” A銀行さんからの借入、ウチで借り換えをしませんか? 金利も検討しますよ。”
そんな魅力的な提案で、思わぬ失敗をすることがないように。肩代わり融資を提案されたときの対応手順についてお話します。
目先の魅力に惑うから、肩代わり融資は失敗をする
会社・事業における銀行融資について。こんなことを言われたら、どのように対応しますか ↓
B銀行 「A銀行さんからの借入、ウチで借り換えをしませんか?」
これは、いまあるA銀行からの借入をB銀行が肩代わりして融資をする、という提案です。
このような融資のことを「肩代わり融資」などと呼ぶことがあります。
肩代わり融資の提案は、銀行同士の顧客獲得競争のなかで行われるものです。ゆえに、借りる側にとっては、いまよりも良い融資条件が期待できます。
たとえば。A銀行の既存借入よりも、肩代わりするB銀行が低い金利を提示する。複数の既存借入をまとめて、結果的に毎月の返済額が軽減される、など。
借りる側からすると、「魅力的」な提案であることが少なくありません。
ところが、です。目先の魅力に惑わされると、対応を誤ることになります。肩代わり資金で失敗した… というケースもまた少なくはないのです。
そこで、肩代わり資金を提案されたときの対応手順について、失敗を避けるポイントをふまえたお話をしていきます ↓
- 肩代わり融資の提案にすぐに乗らない
- 既存取引銀行に提案内容を開示する
- それでも提案に乗るなら足元を見られぬように
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
肩代わり融資を提案されたときの対応手順
《手順1》肩代わり融資の提案にすぐに乗らない
肩代わり融資を提案されたときに、すぐに乗るのはやめましょう。いちど「保留」をする、これが1つめの手順です。
既存取引銀行との関係は断絶する
いちど「保留」をするのは、基本、肩代わり融資がおすすめできるものではないからです。
あらたにB銀行が、既存取引銀行であるA銀行からの借入を肩代わりするという場合。肩代わりをされたA銀行はどう感じるでしょう?
ひとことで言えば、「裏切られた」です。これまでいろいろ考えて融資をしてきたのに、それをB銀行に乗り換えるだなんて… 許せないっ!
ということで、肩代わり融資に乗れば、A銀行との関係は断絶することを覚悟しなければいけません。
断絶まではいかずとも、誰だって裏切られてよい気分にはなりませんから、関係悪化は避けられないでしょう。
したがって、よくよく慎重に考えるために、いちどは保留をするのです。
肩代わりの条件が「ほんとうに良い」のかを確認する
いちど保留にしつつ、肩代わりしてもらうときの条件(金利、返済期間、毎月の返済額、担保・保証など)を確認しておきましょう。
前述したとおり、肩代わりを実行すれば、今後は既存取引銀行からの融資がきびしくなる、というリスクを負っています。
にもかかわらず。実はそれほど良い条件ではありませんでした、というのでは割に合いません。ですから、条件はしっかり確認しましょう。
このとき、信用保証協会付きなのか・プロパーなのか? の確認も忘れずに。
既存取引銀行からはプロパー融資があるのに、肩代わり後はすべて信用保証協会付き。これだと、信用保証料の支払負担もさることながら、保証の枠を減らしてしまうというデメリットがあります。
いっぽうで本来は、できるだけプロパー融資を引き出し、いざというときのためにも保証の枠を空けておくのがベストです。
一般に、お付き合いが浅いとプロパー融資は出にくいことから、「既存取引銀行とのお付き合いは貴重」だということを押さえておきましょう。
信用保証協会付き融資とは、借主が返済できなくなった場合に、信用保証協会が代わりに返済をする保証(上限あり)を付した融資です。銀行としてはリスクが小さく、貸しやすい融資になります。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証が無く、銀行が単独でリスクを負って貸し出す融資です。銀行としてはいっそうの慎重を求められ、信用保証協会付きに比べると貸しにくい融資になります。
《手順2》既存取引銀行に提案内容を開示する
《手順1》で、提案を保留し、肩代わりの条件を確認したのなら。既存取引銀行に提案内容を「開示」する、これが2つめの手順です。
既存取引銀行からも提案、が望ましい
肩代わりの条件が、既存取引銀行との融資条件よりも良い、という場合。肩代わり提案の内容を、既存取引銀行に伝えてみましょう。
「実はB銀行さんから、このような条件で肩代わりをすると提案がありました」などと言いながら、肩代わりの条件を提示します。提案に乗るとも乗らないとも言わず、まずは情報を開示するだけ。
これを聞いた既存取引銀行が、どのように返答するかがポイントになります。
「B銀行には負けたくないなぁ」と考えれば、肩代わりの条件に対抗するような提案を口にすることになるでしょう。
その提案が、肩代わりの条件ほどに良いものかはわかりませんが。おおむね同じ、あるいは妥協できるようなレベルであれば、肩代わりはやめておくのが無難です。
いざというときには、お付き合いの長さ・深さがモノを言います。これまでのお付き合いがある既存取引銀行であれば、困ったときにもなんとか対応してくれるかもしれません。
けれども、お付き合いが浅い肩代わり銀行となると、困ったときには逃げられる。というのは、ごくごくフツーのことだからです。
既存取引銀行の態度が冷たい、ならば肩代わり
既存取引銀行に肩代わりの条件を開示したところ、特に対案もない。それどころか態度が冷たい、ということもありえます。
言うなれば、「どうぞ肩代わりしてもらってください」というような。
これは、そもそも既存取引銀行からの評価が低く、関係性もよろしくないことのあらわれです。
こうなると、今後も既存取引銀行からの積極的な支援は「期待薄」なわけですから。むしろ肩代わりをしてもらい、他銀行とあらたにお付き合いをはじめる・深めるのがよいでしょう。
《手順3》それでも提案に乗るなら足元を見られぬように
《手順2》で、既存取引銀行の反応が悪いので肩代わりする! となるのであれば。「足元を見られぬように」というのが、3つめの手順です。
既存取引銀行が冷たい、とは言わない
いちど保留にしていた提案について返事をするわけですが。このとき、「既存取引銀行の態度が冷たかった」ことには触れないようにしましょう。
態度が冷たいとなれば、「もしかして実は、状況が悪くて危ない会社なのかな?」と考えるのが銀行です。そうなれば、「やっぱり肩代わりはやめよう」となりかねません。
ですから、既存取引銀行の反応をあえて言ったりはしないことです。
ではもしも聞かれてしまったら? 「フツーはいい顔をされませんよね。肩代わり自体が気分のいいものではないでしょうから」と、フツーのこと(一般的なこと)についてお答えしましょう。
心苦しさはあるかもしれませんが、ウソは言っていません。
自社の状況をきちんと伝える
肩代わり融資に限ったことではありませんが、自社の状況についてはきちんと伝えるのが大切です(状況が悪いと伝えにくいところはありますが…)。
具体的には、試算表・資金繰り表・銀行借入一覧表などを提示しながら、自社の状況についてを伝えるようにします。
銀行のほうでも、「危ない会社には融資したくない」という気持ちがありますから、状況を把握する機会を喜んでくれるはずです。管理能力が高い会社として評価もされるでしょう。
結果として、金利が低くなる、プロパー融資が出るなど、融資条件が良くなる効果も期待できるところです。
提案に乗るといっても焦りすぎないこと。焦りが見えると足元を見られるものですし、ヒかれてしまうこともあります。
ムチャを言わない
ヒかれてしまうという点では、あまりムチャを言わないことです。
銀行が貸したくて前のめりなのだから、さらに良い融資条件を引き出そうと、厳しい交渉を迫る人がいます。
交渉自体が悪いわけではありませんが、あまりにムチャを言えば、銀行も嫌気をすることでしょう。
直接的な交渉をするよりも、前述したような「自社の状況」を伝えることのほうが有効です。
良い会社だと銀行に理解してもらえれば、「ほかの銀行にはとられまい」との競争意識がはたらきます。おのずと、融資条件は良くなります。
いずれにせよ、ムチャは逆効果です。以降のお付き合い・関係性に影響することころですから、じゅうぶんに気をつけましょう。
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まとめ
銀行に肩代わり融資を提案されたときの対応手順についてお話をしてきました。
魅力的な提案に惑わされて失敗することがないように。3つの対応手順を押さえておきましょう。
- 肩代わり融資の提案にすぐに乗らない
- 既存取引銀行に提案内容を開示する
- それでも提案に乗るなら足元を見られぬように