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銀行が見ている『ほんとうの会社の利益』の計算式と計算例

ほんとうの利益の計算式

銀行融資を受けるにあたり注目される「会社の利益」。ただし、銀行は「決算書の利益そのまま」を見ているわけではなく、「ほんとうの利益」をあぶりだそうとしています。

というわけで、銀行が見ている「ほんとうの会社の利益」の計算式と計算例についてお話をしていきます。

目次

銀行は「決算書の利益そのまま」だけを見ていない

会社・事業における銀行融資について。

銀行は、融資をするかしないかの判断をする際、会社の「利益」に注目をしています。

利益が返済の原資になる、と考えているからです。

たくさんの利益があれば、きちんと返済してもらえる可能性が高いので、銀行としては安心して融資ができます。

逆に、じゅうぶんに利益がなければ。途中で返済できなくなる可能性があるので、融資はできないと考えます。

そこで、決算書(損益計算書)に掲載されている利益が注目されるわけですが。

銀行が見ている利益にもいろいろあって、「決算書の利益そのまま」だけを見ているわけではありません。

決算書の利益をもとにして、その会社の「ほんとうの利益」をあぶりだそうとしているのです。

そこで。ほんとうの利益、ってなんだ? という次のようなお話をしていきます ↓

このあとの話の内容・流れ
  1. 【結論】「ほんとうの会社の利益」の計算式
  2.  計算式の解説
  3.  計算例からわかる計算式の威力

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

 

【結論】「ほんとうの会社の利益」の計算式

まずはじめに結論として。冒頭でお話をした「ほんとうの会社の利益」をどう求めるか? 計算式を提示します ↓

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

上記の計算によって、「ほんとうの会社の利益」を計算することができます。

なんで? どうして? というのが、次のお話です。

 

計算式の解説

さきほど見た「ほんとうの会社の利益」の計算式について。なぜそのような計算式なのか? 解説をしていきます。

税引後利益からはじまる理由

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

正確には、損益計算書の末尾にある「当期純利益」を指します。

税金まで支払ったあと、さいごに会社に残る利益であり、返済原資の大元として。ここから計算がはじまります。

役員報酬をプラスする理由

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

役員報酬は「経費」として、利益を計算する際にはマイナスしていますが。ここでは、その役員報酬をプラスして足し戻しています。

なぜならば。役員報酬は他の経費と違い、社長の一存で「上げ下げ」が可能だからです(たとえば、事務所家賃は家主の合意なく、社長の一存では上げ下げできませんよね)。

そのときどきで上げ下げできてしまう役員報酬が影響している「税引後利益」を見ていたのでは、「ほんとうの利益」がわからない…

だったら、役員報酬をマイナスする前の利益でもって、会社の収益力をはかろう。というのが、役員報酬をプラスする理由です。

【参考】役員への地代家賃もプラスする

たとえば、社長所有の建物を事務所として会社に賃貸している場合。役員報酬と同じ考え方で、役員に対する「地代家賃」の経費があれば、それもプラスして足し戻します。

家賃を払うこともあれば、家賃無しで貸すこともできて、やはり「上げ下げ」ができるからです。

減価償却費をプラスする理由

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

減価償却費は「利益調整」として使われることが少なくありません。

利益が出ているときには減価償却費をたくさん(税法で決められた上限まで)経費にする。逆に利益が出ていないときには、少なめに経費にする、あるいはゼロにする。

このように「調整」されてしまったあとの利益(税引後利益)を見ていたのでは、「ほんとうの利益」を把握することはできません。

ですから、減価償却費をプラスして足し戻す。減価償却費をマイナスする前の利益でもって、会社の収益力をはかろうというわけです。

節税経費をプラスする理由

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

ここで言う「節税経費」とは。たとえば、税金を減らすことを狙って入った保険の保険料。

その保険料の支払いは、経費として利益からマイナスをされているものですが、「払わない(保険に入らない)」という選択もできたものです。

そういう意味では、ぜったいに必要な経費ではありません。利益調整の経費、と見ることができる。

前述した減価償却費と同じですね。ということで、節税経費はプラスして足し戻します。

ちなみに。利益の増減に対して明らかに比例して増減する交際費、なども節税経費のひとつと言えるでしょう。

数年分の利益と交際費を並べてみると、「利益が増えたから増えたであろう交際費(節税経費)」の金額が見えてきます。

特別利益をマイナスする理由

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

損益計算書には「特別利益」の項目があります。文字どおり、特別な利益です。

たとえば、固定資産売却益。本業が振るわず、利益・おカネを捻出するために不動産を売却する… というようなケースでの売却益です。

ところが、この利益は来年も続くものではありません。不動産の売却は、そのとき限りのものです。

そのとき限りの利益を含めた「税引後利益」を見ていたのでは、「ほんとうの利益」はわからない… ゆえに、無かったはずの利益はマイナスをします。

特別利益はほかにも、有価証券売却益や保険解約差益などいろいろです。

特別損失をプラスする理由

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

前述した「特別利益」の逆で「特別損失」があります。たとえば、固定資産売却損。

遊休不動産を売却したが、買ったときよりも安値で損が出た… というようなケースです。

ところが、これは遊休不動産を売却したから出た損であって、来年も続くような損ではありません。言うなれば、「たまたま」出た損です。

したがって、無かったはずの損(経費)としてプラスします。特別利益とは逆の考え方ですね。

特別損失はほかにも、役員退職金や特別償却費、有価証券売却損、保険解約差損などいろいろあります。

 

計算例からわかる計算式の威力

ここまで見てきた「ほんとうの会社の利益」の計算式について、実際の計算例を見てみましょう。計算式を再掲しておきます ↓

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

《計算例1》役員報酬の増減

  • 前期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 1,000万円 
  • 当期・・・税引後利益 ▲500万円、役員報酬 2,000万円

上記の会社について、「ほんとうの会社の利益」の計算式にあてはめてみると、

  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 1,000万円 = 1,500万円 
  • 当期・・・税引後利益 ▲500万円 + 役員報酬 2,000万円 = 1,500万円

決算書の「税引後利益」だけを見ていると、当期は大幅に業績が悪化したように見えますが。

役員報酬は前期並みに下げることができると考えるのであれば、「ほんとうの利益」は変わらない。会社の収益力は落ちていない、と見ることになります。

《計算例2》減価償却費の増減

  • 前期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 500万円 
  • 当期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 50万円

上記の会社について、「ほんとうの会社の利益」の計算式にあてはめてみると、

  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 500万円 = 3,000万円 
  • 当期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 100万円 = 2,600万円 

決算書の「税引後利益」だけを見ていると、前期も当期も変わらないように見えますが。

当期の減価償却費も前期並みにあるはずと考えるのであれば、「ほんとうの利益」は悪化している。会社の収益力は落ちている、と見ることになります。

《計算例3》節税経費の増減

  • 前期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 500万円、節税経費 0万円 
  • 当期・・・税引後利益 300万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 500万円、節税経費 500万円

上記の会社について、「ほんとうの会社の利益」の計算式にあてはめてみると、

  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 500万円 + 節税経費 0万円 = 3,000万円 
  • 前期・・・税引後利益 300万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 500万円 + 節税経費 500万円 = 3,300万円 

決算書の「税引後利益」だけを見ていると、当期は利益が減ったように見えますが。

節税経費は必ずしも支払わなくてもよいものと考えるのであれば、「ほんとうの利益」はむしろ増えている。会社の収益力は上がっている、と見ることになります。

《計算例4》特別利益の増減

  • 前期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 500万円、特別利益 0万円 
  • 当期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 500万円、特別利益 500万円

上記の会社について、「ほんとうの会社の利益」の計算式にあてはめてみると、

  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 500万円 - 特別利益 0万円 = 3,000万円 
  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 500万円 - 特別利益 500万円 = 2,500万円 

決算書の「税引後利益」だけを見ていると、前期も当期も変わらないように見えますが。

特別利益は当期限りのものと考えるのであれば、「ほんとうの利益」は悪化している。会社の収益力は落ちている、と見ることになります。

《計算例5》特別損失の増減

  • 前期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 500万円、特別損失 0万円 
  • 当期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 500万円、特別損失 500万円

上記の会社について、「ほんとうの会社の利益」の計算式にあてはめてみると、

  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 500万円 + 特別損失 0万円 = 3,000万円 
  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 500万円 + 特別損失 500万円 = 3,500万円 

決算書の「税引後利益」だけを見ていると、前期も当期も変わらないように見えますが。

特別損失は当期限りのものと考えるのであれば、「ほんとうの利益」は増えている。会社の収益力は上がっている、と見ることになります。

《計算例6》いろいろ複合ワザ

  • 前期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 2,000万円、減価償却費 500万円
  • 当期・・・税引後利益 500万円、役員報酬 1,500万円、減価償却費 250万円、特別利益 300万円

上記の会社について、「ほんとうの会社の利益」の計算式にあてはめてみると、

  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 2,000万円 + 減価償却費 500万円 = 3,000万円 
  • 前期・・・税引後利益 500万円 + 役員報酬 1,500万円 + 減価償却費 250万円 - 特別利益 300万円 = 1,950万円 

決算書の「税引後利益」だけを見ていると、前期も当期も変わらないように見えますが。

会社がアレコレ調整したと思われるものを暴いてみると、「ほんとうの利益」は大幅に悪化している。会社の収益力は落ちている、と見ることになります。

融資を受けるためになんとか利益を出そうとする会社で、実際に見かけるケースではありますが。「計算式」にあてはめれば一目瞭然、ということは押さえておきましょう。

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まとめ

銀行が見ている「ほんとうの会社の利益」の計算式と計算例についてお話をしてきました。

計算式については、銀行融資の視点だけではなく、自社で利益の推移を見るときにも使えるものです。

損益計算書の表面的な利益だけではなく、「ほんとうの利益」にも目を向けてみましょう。

「ほんとうの会社の利益」の計算式

ほんとうの会社の利益 = 税引後利益 + 役員報酬 + 減価償却費 + 節税経費 - 特別利益 + 特別損失

ほんとうの利益の計算式

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