銀行融資を受けている・受けようとする会社がつくっておくべき「借入金一覧表」。
できあがった一覧表をもとに取り組むべき4つのことについてお話をしていきます。
つくってる? 銀行借入金一覧表
銀行融資を受けている・受けようとする会社がつくっておくべき書類のひとつに「銀行借入金一覧表」が挙げられます。
文字どおり、銀行からの借入金を一覧にした表であり、そのサンプルがこちらです ↓
上図はあくまでサンプル。これじゃなきゃダメ、という書式が決まっているわけではありません。
自社の銀行借入金について、「必要な情報」が掲載されていればOKです。では、「必要な情報」は? と言うと。おおむね次のとおりです ↓
- 当初借入額、現在残高、月返済額
- 借入日、返済期日、返済日、借入期間
- 返済方法、資金使途、金利、担保・保証など
以上の情報をまとめて銀行借入金一覧表をつくるわけですが。できあがった一覧表をもとに取り組むべきことについてお話をしていきます。次の4点です ↓
- メインバンクがどこかを知る
- 折り返し融資を受ける
- 返済額の見直しをする
- 融資条件を交渉する
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「銀行借入金一覧表」をつくって取り組むべき4つのこと
《取り組み1》メインバンクがどこかを知る
複数の銀行から融資を受けている場合には、自社の「メインバンク」がどの銀行なのか? 銀行借入金一覧表から知るようにしましょう。
そんなことは一覧表を見るまでもない、と言われるかもしれませんが。メインバンクを勘違いしているケースがあるので注意が必要です。
たとえば。借入残高が他の銀行よりも圧倒的に多い、という「都市銀行」をメインバンクだと考えてはいませんか?
では、その都市銀行からの借入が「プロパーか、信用保証協会付きか」を一覧表で確認してみましょう。
中小企業の場合、都市銀行からの借入は「ぜんぶ信用保証協会付き」ということが少なくありません。
いっぽうで借入残高こそ都市銀行には劣るものの、プロパー融資をしてくれている地方銀行や信用金庫がある。
では、どちらがメインバンクかと言えば、プロパー融資をしてくれる地方銀行や信用金庫のほうです。
なぜなら、プロパー融資は銀行みずからリスクを負う融資。銀行が会社を信用していることの証だと言えます。
そのような銀行は、会社が良いときも悪いときも、話を聞いてくれる・相談ごとを聞いてくれるものであり、それがメインバンクです。
信用保証協会の保証に頼り、みずからはリスクを負わないという姿勢の銀行は、会社が悪いときや相談ごとなどには冷たいもの。そのような銀行をメインバンクとは呼べません。
同様に、なんでもかんでもガチガチに担保を取るような銀行も、メインバンクだとは言えないでしょう。
いずれにせよ。融資額や融資残高という「金額」だけで、メインバンクを考えてはいけません。借入金一覧表から、各銀行の融資に対する姿勢を読み取ることが大切です。
《取り組み2》折り返し融資を受ける
毎月返済をしている借入金は、借入残高が減少していきます。と同時に、返済にともない手元の現金預金も減少していきます。
手元の現金預金が減少すれば、当然、資金繰りは厳しくなります。そこで取り組むべきは「折り返し融資」です。
折り返し融資とは。たとえば、当初 500万円の借入をしたあと、毎月返済が進んで現在の残高は 300万円です、というケース。
ここで、返済をした分の 200万円(500万円 − 300万円)を借り直すことを「折り返し融資(あるいは、巻き直し)」と呼びます。
折り返し融資は、会社の業績が極端に悪化しているような場合を除き、比較的に受けやすい融資です。
したがって、銀行借入金一覧表を見ながら、あるていど返済が進んだ借入について、計画的・継続的に折り返し融資を受けることを検討しましょう。
借りたらあとは返すだけ、で資金繰りを悪くしている会社も散見されます。
業績悪化時などには、借入したくてもできないのが銀行融資です(銀行にあるのは雨傘ではなく日傘だから)。借りられるときに借りておく、という発想を持ちましょう。
《取り組み3》返済額の見直しをする
銀行借入金一覧表からは、毎月の返済額を読み取ることができます。これが多すぎないか? の確認が大切です。
具体的には、毎月の返済額をもとに、次の算式が成り立つかを確認することになります ↓
税引後利益 + 減価償却費 > 年間返済額
上記の算式(不等式)が成り立っていればOKです。
いっぽうで、成り立っていない場合。つまり、「年間返済額」のほうが「税引後利益 + 減価償却費」よりも大きい場合。
手元の現金預金を取り崩して返済をしていくことになりますので、資金繰りが悪化します。返済額の見直しが必要です。
このようにして、銀行借入金一覧表から、返済額を見直す必要があるかないかを見極めるようにしましょう。
なお、返済額を見直す必要がある場合。毎月返済で借りている運転資金を、期日一括返済に切り替える、という手段が挙げられます。
期日一括返済に切り替えることで、毎月返済がなくなるわけですから、その分だけ資金繰りはラクになります。
また、返済期日を迎えたときに、期日を更新をすることで「実質的に返済無し」の借入を実現することも可能です。
この「期日一括返済・期日に更新」する借入を「短期継続融資」と呼びます。くわしくはこちらの記事を ↓
ほかにも、複数ある借入を一本にまとめて借り直す、という手段があります。一本にまとめて返済期間を伸ばすことで、毎月の返済額を減額できます。
信用保証協会の「借り換え保証制度」などの利用を検討してみるのもよいでしょう。
使わずに置いておく、つまり余裕資金としての借入については、返済原資を考慮する必要がありません。借りたおカネのなかから返済をすればよいからです。
したがって、「税引後利益 + 減価償却費 < 年間返済額」を考えるときには、余裕資金の借入の返済額を「年間返済額」から除くことになります。
CHECK! 『返済原資<返済額』になってしまったときの対応方法・順序
《取り組み4》融資条件を交渉する
銀行借入金一覧表をつくったら。自社だけで見ているのではなく、取引銀行にも見せるようにしましょう。
銀行間での「競争」をうながすためです。
銀行は「他の銀行」の動向を気にしています。他の銀行が融資を増やしているのなら、じぶんも負けずに融資をしたいと考えています。
ですから、他の銀行についての情報を開示することが、競争をうながすことにつながるわけです。
競争は、ただ貸すということにとどまらず。融資条件にまで及びます。具体的には、金利の高低、担保・保証の有無(プロパーか保証協会付きかも含めて)など。
たとえば、銀行借入金一覧表でA銀行の金利を見たB銀行は、「A銀行よりも金利を下げてもっと借入してもらおう」などと考えます。
また、A銀行がプロパー融資を出しているならウチも… という競争もありえます。いずれにせよ、借りる側の会社にとっては有利な競争です。
というわけで、一覧表を銀行交渉に使いましょう。
ただし。有利な競争を促すことができるのは、銀行が融資をしたいと思えるほど良い会社である場合に限られます。
業績が悪く、将来性も感じられない、というような会社に対して有利な競争は起きません。
代わりに。一覧表から手を引こうとする他の銀行のようすを知って、われ先にと手を引く競争がはじまります。
金利上昇、貸し渋り・貸し剥がし… 会社にとっては不利益な競争です。一覧表がアダにならないように、良い会社を目指しましょう。
ちなみに。ここで言う「良い会社」とは、出せる利益をきちんと出す会社です。出せるはずの利益を惜しむ(経費を使って税金を減らす)と、良い会社は遠のきます。
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まとめ
会社が「銀行借入金一覧表」をつくって取り組むべき4つのことについてお話をしてきました。
銀行融資を受けている・受けようとするのであれば、まず「銀行借入金一覧表」をつくること。そして、つくるだけではなく、取り組みに活かすことです。
その際、なにに取り組むべきなのか? 押さえておきましょう。
- メインバンクがどこかを知る
- 折り返し融資を受ける
- 返済額の見直しをする
- 融資条件を交渉する