はじめは、どの銀行から融資を受ければよいのだろう? そのあと、どうやって取引銀行を増やせばよいのだろう?
との悩みは少なくありません。そこで、取引銀行ゼロから「融資を受ける銀行」を増やす方法・手順についてお話をしていきます。
どの銀行から融資を受ける? どうやって取引銀行を増やす?
会社・事業における銀行融資について。
はじめは、どの銀行から融資を受ければよいのか? そのあと、どのように取引銀行を増やせばよいのか?
わからずに悩んでいる・迷っていることもあれば、わかっているつもりでも実は間違えている、ということもあります。
ちなみに。取引銀行(融資を受ける銀行)は、必ず2つ以上にしましょう。銀行同士の競争を促すため、そして、銀行の融資姿勢が変わるリスクに備えるためです ↓
そこで。取引銀行ゼロから「融資を受ける銀行」を増やすにあたって、具体的な方法・手順をお話していきます。こちらです ↓
- 日本政策金融公庫から融資を受ける
- 日本政策金融公庫から借りたおカネを信用金庫・地方銀行に預ける
- 上記の信用金庫・地方銀行から融資を受ける
- 上記の信用金庫・地方銀行と競合する他の信用金庫・地方銀行から融資を受ける
- プロパー融資に切り替えて、保証協会の枠をあける
- さらに別の銀行を開拓する
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
取引銀行ゼロから「融資を受ける銀行」を増やす方法・手順
①日本政策金融公庫から融資を受ける
いちばんはじめに融資を受けるのにおすすめなのが「日本政策金融公庫(以下、日本公庫)」です。
日本公庫は政府系金融機関であり、民間金融機関の融資を補完する役割を担っています。平たく言うと、「民間の銀行が融資をしにくいような会社」にも柔軟に対応をするのが日本公庫です。
具体的には、創業したばかりの会社や個人事業者、信用力に乏しい小規模零細企業など。民間の銀行が回収不能を嫌って融資をしにくいような会社にも、日本公庫は積極的です。
したがって、はじめて融資を受けるのであれば、「まずは日本公庫から」を考えましょう。
②日本政策金融公庫から借りたおカネを信用金庫・地方銀行に預ける
前述した日本公庫には「預金機能」がありません。おカネを貸すのが専門で、預金をできないのです。
よって、日本公庫から融資を受けると、その借りたおカネを預け入れる・返済をするための銀行口座が必要になります。
このとき、「なんとなく」で銀行選びをしてはいけません。ポイントは、「次に融資を受ける銀行」を選び、そこにおカネを預けることです。
おカネを預ける(口座をつくる)ことから銀行とのお付き合いははじまります。お付き合い(融資を受ける)をしたい銀行に、おカネを預けましょう。
中小企業であれば、最寄りの信用金庫・信用組合、あるいは地方銀行です。少なくとも、都市銀行ではありません。
都市銀行は、基本的に大企業向けの銀行です。お付き合いをしようと思っても、その敷居は相当に高く、この段階で融資を受けるのは難しいものがあります。
日本公庫から借りたおカネを、「なんとなく都市銀行で」と考えてしまっているケースがありますので気をつけましょう。
③上記の信用金庫・地方銀行から融資を受ける
信用金庫・地方銀行などにおカネを預けたら、その銀行に融資の依頼をしてみましょう。
ここでのポイントは、融資条件に対してムチャを言わないことです。
おそらくはじめは、信用保証協会付き融資(回収不能時のリスクの一部を信用保証協会が銀行の肩代わりする融資)だったり、金利が高かったり、返済期間が短かったりでしょう。
おカネを貸すほうにしてみれば、はじめての融資なのですから慎重になるのは当然だからです。
にもかかわらず、この段階でムチャを言えば「じゃあ貸さない」ということになりかねません。せっかくおカネを預けてお付き合いをはじめた意味がなくなってしまいます。
借りるほうにしてみれば「イマイチ」な融資条件かもしれませんが、ここでは融資の「実績」をつくることが第一です。
この段階では、プロパー融資(銀行が100%リスクを負っておカネを貸す融資)を要望したり、金利の交渉したりは得策ではない。と、心得ておきましょう。
④上記の信用金庫・地方銀行と競合する他の信用金庫・地方銀行から融資を受ける
日本公庫からの融資を受け、その融資のおカネを預けた信用金庫・地方銀行からも融資を受けた。
次にやるべきは、融資を受けた信用金庫・地方銀行と「競合」する銀行からの融資を受けることです。
銀行の営業エリアがかぶっている、銀行の規模感がだいたい同じ、など。競合しているような銀行を、自社の地域で探してみましょう。
見つかったら融資の依頼をしますが、ここでモノを言うのがさきほどの「実績」です。他の信用金庫・地方銀行で融資を受けている、という実績。
銀行ははじめての取引を警戒しますから、必ずこう聞かれます。「なぜ、ウチの銀行で融資を受けようと思われたのですか?」と。
聞かれたら、こう返しましょう。「すでに他行で融資を受けていますが、税理士などから他の銀行でも融資を受けるように勧められたので」、これでOKです。
他の銀行で融資を受けている実績があるので、「融資の審査をパスできるような会社なんだな」と相応の信用を感じてもらえます。
また、複数の銀行とお付き合いをするとの意向から、「他の銀行に見限られたわけでもないのかな」と警戒心を解く助けになります。
この点で、決算書の内容(業績)が良い、あるいは、悪くないに越したことはありません。
また、決算書の内容が良いほど、銀行は「貸したい、他の銀行よりもウチが貸したい」と考えるものです。
結果として、はじめに融資を受けた信用金庫・地方銀行よりも、良い融資条件を提案してもらえる可能性があります。
その場合には、その「良い融資条件」を、はじめに融資を受けた信用金庫・地方銀行に情報として開示しましょう。競争意識に働きかけて、良い融資条件の提案を期待することができます。
もしも、取引がない銀行が、融資の「営業」に来たら。必ず話を聞くようにしましょう。時間が無くても、挨拶、名刺交換は絶対です。
銀行は「一見さん」を警戒しますが、ここで面識ができていれば「一見さん」ではなくなります。いますぐ融資を受けないとしても、面識はつくっておきましょう。
⑤プロパー融資に切り替えて、保証協会の枠をあける
ここまでのあいだで、「日本公庫+2つ以上の民間銀行」からの融資を受けることができました。
次は、信用保証協会付き融資からプロパー融資への切り替えです。
信用保証協会付き融資のように信用保証料の支払いもなく、低金利などの良い融資条件が期待できるプロパー融資を狙いましょう。
いっぽうで。プロパー融資は、銀行にとってリスクが高い融資であるため、はじめはなかなか引き出すことができません。
けれども、会社・事業の業績が良い・伸びている。そして、銀行とのコミュニケーションも取れていれば、プロパー融資のチャンスです。
お付き合いをしている民間銀行のそれぞれに、プロパー融資の打診をしてみましょう。
このときの「目安」としては、次のとおりです ↓
- 信用金庫・信用組合であれば、自社の年商が1億円を超えている。地方銀行であれば、3億円を超えていること
- 税引後利益+減価償却費>ゼロ(大きいほどよい)
- 資産の総額>負債の総額(資産が大きいほどよい)
- 既存の借入金総額 ÷(税引後利益 +減価償却費)<10(小さいほどよい)
なお、プロパー融資に切り替えるのは、融資条件を良くするためだけではなく、信用保証協会付き融資の「枠」を空けるためでもあります。
信用保証協会付き融資には、無担保融資の上限としての「枠」が決められています。具体的には、一社あたり 8,000万円です。
銀行ごとの枠ではなく、すべての銀行合わせて 信用保証協会付きの無担保融資は8,000万円まで、という考え方になります。
ただし、枠は「上限」であって、必ずしも 8,000万円までOK、ではありません。そのときどきの会社の業績などによって決まります。
したがって、その「枠」をできるだけ空けておくためにも、プロパー融資への切り替えが必要なのです。空けた枠をどう使うかが、次のお話になります。
⑥さらに別の銀行を開拓する
プロパー融資に切り替えたことで空いた信用保証協会付き融資の枠を使って、さらに別の銀行からの融資を増やしていきます。
自社の規模・状況に応じて、より上位の銀行を開拓するのがよいでしょう。
ここで言う「上位」とは、信用金庫・信用組合から見れば地方銀行が上位。地方銀行のなかでは、第二地銀よりも第一地銀が上位。地方銀行から見れば都市銀行が上位。という感じです。
言うまでもなく、上位の銀行の融資審査は厳しく。また、はじめての取引となれば銀行も慎重です。
したがって、「さいしょは信用保証協会付き融資で様子見」が基本になります。
このときに「枠」が空いていないと話が前に進みません。ですから、信用保証協会付き融資は折を見てプロパー融資に切り替えておく必要があるのです。
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まとめ
取引銀行ゼロから「融資を受ける銀行」を増やす方法・手順についてお話をしてきました。
はじめは、どの銀行から融資を受ければよいのか? そのあと、どのように取引銀行を増やせばよいのか? スムーズに融資を受けるために、方法・手順を押さえておきましょう。
- 日本政策金融公庫から融資を受ける
- 日本政策金融公庫から借りたおカネを信用金庫・地方銀行に預ける
- 上記の信用金庫・地方銀行から融資を受ける
- 上記の信用金庫・地方銀行と競合する他の信用金庫・地方銀行から融資を受ける
- プロパー融資に切り替えて、保証協会の枠をあける
- さらに別の銀行を開拓する