「銀行からおカネを借りられた・・・!あとはがんばって返済をするだけだ。」
って、それ。ちょっと違います。銀行融資は借りてからが始まり、「借りれてよかったね」で終わりじゃない、というお話をしていきます。
「借りれてよかったね」で済むハナシではない
会社・事業における銀行融資について。こんな言葉を見聞きします。
『銀行からおカネを借りられてよかった』
たしかに、そのとおりなのですが。その言葉のウラには、「あとはがんばって返済をするだけだ」との思いが透けて見えます。
つまり。銀行融資については、ひとまずおしまい。そんなカンジです。
審査に必要な書類をそろえ、面談の準備をし。祈るような思いで審査の結果を待った… だから晴れて融資OKの結果に安堵する、という気持ちもわかります。
ところが、銀行融資は借りてからが始まり。「借りられてよかったね」で、ひとまずおしまいにするような話ではありません。
そこで。銀行融資は借りてからが始まりである理由について、お話をしていきます。理由は次の2つです ↓
- おカネが減っていくから
- 信用が減っていくから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資は「借りてからが始まり」である理由
《理由①》おカネが減っていくから
融資を受けたのち、銀行との約束にもとづいて「返済」が始まります。
言うまでもないことですが、返済をすることにより、手元のおカネは減っていく。手元のおカネが減れば、資金繰りは厳しくなっていきます。
借りたおカネの使いみちが、「運転資金(仕入・経費にあてるおカネ)」であれ、「設備資金(設備投資にあてるおカネ)」であれ、資金繰りをラクにしたくて借りたはずです。
自己資金だけでは不足がある、自社・じぶんのおカネだけでは不安がある。だから、おカネを借りることにしたはずです。
結果、借りた当初はよいけれど。返済が進むにつれて手元のおカネは減っていきますから、「なんか資金繰りが厳しいぞ」となるわけです。
たとえば、運転資金として 1,000万円を、返済期間5年で借りたとします。当初は、手元に 1,000万円のおカネが増えるので資金繰りがラクになる。
けれども毎月の返済が進み、融資から1年後には 200万円減る(1,000万円 ÷ 5年)、2年後にはさらにもう 200万円減る。資金繰りがラクではなくなる。
借りられてよかったでおしまいにはできない、借りてからが始まりである。と言う理由はここにあります。では、どうするか?
また借りることです。
おカネを借りると、どうしても「早く返済したい、完済したい」と思いがちですが。多くの場合、実はそこに間違いがあります。
ここで言う「多くの場合」とは、手元のおカネが不足しているケース。具体的には、現金預金が月商の3ヶ月未満のケースです。
多くの会社・事業(現金預金が月商の1ヶ月ていど、が多い)では、そもそも手元のおカネが不足しており、だからこそ銀行融資を利用するべきなのですが。
必要な融資を受けない。あるいは、融資を受けても完済を急いでしまう。手元のおカネは不足したまま。不測の事態におカネがもたない、チャンスに投資ができない、という結果を招きます。
そんなことがないように。必要な融資は受ける、返済が進んだらまた借りる。借りられておしまい、ではないと理解をしておきましょう。
現金預金が月商の1ヶ月ていどだと。「売上入金」と「仕入・経費支払」のタイミングがちょっとずれるだけで、資金ショートを起こす可能性が高くなります。
月商の2ヶ月分あると、資金ショートの可能性は減りますが、不測の事態や投資のチャンスにおカネが足りない。あるいは、おカネを準備する(融資を受けるなど)時間的な余裕がありません。
ゆえに、最低でも月商の3ヶ月分くらいは現金預金があったほうがよい、と考えます。
《理由②》信用が減っていくから
銀行は、「融資を受けられる=信用」という見方をしています。信用があるからおカネを借りることができる。つまり、「借金=信用」だと見ています。
(ここで言う「借金」は、銀行融資に限ります。いわゆる街金・サラ金などの借金までを信用とは考えません。念のため)
借金の金額が多いということは、それだけその会社・事業の「信用」が大きいから。逆に、借金が無い・借金の金額が少ないということは、「信用」が小さいから。
そう考えると。融資を受けたのち、返済が進むことで借金の金額が減る。借金の金額が減るにつれて信用も減ることになります。
ですから銀行は、他行(じぶんのところ以外の銀行)からの融資が増えている会社を見ると、「業績が良くて信用できる会社なのかな? ウチも貸したい!」と考える。
貸したいと考えている以上は、競争意識が生まれますから、金利面など条件がよい融資を期待できます(交渉もしやすい)。
いっぽうで、他行からの融資が減っている会社を見ると「業績が悪くて信用できない会社なのかな? ウチも貸すのはやめよう」と考えることがあります。この場合は当然、よい融資条件など期待できません。
したがって、一方的に返済を続けていると信用が減っていく、融資が受けにくくなる、融資条件も悪くなる。借りておしまいの銀行融資には、そのような一面があることを覚えておきましょう。
また、融資をした銀行について言うと。「いちど貸した」という実績が、信用として評価されます。じぶんで審査をして貸したのだからだいじょうぶだよね、ということです。
たとえば、運転資金 1,000万円の融資。返済が進んで 600万円まで残高が減ったとします。このとき、当初借りた 1,000万円まで、つまり返済した分の 400万円については比較的借りやすい。
繰り返しになりますが、いちど 1,000万円を貸した実績を信用として見ているからです。このように、もともと借りていた金額まで借り直すことを「折り返し融資」などと呼んだりします。
この点で。すっかり完済をして、その銀行との縁が切れてしまえば、いちど貸した実績も評価されない・評価されにくくなることには注意が必要です。
融資残高が減れば、銀行は利息収入が少なくなります。すると、割に合わないので「訪問(御用聞き)」は少なくなりがちです。
別に訪問してもらわなくてもいい、と思われるかもしれませんが。銀行からは、同業他社の状況を知ったり、顧客・専門家の紹介を受けたり、アドバイスを受けたりと、訪問にもメリットがあります。
なにより、訪問を通じてコミュニケーションを増やすことで、銀行には会社・事業に対する理解を深めてもうらう。結果、良好な関係ができ、より融資がスムーズになります。
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まとめ
銀行融資は借りてからが始まり。「借りれてよかったね」で終わりじゃない、というお話をしてきました。
融資を受けると、「あとはがんばって返済をするだけだ」と考える経営者は少なくありません。
けれども、銀行融資は借りてからが始まりだと考えるようにしましょう。
- おカネが減っていくから
- 信用が減っていくから