銀行は、原則、赤字を補うための融資はしません。とはいえ、融資を受けたいのに会社は赤字・・・ ということもあるでしょう。
そこで、少しでも融資を受けられる可能性を高めるために、「赤字でも融資を受けたい会社」が銀行に伝えるべきことについてお話をしていきます。
銀行は赤字の会社におカネを貸さない
会社・事業における銀行融資について。だいじな「原則」のひとつとして、次のことが挙げられます ↓
「銀行は赤字を補うための融資はしない」
借入の返済・利息の支払いは、「利益」が財源になるため、赤字の会社には財源がありません。財源が無い以上、返済はできないのですから融資をすることはできない。そのように銀行は考えます。
もちろん、赤字の会社が必ずしも融資を受けられない、というわけではありません。担保・保証をつける、セーフティネットを利用するなどの事情により、融資を受けられることはあるでしょう。
けれども、それらは「例外」のたぐいであって「原則」ではありません。原則はあくまで、銀行は赤字を補うための融資はしない。これに尽きます。
したがって本来は、黒字のときに融資を受けるべきです。ただ、そうは言っても、融資を受けようと思ったら赤字だった・・・ という現実もあるでしょう。
そこで。「赤字でも融資を受けたい会社」が銀行に伝えるべきことについてお話をしていきます。
赤字で融資を受けるのは難しいものですが、少しでも融資を受けられる可能性を高めるために伝えるべきこと。それが次の5つです ↓
- どうして赤字になったのか
- いつまで赤字が続くのか
- 赤字を解消するための対策はなにか
- 必要なおカネはいくらなのか
- メインバンクはなんと言っているか
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「赤字でも融資を受けたい会社」が銀行に伝えるべき5つのこと
《伝えるべきこと①》どうして赤字になったのか
まずは、どうして赤字になってしまったのか、つまり、「赤字の原因」を伝えましょう。
結果は同じ赤字でも、結果にいたる原因はさまざまですから。自社はどうして赤字になったのか、を確認するところからはじまります。
このとき、「外的」な原因ばかりを強調してしまうのはよくありません。具体的には、「景気が悪い」や「業界全体がよくない」など。
たしかに、それもひとつの原因かもしれませんが、そればかりではないはずです。なぜなら、世の中には「景気や業界全体とは関係なしに黒字の会社」もあるからです。
そう考えると、赤字には何かしら「内的」な原因、その会社に「固有」の原因があるはずで。そのような原因を見つけ出しましょう、ということになります。
たとえば。「値引き販売を繰り返した結果、利益率が悪化してしまった」「コスト管理・数値管理が甘く、ムダな経費が増えてしまった」などが挙げられます。
外的な原因に終始してしまうと、「なにもやりようがない」わけですから、銀行としても赤字の改善をイメージできません。融資は難しくなるばかりです。
内的な原因に目を向けましょう。言い換えると、他責ではなく自責の目を持つ、ということです。
《伝えるべきこと②》いつまで赤字が続くのか
さきほど、赤字の「原因」について話をしました。その原因を見ていくと、赤字には「一過性」のものとそうでないものとがあります。
たとえば、長らく不良在庫になっていた商品を思い切って廃棄処分した。この場合の廃棄損は一過性だと言えるでしょう。
つまり、このような廃棄損は今期限りのものであって、来期はもう廃棄損はありませんよ、ということです。
これに対して、売上不振が続いているとなると、来期がどうなるかはわかりません。もちろん、来期はがんばりますよ!ということではありますが、結果がともなうかどうかはビミョーです。
そういう意味で、売上不振による赤字について、一過性だとはなかなか言い切れないところがあります。
ではそのように、赤字には「一過性」のものとそうでないものがあるとして。言うまでもありませんが、銀行は一過性の赤字に対しては比較的寛容であり、そうでない赤字に対しては厳格なものです。
したがって、赤字とはいえ一過性の要素が強いのであれば、その点を強調していくようにしましょう。そのためにも、前述した「原因」の把握が大切になるわけです。
《伝えるべきこと③》赤字を解消するための対策はなにか
さきほどから、赤字の「原因」について話をしています。原因が分かったところで必要なのは「対策」です。
赤字の原因を放置すれば、当然、赤字が続くことになります(ただし、一過性の赤字は除く)。赤字が続くような会社に対して、やはり銀行は融資を躊躇します。
ですから、原因それぞれについてどう対策するか。その説明が必要になります。
いろいろ対策は考えられますが、ひとつ「コツ」として。できる限りの「コスト削減」は織り込むようにしましょう。
赤字に対して、売上を上げるというのは「相手(お客さま)」があることですから容易ではありません。売りたいからと言って、売れるものでなし。
いっぽうで、コスト削減は「じぶんしだい」です。自社で「やめる」と言えばやめられるものが少なくありません。
たとえば、社長の役員報酬を減額する。いまよりも家賃の安い事務所に移転する。交際費の予算を見直す。仕入先をあらためて相見積もりする、などなど。
もちろん、ただただ金額が減ればよい、という単純なハナシでないことは理解したうえで。それでも金額を確実に下げられるところがないか、コスト削減の余地を探すのです。
これらを最終的に「経営改善計画書」のカタチにまとめましょう。メンドーなので口頭で済ませたい、という会社は多いようですが。だからこそ、書面にまとめて「熱意」や「誠意」を見せましょう。
実際、書面にまとめる過程で、自社にとっても経営改善を考えるよい機会になるはずです。銀行のために書面をつくるのではありません。本質的には自社のためです。
どのような対策を、誰が(=責任者)、いつまでに、どのような手順で進めていくのか。経営改善計画書のなかに記して、その実行を定期的にチェックしていきましょう。計画しっぱなしはいけません。
《伝えるべきこと④》必要なおカネはいくらなのか
赤字でおカネが無い、だからできるだけのおカネを貸して。このような融資のお願いは最悪です。
ところが、実際には「無いから貸して」「あるだけ貸して」とのお願いをする会社があります。その場しのぎ、場当たり的なお願いですから、当然、融資を受けるのは難しくなってしまいます。
必要かどうかもわからないおカネを、あるだけ貸すことなどできるわけがありませんよね。
ですから、銀行には「いくらおカネ(融資)が必要なのか」を伝えるようにしましょう。このとき、やはり書面がだいじになります。
前述した対策の実行を前提として、いったいどれだけのおカネ(融資)があれば資金繰りが回るのか? 具体的な数字を使って、資金繰り表で示すことです。
その資金繰り表をもって、銀行は「いくらのおカネが必要なのか」「貸したおカネは返してもらえるか」を審査・検討することができるようになります。
いくら口頭で「がんばって返します」と言ったところで、根拠なき言葉を審査・検討することはできません。繰り返しになりますが、メンドーがらずに書面にまとめましょう。
赤字でも融資を受けたいのであれば、経営改善計画書が必須になる。これを忘れてはいけません。
《伝えるべきこと⑤》メインバンクはなんと言っているか
銀行の世界は「横並び」です。他行が貸すと言えばウチも貸す、他行が貸さないと言えばウチも貸さない。銀行はそのように考えています。
ゆえに、銀行は他行の動きをいつも気にしています。とくに、赤字のように大きなリスクを感じるケースではなおさらです。
この点で、メインバンク以外の銀行に融資を依頼するときには、「メインバンクの動き」を伝えるようにしましょう。
メインバンクが融資をすると言っているのであれば、それが他の銀行からの融資の後押しになるからです。
ちなみに、ここで言うメインバンクとは、融資残高がもっとも大きい銀行をイメージしています。融資残高が大きいということは、回収不能時のリスクも大きい。
そのようなメインバンクが、まだ支援すると言うのだからだいじょうぶだろう。そのように、他の銀行は考えるわけです。
実際、メインバンクは融資先とのコミュニケーションが密であり、多くの情報を有しています。たくさんの情報を判断材料に持つメインバンクは、より正確な融資判断ができるはず。ということですね。
逆に、メインバンクが融資をしないと決めている場合には、他の銀行からの融資は難しくなります。
このあたりをふまえて、赤字で融資を受けるときには、はじめにメインバンクにお願いをするようにしましょう。他の銀行は、メインバンクしだいです。
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まとめ
「赤字でも融資を受けたい会社」が銀行に伝えるべきことについてお話をしてきました。
銀行は、原則、赤字を補うための融資はしません。
にもかかわらず、赤字でも融資を受けたいというのであれば。少しでも融資を受けられる可能性を高めるために、銀行に伝えるべきことを押さえておきましょう。
- どうして赤字になったのか
- いつまで赤字が続くのか
- 赤字を解消するための対策はなにか
- 必要なおカネはいくらなのか
- メインバンクはなんと言っているか