銀行は融資先のことだけではなく、その「売上先・仕入先」についても関心があります。
というわけで。銀行に「売上先・仕入先」のことを聞かれたら説明すべきポイントについて、お話をしていきます。
銀行は融資先だけではなく「売上先・仕入先」まで見ている
会社・事業における銀行融資について。
融資を受けていると、あるいは融資を受けるにあたり、「銀行からいろいろ聞かれる」ものです。
そのなかで。自社の「売上先・仕入先」について聞かれる、ということがあります。
自社のことならまだしも、他社のことまで…? と思われるかもしれませんが。
銀行が融資先の評価・審査をするうえで、売上先・仕入先は重要項目のひとつ。銀行はどんなことが知りたいのか、どんなことを考えているのか押さえて、的を射た回答をしたいものです。
そこで。銀行に「売上先・仕入先」のことを聞かれたら説明すべきポイントについてお話をしていきます。ポイントは次の3つです ↓
- 売上先・仕入先の「数」の増減
- 売上先・仕入先の「シェア」の変化
- 売上先・仕入先の「状況」
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行に「売上先・仕入先」のことを聞かれたら説明すべきポイント
《ポイント①》売上先・仕入先の「数」の増減
銀行は、融資先が「どれくらいの数」の売上先・仕入先とお付き合いをしているかに関心があります。
そのうえで、考えているのはこんなことです ↓
- 売上先・仕入先の数が少ない → 売上や仕入が集中していると危険
- 売上先・仕入先の数が多い → 売上や仕入が分散していると安全
つまり。売上先・仕入先の数が少ないと、どこかがつぶれたりしたときには影響が大きくなる可能性があります。
売上先であれば、売上が大きく減少する。仕入先であれば、必要な仕入ができなくなる。ゆえに、売上先・仕入先の数が少ないのは危険だ、と銀行は考えます。
いっぽうで、数が多いと。どこかがつぶれてしまったとしても、影響は小さくて済む可能性があります。
売上先であれば、売上減少は小さい、あるいは他の売上先でカバーできる。仕入先であれば、他の仕入先からの仕入れでカバーできる。ゆえに、売上先・仕入先の数が多いと安心だ、と銀行は考えます。
極端な例として、ひとつの仕入先のみから仕入れているという場合。銀行には「仕入値は適正なのか?」との疑問が生じるものです。
相見積もりもできずに、言い値になっているのではないか? ということです。仕入先が少ない場合には、そのあたりの事情・対応状況にも説明をしておくとよいでしょう。
増減の状況と理由を伝える
そのような銀行の考え方を理解したうえで、売上先・仕入先の「増減の状況」と、その「理由」を伝えるようにしましょう。
「増減の状況」については、
- (傾向として)売上先・仕入先が増えているのか、減っているのか
- 具体的な数で言うと、どのていどの増減なのか
- どのような売上先・仕入先が増えているのか、減っているのか(取引金額の大小、取引内容、エリア、会社の規模感など)
といったことを伝えるようにします。
また、増減したのには「理由」があるはずですから(推測だとしても)、あわせて伝えるようにしましょう。
とくに大口の売上先・仕入先が増えた・減ったということについては、銀行が気にするところです。
増えたのであれば、増えるにいたった「自社の取り組み」などを説明することで、「たまたま」ではなく継続的・戦略的であることをアピールできます。
逆に、減ったのであれば。問題・トラブルはなかったのか、あれば今後の解決策などを説明することで、銀行に安心をしてもらえるようにしましょう。
傾向として。銀行に対して売上先についてはよく話すけれども、仕入先についてはあまり話していない、ということがありますが。仕入先についても話をしましょう。
お客さま(売上先)に満足をしてもらうには、良い商品・良い材料を必要なときに必要なだけ仕入れることができる仕入先の存在が欠かせません。
「そんな仕入先がウチにはちゃんとあるんだ」と伝えることも、銀行に対しては良いアピールのひとつです。
《ポイント②》売上先・仕入先の「シェア」の変化
銀行は、売上先・仕入先の「数」だけではなく、「シェア」も気にしています。
なぜなら、数が多かったとしても、特定の売上先・仕入先に取引(シェア)が偏っていれば、その売上先・仕入先しだいで大きな影響を受けるからです。
たとえば、シェアが大きい売上先がつぶれてしまったり、取引を絞ってくれば、融資先の売上は大きく減少することになります。
同様に、シェアが大きい仕入先がつぶれたり、取引を絞ってくれば。安定した必要な仕入ができなくなり、売上に影響してしまうかもしれません。
したがって銀行は、シェアが大きい「大口」の売上先・仕入先については、慎重に見ているのです。
これに対して、会社側には「大口の取引先があって安心だ」との思いもあるところですから、銀行との「温度差」には気を付けるようにしましょう。
実際、大口の売上先がつぶれてしまい大変なことになった… というケースはあるわけで。「大口」を過大評価しないよう、注意しなければいけません。
銀行は「ヒアリング+書類」で確認をしている
売上先・仕入先のシェアについて銀行は、融資先への「ヒアリング」に加えて、「書類」でも確認をしています。
書類とは、具体的に言うと「決算書」。さらに具体的に言うと、決算書に付属する「勘定科目内訳明細書」です。
その勘定科目内訳明細書のなかには、売掛金や買掛金の明細があります。
売掛金の明細であれば、おもな売上先と、それぞれの売掛金残高が。買掛金の明細であれば、おもな仕入先と、それぞれの買掛金残高が掲載されています。
銀行はそれらの明細書について、前年と今年とを比較するなどして、シェアの変化を確認しているわけです。
そのうえで、ヒアリングに対する回答との相違がないかもチェックされるところですから、間違った回答やテキトーな回答にはじゅうぶん気をつけましょう。
言っていることと事実が違うのは銀行が嫌うところであり、融資の評価・審査に影響を与えてしまいます。
《ポイント③》売上先・仕入先の「状況」
銀行は、売上先・仕入先の「状況」にも関心があります。ここで言う「状況」とは、「業績」です。
もし、売上先の業績が悪ければ、融資先の売上高や売上代金の回収に影響が出る可能性がある。
もし、仕入先の業績が悪ければ、必要な商品・材料をじゅうぶんに仕入れることができない。結果、融資先の売上に影響が出る可能性がある。
ですから、売上先・仕入先の業績にも、銀行は関心を持つのです。
売上先・仕入先と言えど、「業績まではわからない」ということはあるかもしれませんが。いっぽうで、いわゆる「与信管理」は、会社にとって必要なことでもあります。
銀行から状況を聞かれて「さぁ、わかりません」では、会社の管理能力を疑われても文句は言えません。
なにかあったときには困るのですから、自社のためにも、日ごろからできる限り、売上先・仕入先の業績について情報を集めておくことです。
売上先・仕入先の社長や担当者との会話、取引ぶりの推移、業界での評判、業界誌や新聞などの掲載情報など。集められる情報について、銀行に話をすることができればOKです。
大手企業、大企業との取引はアピールする
売上先・仕入先の「業績」という点で言えば。売上先・仕入先が、いわゆる「大手企業・大企業」であることは、銀行にとっては安心材料です。
言うまでもないことですが、大手企業・大企業は中小企業に比べて、業績が安定的であることが多いからです。
したがって、自社の売上先・仕入先に大手企業・大企業があるのであれば、銀行には積極的にアピールをするのがよいでしょう。
また、中小企業が大手企業・大企業とお付き合いをするのは簡単ではない、という一面もあります。一定の商品力、信用力、財務力などがなければ、お付き合いは難しいから、ですね。
もちろん、それは銀行もわかっていますから、大手企業・大企業とのお付き合いが、よいアピールになるわけです。
なお、アピールする際のポイントとして。そのお付き合いが「継続的」なものであるかどうか、も大切になります。
単発的な取引であり、「たまたま」という要素が強いようだと、どうしてもアピールは弱くなってしまいます。
逆に、継続的な取引であれば、その点をしっかりと説明するようにしましょう。取引の事実を示す・強調するために、契約書や受注書などを提示することもひとつの方法です。
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まとめ
銀行に「売上先・仕入先」のことを聞かれたら説明すべきポイント、についてお話をしてきました。
銀行が融資先の評価・審査をするうえで、売上先・仕入先は重要項目のひとつ。銀行はどんなことが知りたいのか、どんなことを考えているのか押さえて、的を射た回答をができるようにしましょう。
- 売上先・仕入先の「数」の増減
- 売上先・仕入先の「シェア」の変化
- 売上先・仕入先の「状況」