銀行が「融資を受けませんか?」と言っている。いわゆる、融資セールス。
セールスを「断る」のも選択肢ではありますが。ほんとうに断る前に考えるべきことに気をつけましょう、というお話です。
「セールスお断り」が招く後悔がある
会社・事業における銀行融資について。
ときに銀行から「融資を受けませんか?」とのお誘いを受けることがあります。いわゆる、「融資セールス」です。
ふつうの会社と同じように、銀行にもノルマ(あるいはそれに近いもの)がありますので、「商品(融資)を積極的に売る」ということもあるわけです。
では、そのような融資セールスに対して会社はどうするか?
答えはふたつにひとつ、受けるか、あるいは断るかです。
したがって、「断る」のは融資セールスに対する選択肢ではありますが。ほんとうに断る前に考えておくべきことがある、という点で注意が必要です。
そのあたりを考えることなく、とにかく「セールスお断り」のスタンスでいると、あとで後悔をすることにもなりかねません。
実際、「あぁ、あのとき融資を受けておけばよかった…」という話はそこかしこ。わたしも、なんども見聞きをしてきました。
というわけで。融資セールスを断る前に考えるべきこと、についてお話をしていきます。次の3つです ↓
- ほんとうに融資は必要ないのか?
- 交渉すべき融資条件はないのか?
- 断り方はだいじょうぶか?
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
融資セールスを断る前に考えるべき3つのこと
ほんとうに融資は必要ないのか?
銀行からの融資セールスを断る理由として、「いまは必要ないから」が挙げられます。
つまり、いまはおカネがあるので借りる必要がない。そういうことです。
たしかに「いま」は必要がないかもしれません。でも、はたして「将来」はどうでしょう?
これについて、もし次のように考えているのであれば注意が必要です ↓
『将来のことなどわからないが、困ったらそのときに借りればいい』
この考え方には2つの「間違い」があります。
将来のことなどわからないからこそ借りる
将来なにが起こるかは誰にもわかりません。ゆえに、きょうだいじょうぶだから、あすもだいじょうぶだとは言えません。
あす突然に売上が激減するかもしれない。あす突然に震災が起きて損害を受けるかもしれない。
このとき、会社・事業を継続するために必要になるものは「おカネ(現金預金)」です。
必要になるおカネの目安として。売上減少などの「変化」に対応するためには、平均月商の3ヶ月分はほしいところです。
また、震災などの「非常事態」に対応するためには、平均月商の6ヶ月分はほしい。というのが、必要なおカネの目安になります。
では、自社に平均月商の3ヶ月〜6ヶ月分のおカネがあるのか?と言えば。そこまでじゅうぶんなおカネは持っていない、という中小企業がほとんどです。
にもかかわらず、将来の変化や非常事態に備えようとしない。これでほんとうにいいのだろうか?と、いちど考えてみましょう。
いまは必要ないけど借りる。将来のことなどわからないからこそ借りておく、という視点もあるはずです。
困ったときには貸してくれないから借りておく
銀行からの融資セールスを受けると、「ウチはいつでも借りられるんだ」と勘違いをしてしまう会社があります。
だから困ったときには借りられるんだ、というのは勘違いです。銀行は「いまだから」、融資をすると言っているにすぎません。
もちろん、手放しで融資を受けられるわけではなく、「審査」もありますが。セールス時以外の審査と比べれば緩めだ、と言ってよいでしょう。
銀行には「できるだけ融資をしたい」との思惑があるからです。
けれども、そんな銀行の思惑はいつまでも続くものではありません。セールスタイムが終われば、審査の厳しさはいつもどおりです。
業績が悪いなどの事情によって、結局、融資が受けられない…
そのときになって、「この前は借りてくれと言ってたじゃないか!」と詰め寄ったところで、銀行からしてみれば「あのときはあのとき、いまはいま」でしかありません。
困ったときには貸してくれないのが銀行です。そう考えると、困っていなくても借りておく、困る前に借りておくのも選択肢です。
銀行は「いまだから」、融資をすると言っている。銀行融資に「またこんど」はない、と理解をしておきましょう。
交渉すべき融資条件はないのか?
銀行からの融資セールスを断るにあたっては、「いま現在の融資条件がじゅうぶんか?」を確認してみましょう。
つまり、いますでに受けている融資について、金利の高低や、担保・保証の有無、プロパー融資か保証協会付き融資か、など。各種の融資条件がじゅうぶんか、満足できるものかどうかです。
おそらく、ほとんどの会社では「なにかしら」の不十分があることでしょう。
であるのなら、銀行が「融資をしたい」と言っているいまがチャンスです。銀行は融資をしたいのですから、条件をのんでもらえる可能性があります。
その結果、たとえば従来よりも金利を下げることができた、というのなら。今後の融資では、その金利をひとつの水準として交渉することができるようになります。
また、その水準は融資を受けた銀行のみならず、他の銀行に対しても効力があるものです。
他の銀行からしてみれば、「この会社はこれだけ低い金利で融資を受けられる信用があるのか。だったらウチもがんばろう」ということであり、金利競争を促すことができます。
競争があれば、交渉はしやすくなります。これは金利に限らず、他の融資条件についても同じことです。
良い融資条件を得ることができれば、その後の融資条件の交渉材料になります。
いっぽうで。銀行が「貸したい」ときではなく、こちらが「借りたい」ときに融資条件を交渉するのは厳しいものです。
銀行としてはムリをして貸す理由はありませんから、こちらがムリな条件提示をすれば「じゃあ、貸せない」と言われておしまいです。
そうなると、こちらはとにかく「借りたい」のですから、条件提示できる立場になく、銀行に言われるがまましかありません。
銀行との交渉には「時機」があります。そのひとつが、銀行からの融資セールスを受けたときです。
いまおカネが必要かどうかは別にして、融資条件の改善を目的に融資を受けることも検討してみましょう。
断り方はだいじょうぶか?
いろいろと検討をした結果、やっぱり融資セールスをお断りする。もちろん、それもひとつの選択です。
ただし、その「断り方」には気をつけるのがよいでしょう。
たとえば、銀行の話をろくろく聞きもせずに「あー、ウチはいらない、いらない」と邪険にする。
邪険にされたほうの気分はどうでしょう?
これについて、「そんなの知ったことか」という考えもあるかもしれません。こっちだって暇じゃない、忙しい。興味のない話にかまってなどいられない。正論です。
けれでも、そのいっぽうで。こちらが困ったときには、一方的に融資のお願いをする。一方的に話をしようとする。
これでは銀行に、「困ったときばっかり。じぶん勝手だなぁ」と思われてもしかたありません。
銀行とのお付き合いも「人対人」です。信頼関係を持てるような付き合い方をする、少なくとも敬遠されるような付き合い方はしないことです。
銀行からのセールスも(融資に限らずですが)、いったん話を聞いたうえで「いまは必要ないと思いますが、いちど検討してみて必要であれば返事をします」などもひとつの断り方だと言えます。
じょうずな断り方、も考えてみましょう。
また、いままでお付き合いがなかった銀行が融資セールスに来た場合。あいさつもせずにお帰りいただくようなことはおすすめできません。
せめて、あいさつと名刺交換くらいはして、時間があれば話も聞く。そうしておくことで「面識」ができます。
いずれ、融資を受けたいなぁと考えたときに、その面識をもとに連絡をすることができる。これはメリットです。
逆に、面識もなく、突然その銀行に融資をお願いすると、まず間違いなく警戒されます。銀行は「一見さん」を警戒するものだからです。
(※ 銀行は、「他の銀行で融資が受けられないからウチに来たのでは…」と考えます)
いまは必要なくても、今後、お付き合いする銀行を増やしたいと考えるときは来るかもしれません。
そのときのためにも、断り方には注意をしましょう。
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まとめ
融資セールスを断る前に考えるべきこと、についてお話をしてきました。
セールスを受けたときには「断る」のは選択肢のひとつです。
けれども、あとで後悔をすることがないように。ほんとうに断る前に、あらためて次の3点を確認しておくようにしましょう ↓
- ほんとうに融資は必要ないのか?
- 交渉すべき融資条件はないのか?
- 断り方はだいじょうぶか?