銀行がウチの事務所に来るって。工場に来るって。
そんなとき。やって来る銀行員は、事務所や工場の「どこ」を見ているのか? についてお話します。
銀行員は「現場に答え」を求めて、事務所・工場にやって来る
銀行とお付き合いをしていると。銀行のほうから「事務所にうかがいます」「工場にうかがいます」などと言われることがあります。
わざわざ来てくれるなんて親切だなぁ、と呑気に構えていてはいけません。やってくる銀行員には、こんな意図もあるからです ↓
” 会社が銀行に提出する「書類」には表れない、会社の真の姿を「現場」から見抜こう ”
かくして、現場に答えを求めてやってくる銀行員は、いったいどこを見て、なにを考えているのか? 次の3つの視点に分けてお話をしていきます。
- 経営者を視る
- 従業員を視る
- 事務所・工場を視る
経営者を視る
まずは、会社のトップである経営者について。とくに小規模零細企業は、経営者のワンマンが大きな原動力です。そんな経営者の姿を銀行員は視ています。
数字管理のスタンスはどうか
ひとことで言うと、「どんぶり勘定」な経営者ではないかどうかを銀行は気にしています。数字やおカネに無関心な経営は、行き詰まる可能性が高いからです。
ところが。いろいろと話ができる経営者でも、具体的な数字・金額の話となると、途端に口が重くなるというケースは少なくありません。
たとえば、売上や利益の推移状況、今期の予測利益、向こう1年程度の資金繰り予測、などなど。
また、それら数字・金額の話ができたとしても。銀行からすれば、それは「ほんとうなのか?」という疑問も残ります。
そこで、数字・金額についての根拠資料を、経営者が日常どのように扱っているかを銀行員は視るのです。
事務所で話をしているのですから、ふだんから根拠資料を管理している経営者であれば、それらの資料を提示することもできるはずです。
にもかかわらず、話は口頭ばかり、聞いても書類は出てこないというのでは、「どんぶり勘定経営者」のレッテルを貼られるばかりです。
経営者を支える人材は居るか
会社のトップたる者、どんぶり勘定ではいかん。というお話をしましたが。数字やおカネに不得手な人もいるでしょう。経営者も例外ではありません。
そんなときに、経営者の弱点を支える人材がいるのであれば。銀行としては安心材料となりえます。
ですから、事務所で話をしている際には、必要に応じて「経理担当者・財務担当者」などが同席できるかどうか、というのはひとつのポイントです。
経営者に代わって、銀行の関心事に応答できる人材があるのであれば、会社自体がどんぶり勘定というわけでもないからです。
もっとも、人材があるからといって、経営者が「丸投げ」という姿勢では困ります。経営者も要衝は押さえたうえで細部は任せる、という姿勢が重要です。
配偶者・親族の様子はどうか
人材という話の延長として、経営者の配偶者について。小規模零細企業では、配偶者も会社に関与していることは少なくありません。
その場合、配偶者がどのように会社に関わっているか、経営に関わっているか、というのも銀行が知りたいことのひとつです。
経営の意思決定は経営者の役割であるとしても、いつも隣にいる配偶者の意見・意向が、その意思決定に影響することは自然だとも言えるからです。
事務所や工場などの現場に出向くと、配偶者とも会える・話ができることも多くなることから。配偶者の人となりや性格、ものの考え方を知るチャンスを、銀行員はうかがっているものです。
その点、配偶者だけでなく、会社に関与する親や子供などの親族についても同様です。
従業員を視る
続いて、会社の実働部隊である従業員について。会社の良し悪しを左右する一要素が従業員。そんな従業員の姿を銀行員は視ています。
入退職が忙しくないか
一般に、良い会社と言われる会社の人事は落ち着いているものです。とくに、退職者が少ない(定年退職、結婚退職など相応の理由はのぞきます)。
いっぽうで、問題のある会社(なにが問題かはともかく)は、退職者が多くなります。入ったばかりの人が辞めたりもします。
退職者が多くなった結果として、不足する人材を補うための採用活動をしなければいけません。ヘタをすると四六時中、採用活動をしています。
そのような会社の事務所や工場などに行くと、従業員の入退職や、採用活動に関する情報が掲示されていることも多く。銀行員は、掲示物に目を配っているものです。
入退職が多い会社はどこかアヤシイのではないかと感じるのは、就活者も銀行も変わりません。
社内の雰囲気はどうか
事務所や工場に行けば、受付担当者をはじめ、従業員に接することができます。従業員の様子をうかがい知ることができます。
きちんとした挨拶ができるか、社内の雰囲気に活気はあるかなど、従業員の様子が、会社の状況を反映していることはあるものです。
挨拶ができない、雰囲気が沈んでいる、というのでは「この会社だいじょうぶかな?」と、銀行員も思うでしょう。
この会社の従業員が良い商品・サービスを提供できるのだろうか、会社の人間関係が悪いのではなかろうか、などいろいろ気になってしまいます。
とはいえ、従業員の様子は一朝一夕に変えられるものではなく、常日頃の粘り強い従業員教育や風土づくりが大切です。
どんなに丁寧な挨拶であっても、やらせれ感やわざとらしさが出ているようでは「即席感」が目立つばかりです。
事務所・工場を視る
さいごに、職場である事務所や工場について。モノには思いが現れるもので。銀行員は、モノから経営者や会社の考えを視ようとしています。
書類に記載されたモノはあるのか
銀行に提出した書類に記載されている、機械・備品類(設備)や商品(在庫)はほんとうにあるのかどうか、銀行員は気にしています。
設備資金として融資したはずの機械が実は無かった(資金使途違反!)とか、決算書に載っていた在庫が実は無かった(粉飾!)とか。
そんなことがあっては困るわけで。現場に出向いた際には、それとなく、あるべきはずのモノの有無を確認するというのが銀行です。
また、実際モノがあったとしても、その「状況」にも目を配っているものです。
たとえば、稼働せずに埃をかぶった機械設備。たなざらしで劣化が明らかな在庫など。それらは価値無きものとして、決算書にきちんと表現されているのだろうか?
と、銀行員にはいろいろな疑問が沸き起こるものであることを、経営者・会社は知っておかなければいけません。
過度に豪華ではないか
社長室が豪華、応接室が豪華、社用車が豪華、執務室の備品類が豪華などなど。豪華なポイントはいろいろありますが。
それらの豪華が過度ではないか、行き過ぎていないか、銀行員の感じるところはあるものです。
会社の業績もすばらしく、豪華もナットクというケースもあれば。会社の業績が悪いのに、こんなところにおカネをかけて… とナットクできないこともあるでしょう。
要は、分相応な豪華さかどうか、ということです。もちろん、豪華についての考え方は、経営者・会社の自由ではあります。
けれども、他人がどう感じるかもまた自由であり。とくに、銀行がどう思うのかということについては、理解をしておく必要があります。
整理整頓はされているか
さきほどの豪華とは逆に、質素ということがあります。質素を超えて、粗末とさえ言えることもあるかもしれません。
けれども、質素や粗末だからと言って、必ずしもマイナスイメージばかりというわけでもないでしょう。なぜなら、「整理整頓」という視点が残されているからです。
モノが古くても、きちんとメンテナンスして使っていることがわかれば。モノをたいせつに扱うことができる誠実・堅実な会社に感じます。
反対に、あたらしいモノばかりでも、乱雑に扱われ、辺りにモノが散乱しているような会社は、だらしなくムダが多い会社に感じます。
したがって、モノの豪華さ・新旧とは別に、「整理整頓」がなされているかというのは、銀行員の視点のひとつです。
まとめ
銀行員が事務所・工場にやって来たときに見ているものとは? についてお話をしてきました。
銀行はただただ形式的な用事を済ませるためだけに、事務所や工場に足を運んでいるのではありません。
実はいろいろと見られている、ということを知っておきましょう。
銀行融資の審査にも影響するところですから、なおざりにはできません。
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きょうの執筆後記
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