” 銀行は晴れた日に傘を差し出すけれど、雨の日には傘を取り上げるし… ”
などと文句を言ってはいませんか? けれども、銀行がやっていることは「あたりまえ」なのですよ、というお話をしていきます。
雨傘を持たぬ銀行、銀行融資は日傘しかない。
” やられたらやり返す。倍返しだっ! ”
で、おなじみのドラマがありましたが。そのなかに次のようなセリフがあります ↓
” 銀行は晴れた日に傘を差し出し、雨の日には傘を取り上げる。”
つまり。銀行は、相手の調子が良いとき(晴れの日)には傘(融資)を差し出すけれど、調子が悪いとき(雨の日)には傘(融資)を取り上げる。
こちらが困っていないときには「おカネを借りろ」と言うのに、困っているときには「おカネを返せ・おカネは貸せない」と言う。そんなセリフです。
これを聞いて、「それはドラマのなかのハナシだろう」とタカをくくっているのであれば間違いです。さきほどのセリフは、ほぼほぼ事実を言っています。
また、「やっぱりか。なんて銀行はヒドいんだ!」と怒りをあらわに、声をあらげるのも間違いです。
なぜならば。銀行が晴れた日に傘を差し出し、雨の日には傘を取り上げるのは「あたりまえ」だからです。あたりまえのことに腹を立ていてもしかたありません。
銀行には日傘しかない。雨傘はないのです。
というわけで、次のようなお話をしていくことにします ↓
- 銀行が雨の日に傘を取り上げるのはなぜ「あたりまえ」なのか?
- 雨の日に傘を取り上げられてしまうなら、どうすればよいのか?
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行が雨の日に傘を取り上げるのはなぜ「あたりまえ」なのか?
銀行が雨の日に傘を取り上げる。つまり、会社の調子が悪くて困っているときには融資をしてくれない、場合によっては融資を回収しようとする。
これが「あたりまえ」だと言うのは、いったいどうしてなのか?
ひとことで言うのであれば。おカネを貸す(融資する)のは、銀行の「ビジネス」だからです。
言い換えると、銀行は「慈善活動」でおカネを貸すのではないからです。
預金が消失しても、あなたは納得できるのか?
銀行が融資をする際の「原資」は、基本的に、預金者からの「預金」です。
預金者からあずかったおカネを元手に融資する。これが銀行融資の「しくみ」であり、銀行の「仕事」でもあります。
では、もしも。「おカネが無くて困っているから助けて!」という会社に対して、「困っているから助けよう」という理由で銀行が融資をしたら。
そして、もし。結局は融資先の会社が倒れてしまい、銀行が「(回収できなかったので)預金はお返しすることができません…」と言い出したなら。
預金者は納得をできるのでしょうか? できませんよね。
おカネが無くて困っているような相手(倒産する可能性が高い相手)に融資をするからだっ! 貸した銀行が悪い! 預金を返せ! と、預金者みなが怒り出すでしょう。当然です。
だから銀行は、雨の日に傘を取り上げるのです。そうでなければ、預金者からあずかった「だいじな預金」を守ることができません。
銀行は「ビジネス」でおカネを貸しているのであり、「慈善活動」でおカネを貸しているわけではない。これが、銀行が「雨の日に傘を取り上げる」理由です。
損をしてまで融資をする意味がない
銀行が雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を差し出す理由について。もうひとつ、お話をしておきます。
銀行は融資をする際、その融資の回収可能性に応じて「費用計上」をしています(専門的には「引当を計上する」と表現されます)。
業績が悪く回収可能性が低いような会社への融資については、回収不能による損失を見込んで「大きな費用」を計上しなければいけない。ということになっています
(逆に、業績が良く回収可能性が高いような会社への融資については「小さな費用」で済みます)。
ですから、せっかく融資をして利息収入があったとしても。その融資の回収可能性が低いような場合には「大きな費用」の計上によって、収入はブっ飛んでしまうことになるわけです。
また、融資先が倒産するなどして、実際に回収できないとなれば。損失として、もっと大きな費用を計上しなければなりません。これでは、銀行自身の業績が悪化してしまいます。
したがって、「じぶんたちが損をしてまで融資をするなんてありえない」と銀行が考えるのは、しごく当然のことだと言えるのです。
厳密に言えば、「雨の日の傘」はあります。緊急で甚大な危機に対する、いわゆる「セーフティネット」融資です。
とはいえ、それは利用の場面が限られるものであり、融資全体から見ればごく一部でしかないことを覚えておきましょう。
基本的に、銀行には日傘しかなく、雨傘はありません。
雨の日に傘を取り上げられてしまうなら、どうすればよいのか?
銀行が雨の日に傘を取り上げるのは「あたりまえ」だ、というお話をしてきました。
では、それが「あたりまえ」ならば。おカネを借りる側のわたしたちは、いったいどうすればよいのか?
もうわかりますよね。
晴れの日に傘を借りにゆけ
多くの人・多くの会社が、「困ってから」おカネを借りに行こうとします。
銀行には日傘しかないことを知らない、あるいは、理解していないからです。当然、融資を受けることは困難であり、結果、たいへん苦しい思いをすることになります。
そのような憂き目を見ないようにするには、「晴れの日」に傘を借りること。業績・状況が良いときに融資を受けるようにすること。これしかありません。
銀行は常に「融資先」を探しています。おカネを貸すのが仕事なのですから、「貸したい」というのが銀行の基本姿勢です。
ただし、アブナイ融資先はご免であり、優良な融資先を強く求めています。
であるならば。晴れの日に融資を求めれば相思相愛です。当然、融資は受けやすくなります。
差し出された日傘は借りよ
銀行のほうから、「おカネを借りてください」「おカネを借りませんか」と言ってくることがあります。いわゆる「営業」です。
これに対して、
” いらん、いらん。いまウチはおカネあるから ”
とカンタンに断ってしまう場面が散見されますが。せっかく、銀行が「日傘」を差し出しているのですから、「借りておく」ことを考えるべきでしょう。
止まない雨がないように、晴れ続けることもありません。長く会社・事業をしていれば、いつか必ず雨が降ります。
そのときになって融資をお願いしても、銀行が雨傘を持たないことは、これまでにお話をしたとおりです。
晴れの日(会社の調子が良いとき)に借りに行く。銀行が差し出す日傘(営業による融資)を断らない。覚えておきましょう。
日傘のメリット
さいごに。晴れの日に借りに行く、日傘を断らないことの「メリット」を挙げておきます。
融資条件が良くなる、です。
会社の調子が良ければ、金利が低い・担保や保証無しなど、良い融資条件が期待できます。
また、銀行のほうからの営業であれば「借りてほしい」わけですから、融資条件を交渉しやすくなります。結果として、良い融資条件が期待できます。
結局のところ、おカネの貸し借りのキモは、貸す側・借りる側双方の「パワーバランス」にあります。
基本的に、貸す側である銀行のチカラが強く、借りる側のわたしたちのチカラは弱い。融資条件の裁量は、銀行に握られているのです。
「金利が高い!」と文句を言っても、「じゃあ貸さない」と言われたらおしまいですよね。
融資条件を交渉することは難しいと考えれば、日傘が持つメリットをじゅうぶんに感じることができるでしょう。
加えて、日傘のメリットをもうひとつ。それは、「次の融資が受けやすくなる」ことです。
銀行は、貸した・返してもらったという「実績」を重要視しています。実績がある相手のことは「知っている・わかっている」から貸しやすいのです。
いまは必要なくても、いつか融資が必要になるのであれば。いま融資を受けておくことが、将来の融資を受けるときに役立ちます。
それに。銀行だって、困ったときばかり「貸して貸して」と言われる相手よりも、貸したいときに借りてくれた相手のほうを好むでしょう。
銀行融資をじょうずに活用するには、銀行との常日頃の「おつきあい」が大切です。
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まとめ
銀行が雨の日に傘を取り上げる理由、それに対してどうすればいいか。というお話をしてきました。
まずは、「銀行には日傘しかなく、雨傘はない」と心得ましょう。
そして、とことん日傘を活用する。これが銀行融資における要諦です。