得意先が倒産、売上代金が回収不能に… 自社の資金繰りに影響を与えるだけに、そのようなことが起きないように気をつけるべきところです。
それでも起きてしまったときの資金調達方法と銀行対応について、お話をしていきます。
起きるかもしれない得意先の倒産・回収不能に備える
会社・事業を続けていると、起こりうることとして「得意先の倒産」、それにともなう「売上代金の回収不能」が挙げられます。
そのようなことが起こらないように、と気をつけていても。可能性がゼロではありません。
では、いざ起きてしまったらどうなるか?
もらえるはずのおカネがもらえないのですから、当然、資金繰りに影響を与えることになります。
回収不能額のていど加減によりますが、場合によっては自社の連鎖倒産を招きかねない… ということもあるでしょう。たいへん大きな問題です。
そこで、得意先の倒産・回収不能が起きてしまったときの資金調達方法、加えて銀行対応について、お話をしていきます ↓
- 得意先の倒産・回収不能時の「資金調達方法」
- 得意先の倒産・回収不能時の「銀行対応」
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
得意先の倒産・回収不能時の「資金調達方法」
得意先が倒産をしてしまった、その売上代金が回収できなくなってしまった。というときの資金調達方法として、おもに次の3つが挙げられます ↓
- 銀行から融資を受ける
- 経営セーフティ共済から融資を受ける
- 日ごろからおカネを備えておく(借りておく)
上記3つの資金調達方法について、順番に見ていきます。
《方法1》銀行から融資を受ける
いつも取引をしている銀行に頼んで融資をしてもらう、という方法があります。
しかしそれは、過度に期待を持てる方法ではありません。なぜなら、そもそも銀行は「後ろ向き」の融資を好まないからです。
売上代金を回収できないという「損失」を抱えてしまった会社への融資は、明らかに「後ろ向き」。
おカネを貸しても返してもらえないかもしれない、そう考えれば積極的に融資をできるケースではないでしょう。
絶対にムリとまでは言いませんが、「得意先の倒産・回収不能時の銀行融資は難しい」と考えておくのが無難です。
なお、そのような事態を想定して、「公的な融資」のしくみが用意されています ↓
- 日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付(取引企業倒産対応資金)」
- 信用保証協会の「セーフティーネット保証(連鎖倒産防止)」
上記は「公的な融資」であるだけに、ややもすると期待をしがちなところではありますが。「審査」があることを忘れてはいけません。
セーフティーネット貸付であれば日本政策金融公庫の審査、セーフティネット保証であれば信用保証協会と銀行の審査があります。
いずれの融資も、「審査の結果、ご希望に添えない場合がある」との注意書きがなされているところです。
また、融資を受けられるとしても。審査にあたって、その準備・手続きなどに時間がかかります。どれだけの時間がかかるか、具体的に定かでないのは不安要素のひとつです。
総じて、「得意先の倒産・回収不能時の銀行融資は難しい」という理解をしておきましょう。
《方法2》経営セーフティ共済から融資を受ける
銀行からの融資が難しいことは前述のとおりですが。得意先の倒産・回収不能時に使える融資が別にあります。
それが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)。国の中小企業政策を実施する機関である「独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)」が運用する制度です。
得意先が倒産したときに、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度であり、無担保・無保証で融資を受けることができます。
そのうえ「すぐに」融資を受けられるのがポイントです。得意先の倒産について確認が済みしだい、すぐに融資を受けることができるのです。
前述した銀行融資のように「審査」があるわけではない。そこが、銀行融資との大きな違いになります。
ただし。融資を受けるためには、中小機構への「掛金」の払い込みが必要です。
月額 5,000円 〜 200,000円(金額は自社で決める)の掛金を払い込むことによって、「回収不能額」か「払込掛金総額の10倍」の、いずれか少ないほうの金額の融資を受けらるというしくみです。
ちなみに、払込掛金総額は 800万円が限度。つまり、融資の最高限度額は 8,000万円(800万円の10倍)になります。
なお、掛金は「経費」になりますので、税金を減らす効果があります(解約をしておカネを受け取ると収入になります)。
会社の業績がよいとき、資金繰りが安定しているときに、経営セーフティ共済への掛金払込を検討しておくのがよいでしょう。
《方法3》日ごろからおカネを備えておく(借りておく)
得意先の倒産・回収不能時の資金調達方法としてもうひとつ。日ごろからおカネを備えておくことが挙げられます。
もう少し具体的に言うと、日ごろからおカネを借りておく。銀行から融資を受けて、おカネを備えておくということです。
中小企業はもともとが過少資本であり、おカネが潤沢ではありません。また、業績も良いときもあれば悪いときもあります。不安定です。
大企業のように、豊富な資金調達手段もありません。経営者自身が裕福である場合は別にして、中小企業は常に「資金繰り悪化」の危険をはらんでいると言えるでしょう。
であるならば。業績が良いとき、会社・事業の調子が良いときに、銀行から融資を受けておカネを備えておくことです。
前述したとおり、銀行は「後ろ向き」の融資は好みません。いっぽうで、「前向き」の融資を好みます。良いときにこそ、融資を受けておく。この発想が大切です。
にもかかわらず、困ったときばかり・苦しいときばかりに、銀行から融資を受けようとする会社があります。融資を受けられずに、ピンチに陥る会社があります。
当然です。繰り返しになりますが、銀行は「後ろ向き」の融資を好まないからです。
会社・事業を守るために、あらかじめ融資を受けておく、融資を受けておカネを備えておくことを検討しましょう。
得意先の倒産・回収不能時の「銀行対応」
「得意先の倒産・回収不能時の銀行融資は難しい」という話をしました。それはそれとして、「得意先の倒産・回収不能時」にすべき銀行対応というものがあります。
ひとことで言えば、銀行への「報告」です。得意先の倒産・回収不能という事実の報告です。
銀行は「後ろ向き」を好まないのではないか? 後ろ向きな事実をわざわざ報告する必要があるのか? と思われるかもしれません。
けれども、その事実は黙っていても、いつかわかってしまうことでもあります(決算書にもあらわれます)。
だったら、正直に、あらかじめ伝えておいたほうがよいだろう。これは「誠意」や「信頼」という面での対応です。
誰でも悪いことをあとから知らされたり、知ったりすれば、「もしかして隠そうとしていたんだろうか?」と考えますよね。銀行も同じです。
隠そうとしていたことを疑われれば、「今後」の関係が悪くなってしまいます。だから、悪いことほど、正直にあらかじめ伝えておく、報告しておくのも銀行対応の考え方です。
その際、銀行への報告のポイントとしては、
- 回収不能額(損失額)はいくらか
- その得意先の倒産によって、今後の売上・利益はどれだけ減少するか
- 上記をふまえた今後の資金繰りはどうなるか(問題があるか、ないか)
- 今後の資金繰りに問題がある場合の対応方法はどうするか
- このたびの回収不能にいたった経緯・原因、今後の与信管理の改善点
上記の報告をするにあたって、必要な書類は「経営計画書」「資金繰り表」になります。
得意先の倒産によって、今後の売上・利益が多かれ少なかれ減るのでしょうから、銀行もそこは心配をするところです。
減ってしまう売上・利益をどのようにカバーするのか、経営計画書でもって示すようにしましょう。
また、回収不能額が発生することで資金繰りに与える影響、とくに、資金繰りが回るのかどうか? を銀行は不安に思います。
予測資金繰り表をもって、資金が途切れることなく回ることを示すようにしましょう。
手持ちのおカネで回るのであればよいのですが、厳しいときにはその対応についても資金繰り表に織り込まなければいけません。
前述した経営セーフティ共済からの融資や、困難ではありますが銀行融資。あるいは、仕入代金や経費の支払いを調整するなど、なにかしらの対応で資金が回ることを説明します。
再三のお話になりますが、銀行は「後ろ向き」を好みません。資金が回らない、となれば今後の融資姿勢の悪化につながります。
逆に、なんとか資金が回る、なんとか資金を回せる、ということであれば。銀行からの融資が期待できる、とも言えます。
得意先の倒産・回収不能について、「ただの悪い報告」にならないように。ただただ銀行を心配・不安にさせないように。
前述したポイントをよく検討し、「前向き」な報告ができるように準備をしましょう。
口頭だけで済ませようとせず、「経営計画書」「資金繰り表」などの文書を用意することも忘れずに。それが「熱意」というものです。
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まとめ
得意先の倒産・回収不能時の資金調達方法と銀行対応についてお話をしてきました。
自社の資金繰りに影響を与えるだけに、売上代金の回収不能が起きないように気をつけるべきところです。
とはいえ、それでも起きてしまう可能性はゼロではありません。そのときに備えて、資金調達方法と銀行対応を押さえておきましょう。