その利率、信じていいの?銀行融資の表面金利と実質金利の違い

実質金利と表面金利

今度の融資、利率が下がって1%台だって。やったね!

と喜ぶにはまだちょっと早いかも。実質金利は計算してみましたか?

「えっ、なにそれ?」というあなたは、この機会に表面金利と実質金利の違いを覚えましょう。これからの銀行融資、資金調達に活きますよ。

目次

拝啓、表面金利の低さを喜んでいるあなたへ

少々挑発的なタイトルで失礼しました。けれども、「表面金利だけ」を見ているというのはそれほどの危うさがあります。

表面金利とは、実質金利とは

はじめにササッと言葉の定義をお話しします。

表面金利とは 

融資する銀行が提示する金利。「年利 〇%」という表現の「〇%」が表面金利。約定金利とも言う

実質金利とは

融資に対する実質的な金利、ほんとうの金利。銀行がウラで計算している金利。実効金利とも言う

表面金利のほうはだいじょうぶかと思います。借入をする際、目にしたり耳にしたりする金利がそれです。

いっぽうの実質金利。詳しくはこのあとお話しますが。要は、通常「表に出てこない」、ウラの金利ということになります。

「ウラ」なんていう表現に、銀行関係者の方は気を悪くされるかもしれませんが。悪意はまったくありませんのでご容赦ください。

実質金利は表面金利を上回る

表面金利と実質金利のカンタンな定義を確認しました。

この2つの金利の間には、基本的に次のような関係があります。

実質金利 > 表面金利

つまり。実質金利は表面金利を上回るということです。

これを次の例示で確認してみることにしましょう。

《 例 》

  • 融資条件 ・・・ 融資金額 3,000万円、表面金利 1.9%
  • 定期預金 ・・・ 500万円
  • 普通預金 ・・・ 平均的に1,000万円前後の残高で推移
  • 定期預金、普通預金いずれも融資を受ける銀行に対するもの
  • 定期預金、普通預金の利息は僅少であるため「預金利息はゼロ」とする

上記の例について、実際に「実質金利」を計算してみます。次のとおりです。

  • 実質金利 =(借入金利息-預金利息)÷(借入金-預金)
  • 実質金利 =(3,000万円 × 1.9% - 0万円)÷(3,000万円-500万円-1,000万円)
    =57万円 ÷ 1,500万円
    3.8%

ということで、実質金利は驚愕の「3.8%」です。表面金利 1.9%の2倍・・・表面金利だけで喜ばないで、と言うのはこれのことです。

ちなみに、上記の算式の意味合いとしては。

3,000万円を借りても預金が1,500万円あれば、1,500万円しか借りていないのと一緒だよね。だから、1,500万円に対する金利を求めよう、というものです。

 

実質金利の損得と銀行交渉術

表面金利と実質金利の違いがわかったところで。それをどう活かせばよいのか、ということについてお話します。

実質金利を知っている銀行、実質金利を知らない会社

ところで。取引先の銀行からこんなことを言われたことはないでしょうか?

  • 定期預金、ちょっとやってもらえませんか?
  • 定期預金の解約?それはちょっと待ってくださいよ
  • 預金残高は〇万円以上にお願いできませんか、特に今月末は

などなど。勘のイイあなたなら、もうお気づきですよね。

これらはどれも、「実質金利の引き上げ」につながります。

おカネを貸すことをナリワイにしている銀行は、「表面金利」だけを見て仕事をしているわけではありません。むしろ、実質金利を見ています。

表面金利が下がろうとも、実質金利が上がれば良いわけで。だから必ず、銀行はあなたの会社の実質金利を計算しています。

そして当然のことながら。実質金利の上昇は、おカネを借りる側である会社にとって、決して喜ばしいことではありませんよね?

であるならば。実質金利を理解していなければ損をしうる。という点を、肝に銘じておく必要があります。

銀行が「金利を上げたい」と言うのなら

たとえば。銀行が「利率(表面金利)を少し上げさせてください」と言ってきたら。

どうぞどうぞ上げてください、と言うような会社はないでしょう。

ところが実質金利を知らない会社には「交渉の材料」がありません。イヤだとダダをこねるか、シブシブ受け入れるか・・・

実質金利を知っている会社はひと味違います。

さきほどの例示の会社であれば、「じゃあ、定期預金を解約する」という交渉を思いつくことができます。

計算してみるとわかりますが。500万円の定期預金が無くなると、実質金利はもともとの3.8%から2.85%まで下がってしまいます。

この結果は銀行としては非常にキビシイ。ちょっと利率を上げたくらいでは追いつきません。

会社が「金利を下げたい」と願うなら

逆に、会社が「利率(表面金利)を少し下げたいなぁ」と願うなら。どうしましょう?

もちろん、手ぶらで銀行に「お願い!」と言ってもそれは難しい話にあります。

というわけで、さきほどの反対です。実質金利の算式を思い出せば・・・

その銀行に対する預金を増やしてみる、定期預金を組んでみる。というような交渉材料があることに気づきます。

「一時的」に実質金利は上がってしまいますけれど。ひとまずの交渉として使える手段だと言えます。ひとまず、だなんてお主もワルよのう。

取引先銀行別の実質金利一覧表をつくろう

上記のような交渉も含め。銀行との取引、資金調達をするにあたり、「取引先銀行別の実質金利一覧表」をつくっておくことは有効です。

これにより、「A銀行は他の銀行よりもずいぶんムリを言ってくるな」というようなことがわかります。

そんなA銀行には一覧表を提示しながら、「B銀行のほうが条件が良い(実質金利が低い)」などと言ってみるのはどうでしょう?

こやつデキる!と思われるか。はたまた、イヤなやつ!と嫌がられるか・・・

いずれにしても。銀行の考えを知り、交渉できる材料を持つことで、会社の財務のチカラが高まります。

 

まとめにかえて~実質金利ばかりでもダメ

表面金利と実質金利の違いにはじまり、実質金利を用いた銀行交渉術までのお話をしてきました。

もしかすると、「実質金利を武器に銀行とやりあおう」みたいな雰囲気にとられたかもしれませんが。

そういうことではありません。

万一、理不尽な要求があれば、やりあうことも必要ですが。必要以上にやりあうことも、ケンカ腰になるのもいけません。

銀行は会社にとって、たいせつな資金調達の相手先のひとつです。

会社も銀行もお互いに。長く、安定的に、安心して取引できることが望ましい姿です。

実質金利はそれをかなえるためのモノであり、決して武器ではありません。

 

 

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  きょうの執筆後記
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