銀行は、融資先の「株主・役員」について関心を寄せています。
銀行の積極的な融資姿勢にもつながる、会社が銀行に伝えるべき「株主・役員」のポイントを押さえておきましょう。
銀行は融資先の「株主・役員」のことを気にかけている
融資を受ける・受けている場合に、会社が銀行に伝えるべきことはいろいろありますが。
そのなかには、自社の「株主」のこと、「役員」のことがあります。
ちなみに、株主とは。ひとことで言うと、その会社の「実質的な所有者」です。
役員とは、代表取締役をはじめ、取締役や監査役など、会社の「経営・運営にかかわる幹部」を言います。
ですから、株主も役員も、会社にとっては「重要な関係者」です。
ゆえに、銀行も融資先の「株主」と「役員」については関心を寄せています。
伝えるべきポイントを押さえて、会社のほうからも自主的に情報提供していくのがよいでしょう。
伝えるべきことを漏れなく伝えることで、その後の銀行の「積極的な融資姿勢」も期待できるところです。
というわけで。このあと、融資を受ける会社が銀行に伝えるべき「株主・役員」のポイントについてお話をしていきます。
銀行に伝えるべき「株主」のポイント
銀行は、その会社の実質的な所有者である「株主」は誰か? に注目をしています。
具体的には、次のような書類から、融資先の株主をチェックします ↓
- 法人税申告書のなかにある「別表二・同族会社の判定に関する明細書」
- 会社が作成している「株主名簿」
上記の書類について、どのようなポイントを銀行に伝えるべきか。確認をしていきましょう。
持ち株比率は安泰である
会社の重要事項は「株主総会」で決められます。そこでは、持株数に応じた多数決となりますので、「誰がどれどけの株を持っているか?」の持ち株比率が重要になります。
この点で、社長あるいはその一族で持ち株率 100%、というのが多くの中小零細企業の実態です。
持ち株比率 100%であれば、会社の重要事項の決定は社長の思いのままであることから、基本的には安泰だと言えます。
いっぽうで、社長とは第三者の関係にある株主や、一族でも不仲にあるような株主が存在する場合。そのような株主の持ち株比率によっては、安泰とは言えなくなってしまいます。
では、社長がどのていどの持ち株比率であればよいのか? こちらが目安になります ↓
持ち株比率 3分の2以上 | 株主総会の特別決議(取締役の解任、会社の合併など)ができる |
持ち株比率 2分の1以上 | 株主総会の普通決議(取締役の選任、報酬の決定など)ができる |
持ち株比率 3分の1以上 | 株主総会の特別決議を止めることができる |
上記から、「最低でも持ち株比率 3分の1以上」が目安になります。3分の1以上あれば、取締役解任や会社合併などの特別決議を否決することはできるからです。
社長が他の株主と争うような事態になっても、3分の1以上の持ち株比率であれば、なんとか戦える。そういうことです。
逆に、3分の2以上の持ち株比率であれば、社長単独で特別決議も普通決議もすることができます。社長がひとりで自由に意思決定できる、ということです。
その「あいだ」として、2分の1以上の持ち株比率であれば、取締役選任・報酬決定などの普通決議は社長単独ですることができます。
これらをふまえて銀行に伝えるべきことは、まずは社長の持株比率です。第三者株主や一族株主とは、将来的に不仲になることもありえるからです。
そのうえで、一族の関係が良好であることや、社長一族での持ち株比率についてを説明するのがよいでしょう。
第三者株主との関係性・持と株比率推移
さきほど、第三者株主とは将来的に不仲になることもありえる、という話をしました。
したがって、銀行としても第三者株主と会社との関係性については気になるところです。株主となった経緯とあわせて、銀行に伝えるようにしましょう。
一般に多い関係性として、次のようなケースが挙げられます ↓
- 社長の友人・知人
- 一族以外の役員、従業員
- 得意先、仕入先など取引先
このほかにも、場合によっては取引銀行やベンチャーキャピタルなどによる出資もありえます。
なお、第三者株主との関係性に加えて、第三者株主の持ち株比率の推移も銀行に伝えるようにしましょう。
たとえば、従業員や取引先などの持ち株比率を増やしているのであれば、自社の今後の意思決定に影響を与えることとなります。
持ち株比率の今後の推移をどう見込んでいるのか、考えているのか。経営の方向性として銀行に伝えることが大切です。
そうでなければ、銀行は「第三者に経営権が奪われたりしないのかなぁ?」と心配になってしまいます。
大手企業や有名企業が株主になっているという場合。自社の技術力や商品力の高さのあらわれ、と見ることもできますから銀行へのアピールポイントです。
ただし、出資金額が少なすぎる場合にはそうとも言い切れず(おつきあいていど?)、逆に多すぎる場合には経営権を奪われているとも見られるところです。
事業承継を進めている
たとえば、社長の息子など「後継者」となる人物が決まっている場合。社長から息子に株式を贈与するなどの「株式移転」をするはずです。
このような株式移転、つまりは事業承継について、銀行に伝えるようにしましょう。
後継者がいる分、会社の寿命は長くなるものであり、銀行としても長いお付き合いを期待できることから、積極的な融資を期待することができます。
また、株式移転にともない必要な資金の手当てについても支援を受けられるかもしれません。
後継者である株主がいることとあわせて、事業承継の計画も説明をすると、より銀行からの理解を得やすくなります。
なお、社長が高齢(おおむね65歳くらい)になると、銀行は事業承継を気にし始めるものです。
後継者がいない場合には、社長が高齢になるほど、会社は融資が受けにくくなることは覚えておきましょう。
銀行に伝えるべき「役員」のポイント
銀行は、その会社の経営・運営にかかわる幹部である「役員」は誰か? に注目をしています。
具体的には、次のような書類から、融資先の役員をチェックします ↓
- 会社の「登記簿謄本(登記事項証明書)」
- 法人税申告書に付属する勘定科目内訳明細書のなかにある「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」
- 会社が作成している「役員名簿」
上記の書類について、どのようなポイントを銀行に伝えるべきか。確認をしていきましょう。
後継者がいる
「後継者」と決めている役員がいるのであれば、それを銀行に伝えるようにしましょう。
とくに、新役員として就任をしたときには、就任までの経緯(これまでの経歴・功績など)や承継の計画なども説明をすることが大切です。
後継者が事業を承継できるような人物か、いつ承継が完了するのかは銀行の関心事だからです。
このあたりは、さきほど「株主」のところでした話と基本的には変わりません。
ただし、株主になる(株式移転)時期と、役員に就任する時期とは必ずしも一致しないでしょうから、その点も銀行への説明をすべきポイントです。
繰り返しになりますが、後継者の存在と、事業承継の計画とを伝えるようにしましょう。
第三者役員との関係性
中小零細企業では、株主が社長一族で占められることが多いのと同様に。役員もまた社長一族ばかり、がほとんどです。
したがって、社長一族以外の第三者が役員であることは、割合としては珍しいことであり、銀行としても気になるところとなります。
ですから、第三者が役員に就任をしたときには、社長・会社との関係性を銀行に伝えるようにしましょう。
加えて、従業員が昇格をしたのか、外部から登用したのかなど、就任経緯も説明します。
このとき、営業の功績を買っての昇格、管理能力を見込んでの外部登用などの具体的な説明ができれば、今後の会社の方向性を示すことにもつながります。
ひいては、営業力や管理力の強化がはかれることから、会社に対する評価がアップすることも期待できるところです。
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まとめ
融資を受ける会社が銀行に伝えるべき「株主・役員」のポイントについてお話をしてきました。
銀行は融資先の「株主」と「役員」に関心を寄せています。
伝えるべきことを漏れなく伝えて、銀行の「積極的な融資姿勢」を引き出していきましょう。