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損益計算書の『法人税等』が税引前利益から見て少ないときの銀行対応

法人税等が少ないときの銀行対応

”税引前当期純利益に税率をかけ算したら、この法人税等の額ってなんか少なくない?”

なんて決算書には注意が必要です。そこで、損益計算書の「法人税等」が税引前利益から見て少ないときの銀行対応についてお話をします。

目次

損益計算書の「法人税等」は銀行に疑われている

銀行から融資を受けている、あるいは、融資を受けようとすると、会社は決算書の提示を求められます。

銀行が決算書を見て、「おカネを貸してもだいじょうぶな相手かどうか」を見極めるためです。

その決算書について。銀行からこんなことを言われたらどう答えますか?

” 税引前利益から見ると、法人税等(法人税・住民税・事業税)の金額が少ないですね ”

つまり。損益計算書の税引前当期純利益の金額からすれば、もっと法人税等は多いはずではないのか? という質問です。

これは、単純な質問であると同時に、実は、粉飾決算(利益水増し)の疑いを持っている点にも注意しなければいけません。

会計上(決算書)で粉飾をしつつ、税務上(税務申告書)は粉飾する前の利益で税金計算をしているのでは…? と疑われているかもしれないからです。

このような銀行の質問・疑問について、「聞かれたら答える」のは当然としても、「聞かれなくても答える」という考え方を持ちましょう。

銀行が質問・疑問をわざわざ口にするとは限らないからです。事実とは異なる疑いを持ったまま、決算書や会社を見られてしまうことはじゅうぶんにありえることです。

その場合には当然、融資を受けられない・受けにくくなるなどの不利益をこうむることになるでしょう。困りますよね。

というわけで。損益計算書の「法人税等」が税引前利益から見て少ないときの銀行対応についてお話をしていきます。次の3点です ↓

「法人税等」が税引前利益から見て少ないときの銀行対応
  1. 税率の勘違いを確認する
  2. 繰越欠損金の経緯・解消見込を説明する
  3. 税額控除の説明をする

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

【参考】そもそも「納税している」ことを銀行は好む

借りたおカネの返済原資は「利益」です。利益があってはじめて、借りたおカネを返すことができる、というのが銀行側の考えです。

したがって。「利益あるところに税金あり」ですから、税金が多い・納税が多い会社を銀行は評価するということです。

 

「法人税等」が税引前利益から見て少ないときの銀行対応

《対応1》税率の勘違いを確認する

損益計算書の「税引前当期純利益」に「税率」をかけ算した金額が、税引前当期純利益の直下にある「法人税等(法人税・住民税・事業税)」の金額とほぼイコールであるはず。

と、銀行(員)は見ています。

この点で、銀行が「税率」を勘違いしていることもある。というのは、押さえておくとよいでしょう。

勘違いだなんてそんなバカな、と思われるかもしれませんが。

税率も昔からずっと同じではなく、税制改正で変化を続けています。ゆえに、銀行がその変化をすべて把握しきれていない、というのはありえることです(実際あります)。

以前は「法人税率」と言うと、だいたい「40%」という時代がありました。ところがいまは、だいたい「33%以下」です。だいぶ下がりました。具体的には次のとおりです ↓

中小企業の法人税等の税率
  • 利益 400万円まで → おおむね 21%
  • 利益 400万円から 800万円まで → おおむね 23%
  • 利益 800万円超 → おおむね 33%

たとえば、税引前当期純利益が 400万円だとしたら、法人税等は「400万円 × 21% = 84万円」です。

これを勘違いして、税引前当期純利益に以前の 40%をかけ算していると、「なんか法人税等が少なくない?」ということになるわけです。

このあたり、実は会社・経営者のほうでもよくわかっていない、というケースもあるものです。きちんと押さえておくようにしましょう。

《対応2》繰越欠損金の経緯・解消見込を説明する

税金の計算上、「繰越欠損金(くりこしけっそんきん)」という考え方があります。

決算が赤字だった場合に、その赤字額を翌年以降(最大 10年間)に繰り越して、翌年以降の黒字額と相殺する。その結果、翌年以降の法人税等を抑える効果があります。

このときの翌年以降に繰り越す赤字額を「繰越欠損金」と呼ぶのです。

繰越欠損金については、銀行も理解をしていますから。税引前当期純利益に対して法人税等が少ないときには、「繰越欠損金があるのかな?」ということは考えています。

また、実際に繰越欠損金がどれくらいあるのかは、法人税申告書のなかの「別表七」という書類を見ればわかります。

じゃあ、決算書・税務申告書を銀行に渡しておきさえすればいいかというと、そうではありません。

だいじなことは、繰越欠損金が発生した経緯と、今後の解消見込みであり、そのいずれも決算書・税務申告書を見ただけではわからないからです。

繰越欠損金の元は、過去の「赤字」です。いちど赤字が出れば、「また同じように赤字が続くかもしれない」と不安に思うのが銀行。

ゆえに、赤字が発生した原因と、その解決策などを伝えることで、銀行の不安を取り除いてあげなければいけません。

加えて、解決策の実行によって、「今後は毎年 〇〇円くらいの黒字で、繰越欠損金は〇年くらいで解消する(相殺し終わる)」というような見込みを提示するのがよいでしょう。

このあたりの説明が不十分だと、銀行は「(過去の)赤字のイメージ」を引っ張りますから融資姿勢が消極的になります。気をつけましょう。

《対応3》税額控除の説明をする

繰越欠損金に続いて、税金計算上の考え方をもうひとつ。「税額控除」です。

税額控除とは、一定の設備投資をしたり、一定の人件費増加があった場合などに、「一定額の減税を認める」という特典のことを言います。

この税額控除に該当すると、減税額は「法人税等」から直接マイナスすることになります。たとえば、こういう感じです ↓

税額控除がある場合の損益計算書例
  • 税引前当期純利益 400万円、税率 21%、税額控除 15万円
  • 法人税等(法人税・住民税・事業税)= 400万円 × 21% − 15万円 = 69万円

損益計算書の一部抜粋

税引前当期純利益    4,000,000
法人税・住民税・事業税    690,000

上記の例だと、見た目上、法人税率は「17.25%(69万円 ÷ 400万円)」ですから、「なんか法人税等が少なくない?」となるわけです。

税額控除の詳細は法人税申告書に記載されますが、不慣れな人が読み取るには少々難解だと言えます。

ゆえに、銀行も読み取れていないケースがありえますので、こちらから説明をしておくのがよいでしょう。

また、税額控除のきっかけである設備投資や人件費増加は、今後の運転資金の増加(売上増にともなう)につながります。

運転資金増加は銀行からの融資提案を期待できるところですから、やはり税額控除について銀行に説明をするのがおすすめです。

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まとめ

損益計算書の「法人税等」が税引前利益から見て少ないときの銀行対応についてお話をしてきました。

法人税等なんて銀行融資と関係があるの?と考えるところかもしれませんが、意外と「利益」とセットで見られているところですから押さえておきましょう。

「法人税等」が税引前利益から見て少ないときの銀行対応
  1. 税率の勘違いを確認する
  2. 繰越欠損金の経緯・解消見込を説明する
  3. 税額控除の説明をする
法人税等が少ないときの銀行対応

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