「在庫の現物を見せてもらえますか?」「倉庫を見せてもらえますか?」と銀行に言われら。
そこで、融資に影響する「在庫・倉庫」を銀行に見せるときのポイントについてお話をしていきます。
融資に影響する「在庫」、ゆえに「倉庫」を見たい銀行
会社・事業の銀行融資において、「在庫」は融資の可否に影響する要素のひとつです。
たとえば。在庫の金額を水増しして利益を増やす、という高名にして古典的な粉飾手法があります。
ゆえに銀行は、決算書に記載された「在庫」の金額は事実なのか、に関心を持っています。「在庫」が置かれている「倉庫」にも、自然、関心を持つことになります。
ですから銀行とお付き合いをしていると、「在庫の現物を見せてもらえますか?」「倉庫を見せてもらえますか?」という機会もあるでしょう。
あるいは、銀行の関心に応えるために、あえてこちらからお見せする。という考え方もあるでしょう。
粉飾以外にも、銀行が関心を持つ理由はあるわけですが。そのあたりも踏まえて、「在庫・倉庫」を銀行に見せるときのポイントについてお話をしていきます ↓
- ほんとうに在るのか? を見せる
- ほんとうに売れるのか? を見せる
- 整理整頓できているのか? を見せる
- 在庫量は妥当かどうか? を見せる
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「在庫・倉庫」を銀行に見せるときのポイント
ほんとうに在るのか? を見せる
銀行が在庫について考えることはまず、「ほんとうに在るのか?」です。
決算書(あるいは試算表)に記載されている金額分の在庫が、ほんとうに実在しているのかどうかを銀行は気にしています。
もしも実在していなければ、意図的か否かはともかく「資産の水増し・利益の水増し」という結果になるからです。
したがって、在庫のなかでも金額や数量が多い品目を中心に、在庫表と実物とを照らし合わせながら、倉庫を案内するとよいでしょう。
しかし当然、在庫は日々入出庫があり変動していますから、在庫表の金額・数量とは一致をしません。
それでも「いつも同程度」の金額・数量で推移する品目も少なくないものです。また、変動が大きな品目については、経緯や理由を説明するきっかけになります。
これらの案内・説明によって、銀行から「おおむね・ほんとうに・在りそうだ」との理解を得ることを考えましょう。ポイントは「おおむね」です。
金額も数量も寸分の狂いなく合っていることを証明するのは困難なのであり、銀行もそこまでの完璧さを求めているわけではありません(もちろん、完璧であるに越したことはありませんが)。
融資先の評価がくつがえってしまうほど大きな「資産の水増し・利益の水増し」は無い、とわかるくらいの「おおむね」でじゅうぶんです。
ほんとうに売れるのか? を見せる
ほんとうに在庫があるとして。次に銀行が気にすることは、「ほんとうに売れるのか?」です。
もしも売れないということになれば、いわゆる「デッドストック(不良在庫)」として、価値のないモノとして考えなければなりません。
そのときは、決算書に記載されている在庫の金額は減額評価されることになります(融資審査上はマイナスの影響があります)。
そこで、ほんとうに売れていることを示すために、「在庫の動き」を見せるようにしましょう。具体的には、在庫の「入出庫状況」です。
各品目が、定期的に同程度の入出庫を繰り返しているのであれば、在庫が動いていることの証明になります。つまり、在庫が売れていることの証明になります。
入出庫状況の説明時には、「入出庫表」があるのがベストです。また、適正な在庫管理の観点からも入出庫表の記録が望まれるところです。
入出庫表がない場合には、過去の在庫表の「残高」の推移から「なんとなく動いていそうだよね」を推測するていどになります。説得力としてはだいぶ落ちるのを覚悟しなければいけません。
とくに金額・数量が多い品目など、必要に応じて「入出庫表」を備えるようにしましょう。
整理整頓できているのか? を見せる
在庫表や入出庫表を見た銀行は、こんなことも考えます。これ、ほんとうに合っているのかなぁ?
この点で、もしも倉庫内が乱雑であったり、端っこのほうなどにホコリをかぶったような在庫があったりすれば、銀行は一気に不安になることでしょう。
こんな乱雑ななかで、きちんと在庫を管理できているんだろうか…? 端っこにある在庫は管理されているのだろうか…? というか、デッドストック? などなど不安になります。
言うまでもないことですが、「整理整頓」はキホンです。在庫・倉庫の整理整頓ができずイイ加減なようだと、経営全般・財務全般などまでもがイイ加減を疑われかねません。
銀行は、在庫や倉庫のようすを通じて、そこまで考えるということを覚えておきましょう。
昔から、その会社の良し悪しは「トイレの清潔さ」にあらわれるなどとも言われます。実際、「わざわざトイレを借りる」という銀行員の話もお聞きします。
一事が万事、在庫・倉庫に限らず、整理整頓を心がけましょう。
在庫量は妥当かどうか? を見せる
在庫は会計上「資産」です。資産なのだから在庫はたくさんあったほうがいいか、と言うとそうでもありません。
なぜなら、過剰な在庫を持つことにはデメリットがあるからです。
たとえば、たくさんの在庫が売れずに残っていれば、おカネが入金されませんから資金繰りが悪化します。
また、たくさんの在庫を準備したけれど、思ったほど売れなかった。売れずに時間がたち、商品価値も下がってしまった。あるいは、もう売れない… 困りますよね。
ですから、銀行は「在庫量は妥当かどうか?」を気にしています。在庫量が過剰である場合には、危険な会社だと考え、融資審査上はマイナスです。
具体的には、決算書から在庫回転期間などの指標を計算し、同業種平均と比較。妥当かな、過剰ではないかな、ということを検討しています。
この点、自社の在庫量が同業他社などと比べて多い、ということであれば。なぜ多いのか? なぜ多くの在庫が必要なのか? を説明するのがよいでしょう。
ビジネスモデルによっては「在庫を持っているのが強み」ということもあります。同業種平均はどうあれ、「自社にとって在庫量は妥当(過剰ではない)」を伝えることが大切です。
実物を見ながらのほうがイメージもしやすく印象にも残るものなので、在庫・倉庫を案内するタイミングでお話をするのがおすすめです。
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まとめ
融資に影響する「在庫・倉庫」を銀行に見せるときのポイントについてお話をしてきました。
銀行が在庫のなにを見ようとしているのか?倉庫のどこを見ようとしているのか? これらを押さえたうえで、銀行に説明・案内をするようにしましょう。
結果として、銀行が状況をよく理解できますから、融資審査上プラスに影響することが期待できます。
- ほんとうに在るのか? を見せる
- ほんとうに売れるのか? を見せる
- 整理整頓できているのか? を見せる
- 在庫量は妥当かどうか? を見せる