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無借金で銀行から好かれる会社、無借金なのに銀行から嫌われる会社

無借金経営は銀行に好かれるか・嫌われるか

「無借金だと銀行から融資が受けにくくなる」「無借金だから銀行に融資を勧められた」

無借金は良いの?悪いの?どっちなの? というわけで、無借金で銀行から好かれる会社と、無借金なのに銀行から嫌われる会社の「違い」についてお話をします。

目次

無借金で銀行から好かれる会社と、無借金なのに銀行から嫌われる会社がある

会社・事業における銀行融資について。

銀行からの借入が無い、無借金の会社が必ずしも銀行から好かれるわけではない。むしろ、融資を受けにくくなることがある。つまり、無借金は銀行から嫌われる。

と、当ブログでお話をすることがあります。

いっぽうで。無借金でも銀行から融資を受けられた、融資を受けてほしいと言われた、という話もあります。つまり、無借金が銀行から好かれる。

では、いったいどっちがほんとうなのか? と思われることでしょう。

どちらもほんとうです。

ただ、両者のあいだには「違い」があります。その違いを端的にまとめたものがこちらです ↓

 おカネがあるか?利益が出続けているか?
無借金で銀行から好かれる会社YESYES
無借金で銀行から嫌われる会社NONO

上記のとおり、同じ「無借金」でも、銀行から好かれる会社があり、嫌われる会社があります。

両者のあいだにある「違い」によって、無借金が好かれたり、嫌われたりするのです。

この「違い」がわからずに混同をしていると、銀行から嫌われる・融資が受けにくくなります。間違った無借金で苦しむことになります。

というわけで。両者のあいだにある「違い」をきちんと押さえておきましょう。次の2つです ↓

無借金が銀行から好かれるか・嫌われるかの違い
  1. じゅうぶんなおカネを持っているか?
  2. 利益が出続けているか?

それではこのあと、順番にくわしく見ていきましょう。

 

【違い①】じゅうぶんなおカネを持っているか?

無借金(銀行からの借入が無い)だと、銀行からの融資が受けにくくなる。という話があります。

これは、銀行が「融資の実績」を信用のひとつと見ているからです。

融資の実績、とは。過去におカネを貸したことがある(審査にパスした)、返済をしてもらった・返済してもらっている(ルールを守った)、という実績です。

このような融資の実績(他の銀行の融資だとしても)があれば、銀行としては安心です。

逆に実績が無いと、銀行は「貸してもだいじょうぶな相手なのかなぁ?」と不安になる。というのが、無借金だと融資が受けにくくなる、というお話です。

無借金でもおカネがあれば

では、無借金だと銀行から融資が受けられないのか? と言うと、そんなこともありません。

冒頭で触れたとおり、無借金でも銀行から好かれる会社、少なくとも嫌われない会社はあります。

それが、「じゅうぶんなおカネを持っている会社」です。つまり、じゅうぶんに現金預金の残高がある会社です。

なぜならば。手元におカネを持っているので、貸したおカネが回収できなくなる危険性は少ないから、ですね。

この点で、「おカネ」もまた、銀行融資にあたっては大きな信用になります。おカネがあるから借金をしなくてもだいじょうぶなんだ、と銀行も考えることができます。

「融資の実績」という信用が無くても、「おカネ」がある。無借金でも融資を受けられるのは、そのような会社です。地獄の沙汰もなんとやら。

無借金でもおカネが無ければ

ところが。「じゅうぶんなおカネ」が無い、という会社(とくに中小企業)はたくさんあります。

具体的には、現金預金残高が、月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の1ヶ月分に満たないような会社です。

こうなると、銀行としては「無借金」であることが不安でしかたありません。貸しても回収できない危ない会社だから融資が受けられないのでは… と銀行は考えます。

にもかかわらず。耳障りの良い「無借金経営」を目指して、かたくなに借金をせず、少しでもおカネがあれば繰り上げてでも返済しようとする。

結果として、無借金ではあるけれど、手元のおカネはいつもカツカツ。社長は資金繰りに四苦八苦… です。

そこでようやく融資を受けようとするわけですが。もうわかりますよね。当然、銀行からは警戒されます。

「おカネ」という信用も無い、「融資の実績」という信用も無いからです。

無借金を目指すタイミングを間違えてはいけない

誤解なきように申し添えると、「無借金がダメだ」と言っているわけではありません。無借金自体は間違いなく良いものです。

ただ、無借金を目指すタイミングを間違えてはいけない。そういうお話をしています。つまり、こういうことです ↓

無借金経営までの道のり

融資を受けたいときにはおカネが無ければ借りられない

だからまずはおカネを借りて、手元のおカネを増やす(カツカツになる前に)

安定した資金繰りで、社長は経営に集中する

利益が増えておカネが増えて、さらに資金繰りが安定。

おカネがじゅうぶんに増えたら、無借金を目指す

無借金を目指すのは、上記のさいご。おカネがじゅうぶんに増えたら、このタイミングです。

目安として、月商 3ヶ月分以上の現金預金を残せるかどうか。少なくとも月商 3ヶ月分の現金預金がたまるまでは、無借金よりも資金繰りの安定を優先して融資を受ける。

現金預金がたまったら、無借金を目指して借金を減らしていく。ただし、少なくとも月商 3ヶ月分は残しておく。

これができずに、おカネが無いのに「無借金経営」を目指して資金繰りに苦労し、経営に集中できない会社があり、社長がいます。

経営に集中できず、会社が倒れてしまうのでは本末転倒です。無借金経営を目指すタイミングには、じゅうぶん気をつけましょう。

 

【違い②】利益が出続けているか?

無借金で銀行から好かれる会社と、無借金なのに銀行から嫌われる会社とのあいだには「違い」がある。

そのひとつは「じゅうぶんなおカネを持っているか?」だというお話をしてきました。

続いて、もうひとつの違いは、「利益が出続けているか?」です。

同じ無借金の会社でも、利益が出続けていれば銀行からは好かれて、利益が出続けていなければ嫌われます。

利益が無ければ、おカネも無くなる

おカネが銀行に対しての信用になる、と言いました。では、おカネがありさえすれば銀行は信用するか、安心するかというとそうではありません。

もうひとつ、「利益」も必要です。

なぜならば。利益(とくに営業利益)が無ければ、中長期的にはおカネが減っていく、無くなってしまうからです。

将来的におカネが減る・無くなるのであれば、銀行としては安心して融資をすることができません。貸したおカネを回収できなくなる危険性が高いから、ですね。

したがって、いまは無借金であっても「おカネが無い・利益が無い会社」は銀行から嫌われます。ここで「融資の実績」という信用がいくらか役に立つ、ということがあります。

もちろん、「おカネ・利益」がいちばんではありますが、無いよりは良いという意味での「融資の実績」です。

いっぽうで、「おカネもある・利益もある会社」は銀行から好かれます。無借金で「融資の実績」という信用は無いけれど、「おカネ・利益」の信用を評価しよう、ということです。

利益が「続いている」がだいじ

利益について、重要なことがあります。それは、その利益が「続いているか」です。

言い換えると、黒字がずっと続いているのかどうか。

利益が出ていると言っても、前年・前々年が赤字であれば。「今年の黒字はたまたま?」という見方にもなるものです。とくに、銀行は保守的なのでそのように考えがちです。

こうなると、「利益」の信用もそれほどではなく。信用としては揺らいでしまいます。

ですから、いま利益が出ているからOK、ではなく。「利益が出続けているか?」がだいじなのです。

ところが。多くの会社、とくに中小企業では、利益に波があるものです。良いときもあれば悪いときもある。黒字のときもあれば、赤字のときもあります。

「利益が出続けている」という時期はまれだ、と言ってもよいでしょう。

そのように「利益」の信用が得にくいのであれば、「融資の実績」という信用はあったほうがいい、と考えることができます。

利益が安定しにくい中小企業だからこそ、利益が出ているときに融資を受けておく。融資の実績をつくっておくことを、わたしはおすすめしています。

借金があるから潰れる、のではない

ところで。借金が増えると、返済負担で会社が潰れてしまう。というハナシがあります。

誤解です。

借金が増えたから会社が潰れたのではなく、潰れてしまった会社に借金があっただけです。

その理由として。借金をすると、同時におカネも増えます。借金だけが増えるわけではありません。借金と同じ額だけのおカネも増えます。

ですから、借金をした瞬間を見れば、返済負担で会社が潰れることはありえません。

潰れてしまうのは、借金したおカネを無くしてしまうからです。借金したおカネを無くす理由の最たるものが、「利益が出ない」です。

利益が出ない、赤字が続くことでおカネが流出してしまう。結果、返済ができずに借金を残して潰れてしまう。

したがって、会社が潰れた原因は借金にあるのではなく、事業・商売がうまくいかないことに、その原因があるのです。

繰り返しますが、借金が増えたから会社が潰れることはありません。この点で、「必要な借金」まで恐れないよう、嫌わないようにしましょう。

必要な借金、とは。前述したことの繰り返しになりますが、「月商3ヶ月分の現金預金が手元にたまるまで」の借金です。

無借金はそのあと。無借金経営を目指すタイミングにはじゅうぶん注意しましょう。早すぎるタイミングで目指す会社・社長は少なくありません。

【参考】「利息があるじゃないか」と思われる方へ

借金をすると同時に同額のおカネが増える、と言いました。「でも、利息があるじゃないか」と言われればそのとおりです。

けれども、借金の金額から見れば、利息のインパクトはそれほど大きなものではありません(実際に利息の金額を計算してみましょう)。低金利時代の後押しもあります。

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まとめ

無借金で銀行から好かれる会社と、無借金なのに銀行から嫌われる会社についてお話をしてきました。

無借金は銀行から好かれるのか、嫌われるのか? ちまたには両方のハナシが混在しています。

その混在に惑わされないように。無借金で銀行から好かれる会社と、無借金なのに銀行から嫌われる会社のあいだにある「違い」を押さえておきましょう。

違いは、「じゅうぶんなおカネを持っているか?」「利益が出続けているか?」です。

無借金経営は銀行に好かれるか・嫌われるか

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