「AI審査で即日融資? すごいね、すぐに借りられるなんて、いいよね!」
たしかに、よさそうにも見えますが。即日融資の言葉に惹かれていてはダメ、おカネは焦らずに借りましょう。というお話をしていきます。
「即日融資」というウリ文句をどう見るか?
会社・事業における融資について。
最近では、「財務・会計のデータ」と「AI(人工知能)」とを組み合わせた与信審査による融資のハナシを見聞きするようになりました。
すでに提供されているものもあれば、開発中のものも含めて。広告なり、宣伝なりを見聞きする機会も増えています。今後は時流に乗って、ますます増えていくことも予想されるところです。
それはそれとして。このような融資の「ウリ文句」のひとつに、次のようなものが挙げられます ↓
『(最短)即日融資』
つまり、融資審査が速い。すぐに融資を受けられる。いいでしょ? というウリ文句。
ところが。
財務・会計データを利用したり、AIを駆使したりと、資金調達の手段が増える・幅が広がるのはいいにしても。「即日融資」に惹かれているようではいけません。
というお話をしていきます。「即日融資」に惹かれてはいけない理由は、次の3つです ↓
- 1日を争うような資金繰りをしてはいけないから
- なにかと高くつくから
- 結局、資金繰りが安定しないから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
本記事は、「即日融資」に対する問題提起を意図しています。したがって、財務・会計データを利用した融資、AIなどのITを駆使した融資そのものを否定する意図はないことを申し添えます。
AI審査の「即日融資」に惹かれてはいけない理由
《理由①》1日を争うような資金繰りをしてはいけないから
必要なときにすぐ借りられる。そんな「即日融資」がメリットになるのは、「ほんとうに借りられた」ときに限られます。
融資である以上、貸すか貸さないかの決定権は貸し手の側にあります。
これは財務・会計データを利用しようが、AIを駆使しようが、従来の銀行融資と変わるところはありません。
「審査の結果、ダメでした」は起こりうることで、ほんとうに借りれるかどうかはわからないのです。
そもそも、おカネが無いときには、業績・業況が悪いことも多いもの。であるならば、融資を受けられる可能性は…? 決して高いとはいえないでしょう。
繰り返しになりますが、借りられなければ即日もなにもありません。
そう考えると。1日を争うような資金繰りをしていてはいけないのです。困ったときに「即日」をアテにするような資金繰りではいけないのです。
じゃあ、どうすればいいのか?
ふだんから手元におカネを置くことです。いつか即日融資をアテにするかもしれないような状況であれば、あらかじめおカネを準備しておく。
具体的には、「従来」の銀行融資(銀行借入)を利用します。必要な書類を準備して、銀行員に審査を依頼する。昔からある銀行融資です。
でも、あらかじめおカネを準備しておくのなら、それこそAI審査の融資だっていいじゃないか? と思われるかもしれませんが。
それが、「ただ借りられればいい」わけでもない。というお話を次にしていきます。
《理由②》なにかと高くつくから
融資を受けると言っても、ただ借りられればいいわけじゃない。と、さきほど言いました。
この点で、即日融資をウリにするような融資には、次のようなデメリットが挙げられます ↓
- 金利が高い
- 融資金額が少ない
- 返済期間が短い
ある即日融資によれば、金利は「2.8%〜14.8%(年率)」とされています。この真ん中あたりの金利が実際には多いのだろうと考えると、さすがに高い。
わたしは会社・事業における融資について、「金利の高低は過度に気にしない」というスタンスですが、7%だ8%だとなるとハナシは別です。
従来の銀行融資であれば、その半分以下。さすがに金利が高いと言わざるをえないのが、即日融資のデメリットです。
また、融資金額は数十万円から数百万円ていどの範囲とされています。事業の規模や資金繰りの状況にもよりますが、「一時しのぎ」感が否めない融資金額だと言えるでしょう。
それに加えて、返済期間が半年から1年ていどと短くなっています。借りられてもすぐ返すのですから資金繰りには厳しく、やはり「一時しのぎ」にすぎません。
このような「融資条件」も今後は変わっていくのかもしれませんが、少なくとも現時点ではデメリットとしか言いようがない。即日融資はなにかと高くつく、という状況です。
《理由③》結局、資金繰りが安定しないから
《理由②》で、即日融資は「融資金額が少なく、返済期間が短い」、ゆえに「一時しのぎ」だという話をしました。
この「一時しのぎ」には、さらに続きがあります。
おカネが必要になるつど、そのたびに融資を受けなければならず。融資を受けられたとしても、「中長期での資金繰り」が安定しない。これが即日融資の「その後」の姿です。
これに対して従来の銀行融資では、必要に応じた金額(設備投資であれば千万円単位でも)の融資を受けて、年単位の長い期間をかけて返済していきます。
したがって、即日融資のケースに比べると、中長期で資金繰りを安定させることができるわけです。
また、中長期の融資・返済は、銀行との信頼関係の構築につながります。この信頼関係により、「財務・会計データ」に過度に依存しない融資を期待することができます。
言い換えると、足元の数字だけでははかれない(はかりにくい)、ビジネスモデルの良さや事業の成長可能性などを評価するような融資です。
誤解を恐れずに言えば、足元の数字が悪いときでも、融資を受けられるチャンスは大きい(即日融資に比べれば)、ということになります。
とくに中小企業では、なかなか数字が安定しないものです。そのような特徴を考えると、数字に過度に依存をしない銀行融資にはメリットがあるでしょう。
「すぐ借りられる(即日融資)」の言葉に惹かれて、目先の資金繰り・一時しのぎの資金繰りに陥らないよう、じゅうぶんに注意が必要です。
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まとめ
AI審査の「即日融資」に惹かれてはダメ。おカネは焦らず借りる、ということについてお話をしてきました。
たしかに「すぐに借りられる」のはメリットではありますが、反面、多くのデメリットもあわせ持っています。
「即日融資」に惹かれてはいけない理由を押さえておきましょう。
- 1日を争うような資金繰りをしてはいけないから
- なにかと高くつくから
- 結局、資金繰りが安定しないから