 6月と12月に、賞与資金の融資を受ける場合の条件は、融資金額 300万円・毎月返済 50万円
上記の前提条件について、賞与資金の「融資ナシ」と「融資アリ」の場合とでは、預金残高の動きには次のような差が出ます ↓
6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | |
融資ナシ | 500 | 550 | 600 | 650 | 700 | 750 | 500 | 550 | 600 | 650 | 700 | 750 |
融資アリ | 800 | 800 | 800 | 800 | 800 | 800 | 800 | 800 | 800 | 800 | 800 | 800 |
表からわかることは、「融資ナシ」の場合には、賞与を支払う 6月と12月に預金残高が大きく沈むこと(赤色文字)。そして、預金残高の回復には時間がかかること。
対して「融資アリ」の場合には、そのようなことはなく、預金残高は安定します。
結果、賞与を支払う6月と12月で見ると、両者のあいだには 300万円の「預金残高の差」が生じます。
上記は「預金が毎月 50万円増加する」というシンプルな前提条件でしたが、実際には、おカネの増減には波があることでしょう。
売上を多くて預金がたくさん増える月もあれば、売上が少なくて預金がたくさん減ってしまう月もあるはずだからです。
では、もしも。融資を受けずに、手元のおカネで賞与を支払った直後に、おカネが減少する波がきてしまったら…? 資金繰りが厳しくなるのは明らかです。
ということを考えると。賞与を手元のおカネで払えるとしても、融資を受けておくことにメリットがあります。やってくる波の大きさはわからないのですから。
《メリット2》借りやすい
「賞与資金の融資」は、融資のなかでも銀行が貸しやすい融資のひとつです。
なぜならば、貸したおカネの使いみちが「賞与」とハッキリしているから。貸したおカネが別のことに使われてしまわないかなぁ… という心配がありません。
加えて、賞与を出すということは、賞与を出せるだけのチカラがある。多くの場合、利益が出ているということであり、銀行としては融資をするにも安心だからです。
さらに加えるならば。賞与資金は6ヶ月での返済と「短期」の融資であるため、長期の融資に比べて回収不能のリスクが小さい、ということも挙げられるでしょう。
ご存知のとおり、銀行融資はいつでも受けられるというものではありません。たとえば、赤字のときには融資は受けにくくなります。
ですから、「借りやすい」融資があるのであれば借りておくことが、資金繰りをより安定させるコツです。不測の事態にも耐えられるだけの資金を確保しておくようにしましょう。
賞与資金の融資申込時のポイント
銀行が貸しやすい融資であるとは言っても「審査」はあります。そこで、スムーズに審査を受けるために、融資申込時のポイントを挙げておきます ↓
- 賞与明細一覧を渡す
- 過去3年ていどの売上・利益・賞与の推移を説明する
社員各人に支給する賞与の金額がわかる「賞与明細一覧」を銀行に渡しましょう。銀行にとっては「ほんとう」に賞与資金かどうかのよりどころになります。
また、過去の売上・利益・賞与の推移をカンタンな書類にまとめ、銀行に説明するとよいでしょう。今回の賞与金額が「妥当」かどうかの判断材料になります。
たとえば極端なハナシ。売上や利益がどんどん下がっているのに賞与金額は上昇している、というのでは銀行としては納得しづらいものがあります。
そのように、銀行は賞与金額が妥当かどうかを気にしているのですから、きちんと説明をしてあげるとよい。ということです。
加えて、賞与の推移については「ひとりあたり平均賞与額」の推移も示すのがおすすめです。人員増減による賞与の動きは、「総額」だけではわかりませんので。
《メリット3》次もまた借りやすい
銀行は、はじめて融資をする相手には、融資をしにくいものです。相手のことがよくわかりませんから、審査も慎重で厳しくなります。
いっぽうで。いちど融資をしたことがある相手には、次の融資はしやすいものです。
「貸したことがある・返済をしてもらったことがある」という実績が信用になるからです。
この点で、もともと借りやすい融資である「賞与資金」は、実績づくりに適しています。
したがって、「これから融資のお付き合いをはじめたいなぁ」という銀行に対しては、賞与資金の依頼からスタートしてみるのもよいでしょう。
さいしょは賞与資金を借りることで実績をつくり、銀行からの信用を得たところであれば、次はさらに長期・高額の融資を期待できます。
また賞与資金自体についても、いちど実績ができると次の賞与資金はスムーズに借りやすい、という特徴があります。逃さず利用しましょう。
会社・事業を続けていれば、いつなんどきおカネが必要になるかはわかりません。
融資を受けやすい状態をつくっておく。受けやすいときに受けておく。ということが大切です。
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まとめ
賞与を出すなら銀行融資を受けるべき3つのメリットということで、賞与資金についてお話をしてきました。
手元のおカネで賞与を支払い、「資金繰りが厳しい」とこぼしている会社があります。当然です。
おカネを払えば厳しくなるのはわかっているのですから、つど賞与資金の借入をして、資金繰りを安定させましょう。