「決算書の良し悪し」「担保・保証の有無」に偏った融資審査は変わろうとしています。
これから注目される「事業の内容・将来性」について。銀行から融資を引き出す「ヒト」に関する5つのポイントのお話をしていきます。
これからは「事業の内容・将来性」が融資の可否に影響する
銀行の融資に対する姿勢は、変化をしつつあります。
従来、融資可否の審査をするうえで重視をされてきた「決算書の良し悪し」「担保・保証の有無」に加えて、「事業の内容・将来性」に銀行は注目をしはじめています。
事業の内容・将来性だなんて、なにをいまさら… ということではありますが。
1990年代の不良債権問題をきっかけに、その後は「決算書の良し悪し」「担保・保証の有無」に偏った融資審査になっていたのです。
ところが、ここへきて、少々流れが変わりはじめました。決算書や担保・保証の考え方は残っていますが、あらためて「事業の内容・将来性」も見ていこう、という流れが生まれています。
銀行はもっと「目利き」を効かせて、もっと融資の幅を広げていかなければ、銀行が生き残ることができない時代になりました。詳しくはこちらの記事もどうぞ ↓
CHECK! 変わる銀行融資…『これからの銀行対応』で押さえておきたい3つのポイント
そこで。融資を受ける側としては、自社の「事業の内容・将来性」をアピールすることが、今後は有効な手段になります。
アピールすべきことがらの中から、「ヒト」に関するものにしぼって、本記事ではお話をしていきます ↓
- 給料・賞与
- 研修費
- 福利厚生費
- 採用情報・定着率
- 後継者
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行から融資を引き出す 「ヒト」に関するポイント
給料・賞与
「費用が増加する」のは良くないこと、という見方があります。費用が増えた分だけ、「利益が圧迫される」からです。
銀行融資に関して言えば、「利益が大きいほど返済力がある」と考えられ、費用が増加して利益が減ることにはネガティブな一面があります。
ところが。従業員に対する給料や賞与が増加しているような場合には、銀行から融資を引き出すきっかけにできることもあります。
ポイントは、「給料・賞与を上げられているのは業績が良いから(あるいは良くなると見込んでいるから)」を語れるかどうかです。
業績が悪い会社では、利益や資金に余裕がなく、なかなか給料・賞与を上げられないもの。とくに中小企業の昇給は、大企業のようにはいかないのが現実です。
にもかかわらず、給料・賞与を上げられる中小企業は、余裕がある・チカラがあるという証だとも言えます。その証は、銀行が「融資をしたい」と考える動機になるでしょう。
業績が良いから給料・賞与を上げられる → 従業員の働く意欲が向上・持続する → ますます業績がよくなる。好循環により、成長が見込まれる会社を銀行は探しています。
このような好循環を意図している・実行しているのであれば、ぜひ、「給料・賞与の増加」を積極的にアピールしてみましょう。
研修費
従業員の研修費が増加をしている。これもまた、費用の増加ながらも、銀行から融資を引き出すきっかけになります。
ポイントは、「研修費は、会社が成長するためには当然必要だから」を語れるかどうかです。
言うまでもないことですが、会社が成長するうえで「ヒトの成長」は欠かすことができない要素のひとつ。ヒトの成長を促すために、研修費をかけるのは理にかなったことです。
いっぽうで、利益や資金がなければ、研修費におカネを使うことではきません。
したがって、研修費が増加している、あるいは、一定額以上の研修費を支出できているのは、会社の業績や財務状況が安定しているから。とも言えます。
このように、人材育成に対する理解・しくみがあり、おカネをかけられるチカラがある。さらなる成長が見込まれる会社として、融資先を探している銀行の目には魅力的に映るはずです。
計画的な「研修費の増加」についても、ぜひ、積極的にアピールをしてみましょう。
福利厚生費
またまた費用の増加についてですが、福利厚生費の増加もまた、銀行から融資を引き出すきっかけになります。
ポイントは、「福利厚生費は、従業員のマネジメントに役立つから」を語れるかどうかです。
ひとくちに福利厚生費と言ってもさまざまあります。保養所・スポーツクラブなどの利用補助費用、社員旅行などのイベント費用、社宅の借り上げ費用、従業員や家族への慶弔見舞金などなど。
どれを選ぶのかは会社それぞれですが、福利厚生費をかける目的は「従業員のため」で一致しているはずです。従業員がより働きやすいように、働く意欲がよりわくように、費用をかけているはずです。
であるならば。ほんとうに従業員のためになっているのかどうか、が福利厚生費の価値であり、成果になります。
そこで、自社の福利厚生制度について、「社員の感想・評価」「利用状況」「採用への影響」などをまとめてみるとよいでしょう。
それらが良好な結果であれば、福利厚生費は「従業員のため」に役立っている、従業員のマネジメントに役立っている、との根拠と言えます。
福利厚生費をかけられる会社、福利厚生費で従業員をマネジメントできる会社として、「福利厚生費の増加」をアピールしてみましょう。
採用情報・定着率
毎年、どれくらいの人数の新卒・中途採用しているか。その後の定着率はどうかなど。人事に関する情報も、銀行から融資を引き出すきっかけになります。
ポイントは、「会社の安定的な成長・持続を考えている」を語れるかどうかです。
会社を成長させるにせよ、持続させるにせよ、ヒトは重要な要素です。近年の人手不足も相まって、ヒトの重要性はますます高まっています。
なかなかヒトを採用できない… 一定数の退職はある… ヒトが足りない… というのはよく見聞きする話です。
その「ヒト」を、きちんと採用できている、定着させることができているのであれば。安定的な成長・持続が見込める会社として、銀行にアピールすることができます。
採用情報や定着率などの人事情報をとりまとめて、ぜひ、銀行に提示をしてみましょう。
また、あたらしい事業や、あたらしい商品・サービスの展開などに向けた採用であれば。そこに充てる資金として、銀行のほうから融資の提案も期待できるところです。
後継者
後継者がなく廃業する中小企業が多いことが問題になっています。
銀行融資に関して言えば、後継者がいない会社は「将来性」が限られており、現社長の高齢化とともに融資はしづらい状況になるものです。
これに対して、後継者が決まっている・後継者候補がいる会社には「将来性」が期待できることから、「後継者あり」は融資審査上プラスに作用します。
銀行から見れば、融資をしたい会社であり、後継者がいる会社を銀行は探していると言ってよいでしょう。
ポイントは、「計画的な事業承継を進めている」を語れるかどうかです。
後継者が決まっている、あるいは後継者候補がいるのであれば、銀行に伝えましょう。加えて、どのようなスケジュールで、なにをどのように承継を考えているのか伝えましょう。
社長の理念・方針、業務、財産など、承継するモノはいろいろです。それらをスケジュールするのです。
すると、後継者が株式を取得するために必要な資金などについて、銀行のほうから融資提案を期待することもできます。
「後継者あり」の情報は、ぜひ、銀行にアピールしましょう。
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まとめ
銀行から融資を引き出す「ヒト」に関する5つのポイントについてお話をしてきました。
「決算書の良し悪し」「担保・保証の有無」を重視しすぎてきた銀行融資は変わろうとしています。
今後は「事業の内容・将来性」も融資を引き出すだいじな要素になります。いかにしてそれをアピールするか。そのひとつが本記事の内容です ↓
- 給料・賞与
- 研修費
- 福利厚生費
- 採用情報・定着率
- 後継者