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万一のために覚えておく『資金繰り破綻時に支払を止める順序』

資金繰り破綻時に支払いを止める順序

もしも、会社・事業の資金繰りが破綻してしまったら…?

目の前にある「支払うべきもの」の数々をどうするか。万一のときに備えて、「資金繰り破綻時に支払を止める順序」についてお話をしていきます。

目次

万一のときにも混乱せずに乗り切るために

もしも、会社・事業の資金繰りが破綻してしまったら…?

考えたくはないことですが、その可能性はゼロではありません。

では、そのときに。目の前にある「支払うべきもの」の数々をどうすればよいのか。

たとえば、次に挙げる支払いについて。あなたなら、どれから優先的に支払うでしょうか。どれを待ってもらおうと考えるでしょうか。

会社・事業で支払うべきものの数々
  • 銀行への返済
  • 税金
  • 社会保険料
  • 役員報酬
  • 従業員給与
  • 仕入
  • その他経費

これはいますぐ払わなきゃ。あれは少し待ってもらおうか。いや、やっぱり払わないとまずいか・・・ 突然訪れた万一の事態に混乱してしまうかもしれません。

その結果、支払いの順序を誤れば、再起のチャンスを失ってしまいます。

そんなことがないように。万一に備えて、「資金繰り破綻時に支払いを止める順序」を押さえておきましょう。

 

資金繰り破綻時に支払いを止める順序

はじめに「結論」として。

万一、資金繰りが破綻してしまったときに、支払いを止める順序は次のとおりです ↓

資金繰り破綻時に支払いを止める順序
  1. 役員報酬
  2. 銀行への返済
  3. その他経費
  4. 仕入
  5. 税金、社会保険料
  6. 従業員給与

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

《順序①》役員報酬

まず支払いを止めなければいけないのは「役員報酬」です。

役員にも生活がありますから、全額を止めることはできないにしても減額することが必要になります。

それができずに、他の支払いから先に止めるとなれば。「(資金繰り破綻にいたった)経営の責任を取りもしないで!」と非難をされることでしょう。

非難をされてしまえば、他の支払いを止める、待ってもらうことも難しくなってしまいます。

また、他の支払いを止めることによる影響の大きさ(後述します)に比べれば、役員報酬を止める影響のほうが小さくて済む。役員報酬の減額だけで済むならば・・・ という視点もあります。

《順序②》銀行への返済

ここがだいじなところです。「銀行への返済」は、支払いを止める順序は2番目。早いです。

ところが、銀行への返済をなんとか続けようと、逆にさいごまで引っ張ってしまうケースがあります。

もちろん、銀行に返済をすることも大切なことではありますが、他の支払いとの優先順位で言えば「後」です。

後述する他の支払いを止めることによる影響のほうが大きいから、というのがその理由になります。

では、銀行への返済を止めるなんてできるのか? というと。

できます。「リスケジュール(リスケ)」と言って、銀行とのもともとの約束(返済条件)を変更することは可能です。返済を待ってもらうこと(返済ゼロ円)ができます。

ただし、ずっと待ってもらう、というわけにはいきません。会社・事業を立て直し、いずれきちんと返済をするという計画書(経営改善計画書)を銀行に提示して、納得してもらうことが必要です。

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《順序③》その他の経費

経費、と言ってもいろいろありますが。そのなかから、日々の事業を続けるにあたって影響が少ないであろうものから支払いを止めていくことなります。

逆に、影響が大きい経費について、支払いを止めることはできません。たとえば、電気代や水道代。事務所や店舗・工場の家賃など。

なお、支払いを止めると言っても「完全に止めてしまう」と、モノを受け取れない・サービスを受けられない・・・ということになりかねません。

それでは日々の事業に支障をきたしますから、現実的には、支払い期限を延ばしてもらう、分割払いにしてもらう、といった対応になるでしょう。

《順序④》仕入

できるだけ支払いを止めたくはないのが、「仕入」に関する支払いだと言えます。

言うまでもなく、仕入ができなければ商品がありませんから、売上をあげることができません(モノを仕入れて売る、という商売の場合)。同じ考え方で言えば、「外注費」もそうでしょう。

仕入や外注費のように、売上に直接かかわる支払いを止めることは、その後の売上に影響を与えてしまうため、そうそう支払いを止めるわけにはいきません。

支払い期限を延ばしてもらう、分割払いにしてもらうなど、支払条件を交渉する対応もありますが。

先行きに不安を感じた相手から取引を制限されてしまうこと(現金取引しかしない、など)も考えられます。

したがって、とくに大口の仕入先や、継続的取引のある仕入先ほど、支払条件の交渉は慎重にしなければいけません。

また、支払条件の交渉がきっかけになり、「あの会社は危ないかもしれない」とのウワサが周囲に流れてしまうこともありえます。

そういう意味では、信頼関係がある(口が堅い)仕入先を見極めることも大切です。

《順序⑤》税金、社会保険料

ちまたには、税金・社会保険料こそ早いうちに支払いを止めるべきだ、とのハナシがあります。

税務署にしても年金事務所にしても、それほどとやかく言われないから、待ってもらえるから、というのが理由のようです。

たしかに、待ってもらうこともできますが。遅延したことによる罰金(延滞税など)の負担は大きなものです。

また、とやかく言われないからと放置をしているケースでは、あるとき突然に差し押さえの憂き目にあうことになります。

これではますます状況が悪くなるばかりです。ゆえに、資金繰りが厳しくても、税金や社会保険料は支払いは止めない、と考えておくことをおすすめします。

とはいえ、どうしても払えないというのであれば。税務署や年金事務所などに出向いて、分割で納付する旨の相談をしましょう。

放置に対してはいずれ必ず制裁が待っています。税金・社会保険料の支払を放置をしてはいけません。

《順序⑥》従業員給与

ぜったいに支払いを止めたくはないのが「従業員給与」です。

給与が支払わなければ、当然、従業員はやめてしまいます。従業員がやめてしまえば、売上をあげらません。売上があがらなければ、資金繰りはますます悪くなります。

また、従業員の給与に関しては「いちどくらい」が通用しません。いちどでも給与を支払うことができない、支払いが遅れるようなことがあれば、一気に信用を失くしてしまいます。

結果として、辞めていく従業員が出る。辞めないにしても、働くモチベーションが低下すれば、日々の仕事にも影響が出るでしょう。

従業員を雇い続ける限り、給与はなんとしても支払う。そう考えると、支払いを止める順序はいちばん最後です。

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まとめ

万一のために覚えておく「資金繰り破綻時に支払を止める順序」についてお話をしてきました。

とくに、「銀行への返済」は早い段階で支払いを止めることを押さえておきましょう。そこが遅すぎて、立ち行かなくなるケースは少なくありません。

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