中小企業がつくる決算書は、銀行から信用されにくい。
えっ、そうなの?と言うのであれば気をつけましょう。自社(じぶん)の決算書を信用してもらえるように、すべきアピールについてお話をしていきます。
誰かの思惑に満ちた決算書を信用できるのか?
会社・事業における銀行融資について。
借り手、とくに中小企業がつくる決算書は、「銀行から信用されにくい」ことを知らない。あるいは理解をしていない会社・人は少なくないようです。
事実、「自社(じぶん)の決算書を信用してもらえるよう、銀行にアピールしています」という話はほとんど見聞きすることがありません。
結果として、決算書が銀行から信用されないのであれば。融資が受けにくくなる、などの不利益が見込まれるところです。
でもなぜ、中小企業の決算書は信用されにくいのか? もっとも大きな理由は、中小企業の決算書が「外部の目にさらされる機会が少ないから」です。
ここで言う「外部」とは、おもに投資家(株主)を指します。この点で、中小企業の多くは「経営者=投資家(株主)」であり、日常的な外部の目がありません。
したがって、中小企業がつくる決算書は「経営者の思惑(たとえば、税金を安くしたい、利益を水増ししたい、とか)」に左右されやすいものとなります。
いっぽうで、大企業・上場会社がつくる決算書は、法が要求する適時・適正な情報開示を通じて、第三者である投資家の厳しい目にさらされています。
では、どちらの決算書が、より信用できますか? というハナシです。比較をすれば、大企業のほうが信用されやすく、中小企業のほうが「信用されにくい」ですよね。
そこで。中小企業の決算書は銀行に信用されないからこそ、すべきアピールについてお話をしていきます。次の3つです ↓
- 粉飾はしていない、をアピールする
- 経理処理は正しい、をアピールする
- 黒字は続く・赤字は続かない、をアピールする
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
中小企業の決算書は銀行に信用されないからすべきアピール
《アピール①》粉飾はしていない、をアピールする
銀行融資を受けるにあたり、決算書に求められることのひとつに「利益」が挙げられます。利益が多いほうが、融資を受けやすい。
ゆえに、借り手は「粉飾決算(利益の水増し)」の誘惑にかられることがあります。
たとえば、在庫。粉飾テクニック(という言い方もおかしいけれど)として、在庫を水増しすると利益を増やすことができる。というのは有名なハナシでしょう。
そこで、「銀行に対する決算書の見栄えをよくするために、ここはひとつ在庫を水増ししようか」となることがあるわけです。
したがって銀行は、在庫が多いと「粉飾しているんじゃないのかなぁ?」という目で見がちです。
銀行は同業種平均のデータを持っていますから、それに比べて明らかに多い在庫は「水増し」と考える。その分だけ決算書の利益を下方修正して評価している、かもしれません。
なにしろ、中小企業の決算書は、そもそも信用されにくいのですから。
これについて、実際に粉飾をしているのであれば自業自得ですが、粉飾などしていないのであれば「とんだ濡れ衣」です。
そんなことにならぬよう、粉飾していないことをアピールをしましょう。言い換えると、粉飾っぽく見えそうなところは、きちんと説明をするということです。
在庫が同業種平均よりも多い例であれば、たとえば「在庫の入出庫表」を提示するとか。現実に入出庫している(動いている)とわかれば、モノが実在していることの証明につながります。
もちろん、ほかにも粉飾っぽく見えそうなところ、というものはあるもので。こちらの記事などもご参考にどうぞ ↓
CHECK! 銀行に粉飾を疑われないように気をつけたい貸借対照表5つのポイント
CHECK! 融資NG間違いなし?銀行に見抜かれやすい『粉飾決算』事例7選
《アピール②》経理処理は正しい、をアピールする
冒頭、中小企業がつくる決算書は「経営者の思惑」に左右されやすい、と言いました。
この点で、銀行は「そもそも経理処理は正しく行われているのだろうか?」という目で見ているものです。
たとえば。倒産するなどして回収できなくなった売掛金について、貸倒損失として計上しているか? その他貸倒れを見込んで、じゅうぶんな貸倒引当金を計上しているか?
これらを計上していないとなると、粉飾ということもあるし、経理処理としてもどうなんだろか。と、銀行は不安・不審に思うわけです。
結果、一事が万事。ほかの部分もだいじょうぶなのかなぁ…? と不安・不審は広がっていきます。やはり、中小企業の決算書は信用されにくい。
これに対する具体策のひとつとして、日本税理士会連合会が提供している『「中小企業の会計に関する基本要領」の適用に関するチェックリスト』の添付が挙げられます ↓
「中小企業の会計に関する基本要領」とは、中小企業がよりどころとするのによい会計・経理ルールです。
中小企業、とくに小規模零細企業の状況を考慮して、必要最低限・シンプルなルールになっています。
チェックリストは税理士の記名・押印入りで、「そのルールにしたがってきちんと決算書をつくっていますよ」ということのアピールになるモノです。
銀行に決算書を提示する際、チェックリストを添えることで、決算書の信用をより上げることができるでしょう。
ちなみに、チェックリストをもとに決算書を見ていくと。「あらら、ウチの決算書ダメだわ…」ということに気づくこともしばしばです。
銀行融資のことはさておいても、ぜひいちどチェックをしてみることをおすすめします。
《アピール③》黒字は続く・赤字は続かない、をアピールする
銀行は、中小企業の決算書を見て、こんなことを考えています ↓
「黒字はたまたまかも」「赤字は続くかも」
つまり、このたびの黒字は一時的なものかもしれない。このたびの赤字はしばらく続くかもしれない、と「保守的」に見ている。ということです。
実際に、中小企業の業績は、大企業ほどには安定していない、と言えるでしょう。
これに対して、借り手が「黒字は続く・赤字は続かない」と考えるのであれば、それをきちんとアピールすべきです。
具体的には、決算報告・決算説明の場をつくること。決算書をただ銀行に渡すだけではなく、決算書を見せながら話をするようにしましょう。
このとき、「口頭」ばかりでは説得力に欠けますから、「書類」を添えることが大切です。
たとえば、今回の決算書の要点のまとめ(前期との比較、課題・問題とその対策など)、来期の利益計画書や、予測資金繰り表など。
これらが説得材料となり、「黒字は続く・赤字は続かない」をアピールすることにつながります。
CHECK! 渡すだけじゃダメ!決算書を持って銀行へ行こう【決算報告・説明のポイント】
そんなのメンドーだ。そんなことをしているなんて、ほかで聞いたことがない。そう思われるかもしれませんが。
だからこそ、ほかにやっている会社・人が少ないからこそ、大きなアピールになるのです。
結果として、銀行からの信用につながり、融資を受けやすくなるなどの効果も期待できるでしょう。
また、なによりも。みずから決算書を分析したり、計画を立てたりすることは、会社・事業の持続や成長に必ず役立ちます。
まずは銀行への決算報告・決算説明をきっかけにでも、それらに取り組んでいきましょう。
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まとめ
中小企業の決算書は銀行に信用されないからすべき3つのアピールについてお話をしてきました。
決算書が銀行から信用されないと、融資が受けにくくなるなどの不利益が見込まれます。
融資を受けたい、融資を活かしたいのであれば、信用されるようにアピールをしていきましょう。
- 粉飾はしていない、をアピールする
- 経理処理は正しい、をアピールする
- 黒字は続く・赤字は続かない、をアピールする