ご存知ですか? 「ハネ資金」という言葉。
決して借りようとしてはいけない銀行融資である「ハネ資金」を押さえておきましょう、というお話をしていきます。
知らないでは済まされない「ハネ資金」という名の融資
「ハネ資金」という言葉を知っているでしょうか?
銀行の世界の言葉ですから、「知らない」「聞いたことがない」という人も少なくないでしょう。
ハネ資金とは。いまある借入金を返済するために借りるおカネ、を言います。
手元のおカネでは返済ができなくなってしまったので、返済するためのおカネを借りよう。というのがハネ資金です。
そのように、ハネ資金は見るからにアブナイ融資であり、決して借りようとしてはいけない融資です。
にもかかわらず、現実には意外と利用されている融資でもあったりします。
ゆえに、ハネ資金なんて「知らない・聞いたことがない」で済ませるわけにもいきません。
というわけで、ハネ資金について押さえておきましょう。次のようなお話をしていきます ↓
- ハネ資金とは?
- ハネ資金を借りようとしてはいけない理由
- ハネ資金に頼らないためにすべきこと
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
ハネ資金とは?
ハネ資金とは、いまある借入金を返済するために借りるおカネだ。と、前述しました。
これについて、もう少し具体的なお話をしておきます。
ハネ資金が必要になるのは、「いまある借入金を返済するだけのおカネが無い」という状況においてです。
この状況を、算式であらわしてみるとこうなります ↓
税引後利益 + 減価償却費 < 年間借入金返済額
上記の算式の左側「税引後利益 + 減価償却費」のことを「キャッシュフロー」と呼び、そのキャッシュフローが借入金返済の原資になります。
CHECK! 『銀行から融資を受けられる?』の目安がわかる決算書の見方
したがって、年間のキャッシュフローの金額よりも、年間の借入金返済額のほうが大きい状況だと、おカネが目減りし続けることになるわけです。
結果、手元のおカネでは借入金を返済することができなくなり、「いまある借入金を返済するためのおカネ」が必要になる。というのがハネ資金です。
借りているおカネを返すためにまた借りる。これはどう見ても「マトモではない」と理解したうえで、次の話に移りましょう。
ハネ資金を借りようとしてはいけない理由
ハネ資金は、どう見てもマトモではない。とお話をしました。
「どう見てもマトモではないから」というのは、ハネ資金を借りようとしてはいけない理由のひとつです。
加えて、もう2つ。ハネ資金を借りようとしてはいけない理由がありますので押さえておきましょう。
そもそも、そうそう借りられない
ハネ資金が「どう見てもマトモではない」のは、銀行からしても同じことです。
ハネ資金が必要になる状況はこうでしたが ↓
税引後利益 + 減価償却費 < 年間借入金返済額
銀行が、「融資をしてもいい・融資をしたい」と考えるのは、その逆の状況においてです ↓
税引後利益 + 減価償却費 > 年間借入金返済額
つまり。銀行が積極的に融資をするのは、借入金を返済できるだけのじゅうぶんなチカラ(税引後利益 + 減価償却費)がある会社です。
逆に、借入金を返済できるだけのチカラがないような会社は、そうそうカンタンに融資を受けることはできません。
ですから、「借入金が返済できなくなったら、また借りればいいや(ハネ資金)」との発想はとても危険なのです。
借りられてしまったときが地獄
ハネ資金などそうそう融資を受けることはできない。と、お話をしましたが。
実を言えば、ハネ資金の状況で融資が行われることはしばしばあります。
ではなぜ、そんな状況でも銀行が融資をすることができるのか。理由はいくつかあります ↓
- 担保・保証がある
- 事業に将来性がある
- 他の銀行が支援をしている
利益で返済をするチカラがなくても、担保・保証がしっかりしていれば、まぁ貸してもいいか… というケースがあります。
また、「いま」は利益が不十分でも、「これから」に利益が見込める事業であれば。その将来性を見込んで貸す… というケースもあるでしょう。
そしてもうひとつ。他の銀行が支援しているからウチも貸す… というケースがあります。
本来、返済するチカラが無い相手に融資はできないわけですが。他の銀行からも融資を受けているようなのでだいじょうぶ、返済できる。だからウチも貸す。
そういう「タテマエ」で、銀行はハネ資金を融資することがあるのです。
銀行も融資審査の際の稟議書に、さすがに「ハネ資金」とは書けませんので。「他の銀行の支援」をタテマエにします。
以上のような理由により、「どう見てもマトモではない」はずのハネ資金の融資が行われることがあります。
これを、「おぉ、それはよかった」と安心してはいけません。運良く(?)借りられたとしても「ラッキー」と喜んではいけません。
もはや言うまでもないことですが、「税引後利益 + 減価償却費 < 年間借入金返済額」の状況を変えない限り、同じことはまた起こるからです。
しかも、返すことができない借入金が膨らんでいる分だけ、コトはより深刻です。
不吉なことを言うようですが、ハネ資金は借りられてしまったときが地獄のはじまり。決して借りようとしてはいけない融資が、ハネ資金なのです。
ハネ資金に頼らないためにすべきこと
ここまで、ハネ資金とはどういうものか、ハネ資金はなぜ借りようとしてはいけないのか、をお話してきました。
ハネ資金はマトモなものではないけれど、ときに、ハネ資金の融資は行われているという現実がある。
けれどもそれは、さらに事態を悪化させるきっかけになりかねません。そんなお話をしてきました。
借りられるかもしれないからと言って、ハネ資金に頼るわけにはいかないのです。
というわけで。さいごに、ハネ資金に頼らないためにすべきことについて触れておきます。
すべきことは、次の2つです ↓
- 税引後利益 + 減価償却費 > 年間借入金返済額
- 借りられるときに借りておく
まずは当然ながら、ハネ資金が必要になるような状況をつくらないことです。
ふだんから「税引後利益 + 減価償却費 > 年間借入金返済額」を注視するようにしましょう。
借入金の返済を続けるには、いくらの利益が必要なのか? いま現在、じゅうぶんな利益はあるのか? この確認は常時必須です。
そのうえで。長く会社・事業を続けていれば、「税引後利益 + 減価償却費 < 年間借入金返済額」となってしまうこともあるでしょう。
この状況での融資を受けることが難しいのは、お話をしたとおりです。可能性として難しい「ハネ資金」の融資を期待してはいけません。
代わりに、「借りられるときに借りておく」こと。銀行から借りやすい状況であるうちに、しっかりおカネを準備しておくことです。
借りやすい状況というのが「税引後利益 + 減価償却費 > 年間借入金返済額」なのですから、やはりふだんからの確認を欠かさないようにしましょう。
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まとめ
決して借りようとしてはいけない融資「ハネ資金」についてお話してきました。
まずは、ハネ資金が必要になる前提「税引後利益 + 減価償却費 < 年間借入金返済額」を理解しましょう。
ハネ資金がいかに危険な融資であるか、避けるべき事態であるかがわかるはずです。