” 人を採用して給料が増えた ” ”今期は業績がよかったので臨時賞与を出した” ”今年は退職者が多くて退職金が多かった”
そんなときには、銀行対応を忘れずに。というわけで、損益計算書の「人件費」が増加したときの銀行対応3つのポイントについてお話をしていきます。
損益計算書の人件費増加を、単なる利益減少と見られぬように
会社・事業における銀行融資について。
融資を受けている・融資を受けようとすると、銀行から「決算書(あるいは試算表)」の提示を求められます。
このとき、銀行はさまざまな角度から決算書を眺め、おカネを貸してもよい相手かどうかを見極めています。
その「さまざまな角度」のひとつとして。損益計算書に掲載されている「人件費」が挙げられます。具体的には、給料や賞与、退職金です。
業種・業態によって差はありますが、それら人件費が経費のなかでも大きなウエイトを占める、ということは少なくありません。
したがって、銀行も人件費に着目し、その増加については注視をしています。言うまでもなく、人件費の増加は利益の減少につながるからです。
また、いちど増加した人件費を削減すること(解雇・減給など)は一般に困難ですから、将来にわたって利益の減少が続くことになります。
結果、人件費の増加が単なる利益の減少と見られれば、融資は受けにくくなってしまいます。困りますよね。
というわけで。人件費が前年の決算書よりも金額が増加している場合、黙ってなにもしないのではいけません。必要な銀行対応は、次の3つです ↓
- 給料・賞与の増加は「人数増」なのか「単価増」なのかを伝える
- 退職金は「退職者に問題がない」ことを伝える
- 運転資金の融資を引き出す
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「人件費」が増加したときの銀行対応 3つのポイント
《対応1》給料・賞与の増加は「人数増」なのか「単価増」なのかを伝える
人件費のうち、「給料」や「賞与」の金額が増えた場合。それらがどうして増えたのか、「原因」を銀行に伝えましょう。
このときのポイントは、原因が「人数増」によるものなのか、あるいは「単価増」によるものなのか、を分けて伝えることです。
給料・賞与の増加原因が「人数増」の場合
まず、給料・賞与の金額増加が「人数増」による場合。その背景として「受注が増加した・増加見込みがある」や「売上拡大・事業拡大への準備」が考えられます。
現在の受注増に対応するために人を増やす、将来の売上増に対応するために人を増やす、ということです。
これらの背景は、「足元の業績が好調である」「先行きの見通しも明るい」ことを示すものですから、銀行の積極的な融資を促す効果を期待できます。
受注増や受注見込みを示す書類(契約書・受注書・受注案件リストなど)、売上計画書・事業計画書などの根拠を提示しながら、銀行に伝えるようにしましょう。
給料・賞与の増加原因が「単価増」の場合
また、給料・賞与の金額増加が「単価増」による場合。その背景には「給与体系の変更」や「昇給」「業績好調による臨時賞与」などが考えられえます。
それらによって、同業他社の給与水準(銀行はデータを持っています)を上回るような状況にあれば、自社の「業績好調」や「今後の成長見込み」をアピールすることができるでしょう。
通常、足元の業績が悪かったり、今後の成長が見込まれていなければ、「単価増」はむずかしいものです。業績が良いからこそ、成長が見込まれているからこその「単価増」をアピールしましょう。
銀行対応のポイントは「常にポジティブ」です。ネガティブなこと(たとえば売上減少や赤字)を言えば、とたんに銀行は及び腰になります。
もちろん、ウソをついてまでポジティブなことを言ってはいけませんが。少なくとも、ネガティブなことは言わない・なるべく言わない、ということに気をつけましょう。
《対応2》退職金は「退職に問題がない」ことを伝える
損益計算書に「退職金」が掲載されていたり、その金額が増えていたりすると。銀行はこんなことを考えます ↓
- 労働環境が悪くて、社員の退職が続いている?
- 会社が倒産しそうで、社員が逃げ出している?
- 会社に将来性がなくて、優秀な社員が見切りをつけている?
- 役員が退職したのは、社長や会社に問題があるから?
つまり、なにかしら「ネガティブ」な原因があるのではないか? と疑っているのです。
ネガティブが事実であれば、会社の先行きが不安ですから、銀行としては融資に慎重にならざるをえません。
したがって、銀行には「その退職に問題はない」ということを伝えるようにしましょう。
具体的には、結婚、出産、育児、転居、病気・ケガ、家業を継ぐ、などが「やむをえない退職の理由」として挙げられます。
もっとも、多くの退職者は「ほんとうの理由」は言わないものです。代わりに「やむをえない退職の理由」で退職しようするものです。
とはいえ、それはそれとして。「やむをえない退職の理由」があるのであれば、それをもって「退職に問題はない」と銀行に伝えることです。
逆に、退職に問題があるならば。当然ながら、こちらから積極的に伝えることでもないでしょう。
《対応3》運転資金の融資を引き出す
《対応1》で、「受注増」や「売上増」について触れました。実際に売上が増加すると、「運転資金が増加」します。
運転資金の増加について、くわしくは別記事にゆずりますが。結論として、売上が増加すると、おカネが不足します。
カンタンに説明を加えると。売上が増えると、通常、売掛金も増えます。売掛金は「入金待ち」ですから、入金待ちが増えることで、日ごろの資金繰りでおカネが不足しやすくなります。
加えて、売上を増やすために仕入が増え、在庫が増えたりしていれば。在庫もまた「入金待ち」と同じですから、ますますおカネが不足します。
このような状況で不足するおカネのことを「増加運転資金」と呼び、銀行から融資を受けることが可能です。
増加運転資金は、売上増加というポジティブな背景があることから、銀行も前向きに融資を検討しやすいという特徴があります。
ですから、《対応1》の受注増・売上増を銀行に説明する際、あわせて増加運転資金分の融資を引き出したいところです。
いっぽう、ここで融資を受けられなければ、資金繰りは悪化していくことになります。「受注増・売上増」があるときには、増加する運転資金の金額を必ず確認しましょう。
その金額を自己資金でまかなえるならよいですが、まかなえないのであれば銀行融資の検討が必要になります。
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まとめ
損益計算書の「人件費」が増加したときの銀行対応についてお話をしてきました。
人件費は、経費のなかでも金額が大きく、銀行の注目度も高くなっています。
とくに金額が増加をしたときには、その原因・背景の説明を忘れないようにしましょう。あわせて、売上増については、運転資金を融資で確保することです。
- 給料・賞与の増加は「人数増」なのか「単価増」なのかを伝える
- 退職金は「退職者に問題がない」ことを伝える
- 運転資金の融資を引き出す