損益計算書に「営業外収益・営業外費用」の項目がある場合。銀行対応まできちんと検討していますか?
おざなりに扱っていると銀行融資が受けにくくなってしまいますよ… というお話をしていきます。
「営業外」をおざなりにするから融資が遠のく
会社が銀行から融資を受ける際、必ず見られる決算書。その決算書のうち「損益計算書」について。
損益計算書に「営業外収益・営業外費用」の項目が記載されている場合の銀行対応を考えてみましょう。
営業外収益・営業外費用は、「営業外(=本業以外)」の名称ゆえか、「おざなり」に扱われていることがあります。
その結果、融資が受けにくくなっている… かもしれません。
ですから、そんなことがないように。営業外収益・営業外費用をきちんと扱う、銀行対応を押さえておきましょう。具体的にはこちらです ↓
- 売上高に掲載できる営業外収益がないか検討する
- 毎期継続的に発生する営業外収益は、内容を銀行に説明する
- 販売管理費と相殺できる営業外収益がないか検討する
- 特別損失に掲載できる営業外費用がないか検討する
- 平均利率の高低を銀行に説明する
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
損益計算書に「営業外収益・営業外費用」があるときの銀行対応
売上高に掲載できる営業外収益がないか検討する
損益計算書のなかには各種の「利益」が掲載されています。
損益計算書の上部から位置する順に、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益、の5つです。
これらの利益については、上部に位置する利益ほど「本業の純度」が高く、その会社の収益力をはかるうえでは重要度が高いものとして評価されています。
つまり。税金を払ったあとの最終利益である「当期純利益」も重要だけど、本業の純度が高い「営業利益」のほうが、収益力を見るには適しているよね。ということになります。
この点で、ほんとうは「売上高」に掲載できるのに「営業外収益」に掲載している項目があると。その分、売上総利益と営業利益が減少してしまい、本業の収益力が見劣りしてしまいます。
たとえば、手数料収入、業務受託収入、ロイヤリティ収入などが、営業外収益として掲載されているケース。これらが「本業」と言えるのであれば、「売上高」への掲載を検討しましょう。
本業かどうかの判断基準として、「定款の目的」が挙げられます。定款の「目的」に記載されている事業が本業だとする考え方です。この「目的」は、謄本(履歴事項全部証明書)にも記載されており、銀行もチェックしていることでしょう。
売上高に掲載できる営業外収益がないかを検討するのであれば、このあたりも合わせて注意が必要です。場合によっては「目的」も見直す、ということですね。
毎期継続的に発生する営業外収益は、内容を銀行に説明する
たとえば、不動産賃貸収入を営業外収益として掲載しているケースがあります(不動産賃貸業の会社を除く)。
このような収入について銀行は、あくまで「付属的(おまけていど)・偶発的(たまたま)」なものと見て、会社の収益力としては評価していないことが考えられます。
とはいえ、毎期継続的に、安定的に発生するような不動産賃貸収入であるならば。それはそれで、会社の収益力の一部だと言ってもよいでしょう。
この場合には、賃貸収入のもとになる「不動産の価値」や「今後の収益見込み」など、収入の「内容」を銀行に説明することが大切です。
その結果、会社の収益力として理解を得られれば、融資審査ではプラスにはたらきます。
ともすると銀行は、決算書の表面だけしか見ていません。「どうせ営業外」と見られないよう、営業外収益についても「内容」を説明するようにしましょう。
販売管理費と相殺できる営業外収益がないか検討する
たとえば、借り上げ社宅がある場合。
社宅を借りるにあたっての支払家賃は「販売費および一般管理費(以下、販売管理費)」に掲載する。いっぽうで、社宅利用者からの受取家賃は「営業外収益」に掲載していることがあります。
これについて、受取家賃を支払家賃と相殺する(支払家賃から受取家賃をマイナスする)経理処理に変えれば、それだけで「営業利益」がアップします。
あるいは、支払家賃を販売管理費ではなく、営業外費用に掲載するように変えるという方法でも、同じように「営業利益」がアップします。
いずれにせよ、収入と費用の「位置関係」のズレをなくすことが大切です。
受取家賃は「営業外収益(本業外)」、支払家賃は「販売管理費(本業内)」としたのでは、位置関係がズレて「本業の収益力(営業利益)」が低く評価されてしまいます。
たとえ最終利益はいっしょでも、損益計算書の上部にある利益ほど高く見せることができないか。ようく検討してみましょう。
特別損失に掲載できる営業外費用がないか検討する
たとえば、貸倒損失や有価証券売却損などを営業外費用に掲載している場合。
それらが「毎期のように発生しているわけではない」あるいは「金額的なインパクトが大きい」という説明ができるのであれば、特別損失に掲載するようにしましょう。
営業外費用に掲載されている項目について、特別損失に掲載することができれば、「経常利益」がアップするからです。
逆に、営業外費用に掲載したままだと。その分、経常利益が低く評価されてしまいます。
繰り返しになりますが、銀行融資において、損益計算書の上部にある利益ほど高く見せることが重要です。
なんとなく営業外費用に掲載した、などということがないように気をつけましょう。
平均利率の高低を銀行に説明する
営業外費用のなかに「支払利息」という勘定科目があります。銀行に支払った利息の金額を集計する勘定科目です。
銀行は支払利息の金額から、「平均利率」を計算しています。算式にすると次のとおりです ↓
平均利率 = 支払利息 ÷ {(期首借入金残高+期末借入金残高)÷2 }
上記の平均利率を見て、その会社が「どのくらいの金利で融資を受けているか?」を見ているわけです。
平均利率が低いようであれば。業績がよいなどの理由で銀行からの信用が高そうだなぁ、などと銀行は考えることでしょう。ゆえに、さらなる融資を期待できるところです。
問題は、平均利率が高い場合です。この場合は逆に、業績が悪くて銀行からの信用が低いのかなぁ、と想像されることでしょう。
これを放置すれば、融資が受けにくくなったり、融資を受けれても融資条件が厳しくなってしまいます(金利が高い、など)。
そこで、いま業績が悪くても、今後の業績が上向く見込みがあるのであれば。経営改善計画書や予測資金繰り表などを使って、銀行に説明をすることです。
すでに上向きの傾向が出ているのであれば、試算表や受注書などを証拠資料として提示するのもよいでしょう。低く見られた信用を挽回する効果が期待できます。
また、平均利率が高いのは、業績ではなく「銀行付き合い」が原因ということもあります。
ひとつの銀行からしか融資を受けていない、あるいは、メインバンクの融資シェア率が相当に高いために、金利が高止まりしている(競争原理が働いていない)ようなケースです。
この場合には、新規取引を考えている銀行やメインバンク以外の銀行に、その「原因」を伝えてみましょう。良い融資提案を受けられるかもしれません。
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まとめ
損益計算書に「営業外収益・営業外費用」があるときの銀行対応についてお話をしてきました。
どうせ営業外だからと、営業外収益・営業外費用をおざなりに扱っていると、銀行からの評価を下げてしまう可能性があります。
逆にきちんと扱えば、銀行からの評価を上げるチャンスがあります。できる限りの銀行対応を心がけましょう。
- 売上高に掲載できる営業外収益がないか検討する
- 毎期継続的に発生する営業外収益は、内容を銀行に説明する
- 販売管理費と相殺できる営業外収益がないか検討する
- 特別損失に掲載できる営業外費用がないか検討する
- 平均利率の高低を銀行に説明する