” 資金繰りが厳しい… ” という会社は少なくありません。
そこで、意外と知られていない「資金繰りを良くする考え方」についてお話をしていきます。
考え方を変えれば、資金繰りも変わる
「資金繰りが厳しい…」という悩みを持つ会社があります。
もしかすると、資金繰りが厳しい原因は、「資金繰りを良くする考え方」を知らないからかもしれません。
考え方をすこし変えることで、資金繰りは大きく改善することがある。意外と知られていない現実です。
というわけで、「資金繰りを良くする3つの考え方」についてお話をしていきます。こちらです ↓
- 節税よりも納税する
- 成長を急ぎすぎない
- 必要な融資は受ける
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
資金繰りを良くする3つの考え方
《考え方1》節税よりも納税する
納税を勧めるなんて、税務署のまわし者かっ! と言われるかもしれませんが。そういうハナシではありません。
「税金を払いたくない、節税したい」との思いが過ぎると、おカネを失くしてしまうことになりますよ。というお話です。
さっそく、具体例で確認をしてみましょう ↓
決算日を目前にしたA社。現在の税引前利益は 500万円です。
社長は、次のいずれの対応をするかで迷っています ↓
- 経費を 500万円使って、1円たりとも納税しない
- このまま決算を迎えて、おとなしく納税する
なお、A社が納める税金は「税引前利益 × 税率 30%」とします。
なかなか極端な選択肢ではありますが。あなたがA社の社長なら、上記①②のいずれを選びますか?
1円たりとも納税しない派の結末
まずは、選択肢①の「経費を 500万円使って、1円たりとも納税しない」について。選択をした結果どうなるかを見ていきます ↓
というわけで、社長の思惑どおり納税額はゼロ。「よしよし」と満足をしていたところに、経理担当社が駆け込んできました。
「社長、タイヘンです。おカネがありませんっ!」
そんなバカな。節税をしたのだから、おカネが無いなどということはあるまい。と、社長は焦ります。
ところが、節税をはかったことで、たしかにおカネは減っいたのです ↓
もしも経費 500万円を使っていなければ、現在の税引前利益 500万円分のおカネは増えていたはずなのに。経費を使ったことで失くなってしまったわけです。
でも、納税をしたって、おカネは失くなるだろう? ということで見てみましょう ↓
おとなしく納税する派の結末
こんどは、現在の税引前利益 500万円のまま、納税をする場合の「税金」を考えてみましょう ↓
ほら見たことか、150万円も納税しなきゃいけないじゃないか! というのは早計です。続いて、おカネの増減を ↓
ということで、この場合には 350万円のおカネが残ることになります。
節税をすると残るおカネはゼロ、納税をすると残るおカネは 350万円。
さぁ、あらためて聞きます。あなたがA社の社長なら、節税と納税のいずれを選びますか?
節税はOK、行き過ぎた節税はNG
誤解なきように申し添えます。節税がダメだ、節税はするな、と言いたいわけではありません。
必要な経費を使って、結果として節税になるのはもちろんOKです。また、税額控除による節税は、むしろ忘れずにすべきです。
けれども。税金を減らすことを目的にして経費を使う、といった「行き過ぎた節税」はNGです。
なぜなら、前述したとおり、おカネを失くしてしまうから。会社の資金繰りを悪化させてしまうから。
したがって、資金繰りを良くすることを考えるのであれば、節税よりも納税することを考えましょう。
納税を過度に嫌わずに、どんどん利益を上げましょう。税金は増えますが、手元に残るおカネもきちんと増えます。
《考え方2》成長を急ぎすぎない
会社・事業の「成長」に向けた取り組みとして、次のようなものが挙げられます ↓
- 社員を増やす
- 受注を増やす
- 事務所を広くする
- あらたに店舗を出店する など
成長するのは良いことですが、成長を急ぎすぎるのは危険です。
いま挙げたような取り組みには「おカネ」が必要であり、タイミングが早かったり・失敗をしたりすると、たちまち資金繰りに悪影響を与えるからです。
社員を増やせば人件費がかかります。その分の売上が増えればよいですが、育成に時間がかかったり、うまく育成できなかったら…?
受注を増やせば、必要な運転資金が増加します。手元のおカネが少ないと、資金ショートを招きます。
事務所を広くすれば家賃などの固定費が増えます。増えた固定費をまかなえるだけ利益も増えていればよいですが、そうではなかったら…?
あらたに店舗出店すれば、軌道に乗るまでには時間がかかるものです。そのあいだをしのぐおカネが必要になります。もし軌道に乗せられなければ、大きな損失になります。
決して、成長への取り組みを否定するつもりはありません。
ポイントは、成長を「急ぎすぎない」ということです。手元のおカネが過少であるにもかかわらず、成長への取り組みを急いではいけないということです。
成長まで(成果が出るまで)に思ったよりも時間がかった、取り組みが失敗してしまった… という例はそこかしこ。結果、資金繰りが破綻して窮迫する、会社を潰してしまうことさえあります。
かつて、トヨタ自動車の豊田章男社長が「意志ある踊り場」という表現をされました。必要以上に先を急がず、まずは足場を固めて、安定的・長期的な成長をはかる。
成長への取り組みをする前に、あえて「踊り場」をつくることを検討しましょう。
具体的には、できるだけの資金を準備してから取り組む、ということです。資金繰りを悪くしない、資金繰りを良くしながらの成長をはかりましょう。
《考え方3》必要な融資は受ける
できるだけ借金をしたくない。無借金の経営をしたい、という考え方は間違いではありません。
借金をしなくて済むのであれば、それがいちばんです。
けれども、「必要な融資」も受けずに資金繰りに窮しているのであれば、借金をしないのは間違いです。
たとえば、運転資金の融資さえ受けずに「資金繰りが厳しい…」と言うのであれば。それは、「必要な融資」を受けていないからです。
運転資金とは、カンタンに言えば、会社が事業を続けていくにあたって必要な「立替金」を言います。
ツケで売り上げれば、入金されるまでのあいだは資金が不足します。商品を仕入れれば、売れるまでは在庫ですから、やはり資金が不足します。
CHECK! 借りなさすぎの典型『運転資金分の融資すら受けていない』と資金繰りはツラくなる
このような運転資金について、じぶんのおカネ(自己資金)だけでは不足するのであれば、銀行からの融資で手当をすべきです。
借金をしても実質は無借金だ、と理解する
運転資金の融資とは、余裕資金を持つということでもあります。
たとえば、自己資金だけでは資金繰りが回らず、社長が個人のおカネを会社に出し入れすることでやりくりしている、という場合。
月商 1ヶ月分ていどの融資を受けると、資金繰りは大きく改善します。多くの場合、日常的な「やりくり」はなくなるでしょう。
社長は「やりくり」に費やしていた時間・労力・ストレスから開放されます。利息を払ってでも融資を受ける価値はじゅうぶんです(利息の金額を実際に計算してみればわかります)。
また、借金をするとは言っても、借金だけが増えるわけではありません。借金をした分だけ、必ずおカネも増えています。
仮に500万円の融資を受ければ、500万円のおカネが増えます。その 500万円は資金繰りに回りますが、目減りしているわけではありません(利息支払分だけは減ります)。
借金はあっても、その分のおカネもあるのですから「実質無借金」です。決して少なくはないヒトが、これに気づかず、借金を毛嫌いしています。
借金をしても、借金だけが増えることはない(もちろん、ムダ使いなどをしない限り、という条件付きですが)。資金繰りを良くするために、覚えておきましょう。
必要な融資は借り続ける
融資のハナシには、まだ続きがあります。「必要な融資」は借り続ける、というお話です。
さきほどの運転資金について。銀行から融資を受けたあと、なにもせずにいるとどうなるでしょうか?
毎月返済という約束であれば、その返済額分だけ毎月おカネは減っていきます。これを放っておくと、当然、資金繰りは厳しくなります。元の状態へ逆戻り。
ではどうするか?
「また借りる」ことです。「必要な融資」であれば借り続ける。
にもかかわらず、「借金はイヤだから、とにかく早く返してしまおう」というヒトも少なくありません。これでは、なんのために「必要な融資」を受けたのやら…です。
「必要な融資」については、あるていど返済が進んだら、返済した分をまた借りるようにしましょう。
資金繰りを悪くしないためには、とてもだいじなことです。
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まとめ
会社の資金繰りを良くする3つの考え方についてお話をしてきました。
考え方をすこし変えることで、資金繰りは大きく改善することがあります。
「資金繰りが厳しい…」と言うのであれば、ぜひ考え方を確認しておきましょう。