ムダな借入はするな! と聞きますが。
現実には、言うほど「ムダな借入」というものはありません。必要な借入までムダと言ってはいないか、確認をしてみましょう。
「ムダな借入」なんて見たことがない、とまでは言わないけれど
会社・事業における「銀行融資」について。
当ブログではなにかにつけて、「借りられるときに借りられるだけ借りるべし」という話をしています(おそらく聞き飽きたヒトも居るほどに)。
片や、世の中には。「ムダな借入はするな!」との考え方があります。またその考え方が大勢だとも言えるでしょう。
だが、しかし。
こと「中小企業」の銀行融資を言うのであれば、むしろ、ムダな借入など無い。というのがわたしの考えです。
まったく無い、とまで言うのは言い過ぎにしても。ほとんど無い、と言うことには抵抗がありません。
そこで。「ムダな借入」でよく言われる 3つのムダについて、「そうでもないですよ」というお話をしていきます ↓
- 利息を払うのがムダ
- おカネを置いておくのがムダ
- 財務指標が悪化するムダ
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
利息を払うのがムダ
銀行からの借入について。利息を払うのがもったいない! というハナシをよく見聞きします。
いっぽうで。そんなことを言う社長に限って、あるとき急に「おカネが無いっ!」とアタマをかかえて、資金繰りに奔走をしています。
であるならば。銀行に支払う利息よりも、社長が資金繰りに縛られることのほうがよほどもったいない、と考えるべきでです。
社長がアタマをかかえて悩んでいる時間、資金繰りに奔走している時間を時給換算したらいくらになるのでしょう?
また、急な資金繰りに対応するために、本来やるべき「社長の仕事」ができないのだとしたら。その損失の大きさたるや…
おカネが無いから「急」に資金繰りをするのではなく、おカネが無くならないように「計画的」な資金繰りをしておけば避けられる損失です。
計画的に、あらかじめ借入しておくことができれば、急な資金繰りは起こりにくくなります。
このとき、あらかじめ借入することによる利息は、決して高いものではありません。
たとえば。300万円を金利 2%で借入したとして。中小企業が 300万円あれば、日々の資金繰りはだいぶ変わることでしょう。
では、このときに支払う利息はと言うと。年間 6万円です。ひと月にしたら 5千円、1日にしたら 167円です。
これを、急な資金繰りに対応するときの、社長の時間やストレスなどと比べてみたらどうでしょう?
銀行に支払う利息は決して高いものではない、ムダなものではない。そう考えることができるはずです。
「金利2%なんてもったいない」と言う前に。2%の利息は実際に何円なのか、計算をしてみましょう。社長の時間・社長の仕事と、その価値を比較してみましょう。
おカネを置いておくのがムダ
会社のおカネを使わずに置いておくなんてムダだろう、というハナシもまたよく見聞きします。
いっぽうで、必要であるはずのおカネも持たずに資金繰りに窮している会社は少なくありません。
具体的には、月商の1ヶ月分ていどの現金預金で、おカネをギリギリ回している。というようなケースです。
このようなケースで、社長が資金繰りに縛られる不利益については、さきほどお話をしたとおりですが。
さらなる大きな問題があります。もはやギリギリ回すことさえもできずに、会社を潰してしまうという事態です。
決して少なくはない社長が「困ったときには借りればいい」と考えていますが、銀行のほうは「困っているなら貸したくない」と考えています。
CHECK! 雨の日に傘を取り上げるのは当然!銀行融資は晴れの日に傘を借りよ
結果、切羽詰まっているのに借りられない。借りられるかもしれないけれど、審査から入金までに時間がかかる。間に合わない。ということが起きています。
これを避けるためには、「おカネを置いておくのはムダだ」と考えないことです。自己資金がないのであれば借りてでも、なるべくおカネを置いておくことです。
目安は、月商の 3ヶ月分以上。1ヶ月分では厳しすぎるし、2ヶ月分だと不測の事態に慌てます。3ヶ月分くらいあれば、不測の事態にもあるていど落ち着いて対応する余裕ができます。
なにがあっても絶対におカネは借りない! と言うのであれば別ですが。いつか借りるかもしれないなぁ、というのであれば。借りられるときに借りておきましょう。
大企業のように豊富な資金調達手段を持たない中小企業にとって、銀行融資は生命線です。
財務指標が悪化するムダ
銀行から借入をすると、たしかに「財務指標」が悪化します。
たとえば、「自己資本比率」。「借入金」という負債が増えることにより、自己資本比率は悪化します。
この点で。常にたくさんの株主(投資家)の目にされされている「大企業」であれば、自己資本比率など財務指標の悪化は要注意でしょう。
株価の下落もありえますし、今後の資金調達に支障をきたすこともありえるからです。
これに対して「中小企業」は、と言えば。多くのケースで、株主は社長とその親族で占められています。
であるならば。自己資本比率が下がったから、いったいなんだというのでしょう?
それよりもなによりも。いざというときに備えて、おカネを持つことのほうがずっと重要だ。というのは前述したとおりです。
誤解なきように申し添えますが、財務指標にもとづく財務分析や、その改善への取り組みを否定するつもりはありません。
優先順位の問題として、「目先の財務指標よりもまず、借入をして必要なおカネを持つことだ」という話をしています。
いずれじゅうぶんなだけのおカネを自己資金で準備できるようになれば、財務指標はおのずと良くなります。
けれどもその前に、会社の継続・成長の過程でおカネが尽きてしまうのでは元も子もありません。
そう考えると。いずれ良くなることを意図した財務指標の悪化には、それほどのムダはないはずです。
借入をすれば、その分だけおカネも増えます。このおカネを持っているうちは、いつでも返せるのですから、借入金が無いのと実質的にいっしょです。
銀行もまた、現金預金が潤沢にある会社の安全性は高い、と見ています。たとえ借入によるおカネであったとしても、おカネがある限り、すぐに潰れることもないからです。
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まとめ
現実には、言うほど「ムダな借入」というものはありません。というお話をしてきました。
「ムダな借入はするな!」は、よく耳にするところですが。ほんとうは必要なはずの借入までムダと言ってはいないか、確認をしてみましょう。