会社のおカネはどの銀行に預ければいいのかな? と言うのであれば。
融資残高に合わせて銀行に預金を置くことも考えてみましょう、というお話です。
ボーッとおカネを預けてんじゃねーよ、という話
会社のおカネはどの銀行に預けるのがよいのか? という問いについて、ひとつの回答がこちらになります ↓
各銀行の融資残高の割合に合わせておカネを預ける
たとえば。3つの銀行から、合わせて残高1億円の融資を受けている場合。うちA銀行の融資残高が 5,000万円だとすると、「融資残高の割合」は50%です。
これに対して、会社のおカネ(現金預金)がぜんぶで 2,000万円あるとしたら、A銀行には 1,000万円を預ける。つまり、
おカネ 2,000万円 × 融資残高の割合 50% = 1,000万円
これを見て、「えっ、そうなの?」「どうして?」と思われるのであれば、このあとのお話を確認しておきましょう。
銀行融資を受けている会社・受けようとする会社は、おカネをただ銀行に預けるのではなく、「戦略的」に預金を置くべき。という話です ↓
- 「融資残高に合わせて銀行に預金を置く」の理由と効果
- 「融資残高に合わせて銀行に預金を置く」の具体的方法
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「融資残高に合わせて銀行に預金を置く」の理由と効果
まずは、融資残高に合わせて銀行に預金を置くのがよい「理由」と、その「効果」についてお話をしていきます。
《理由1》いままでよりもお得意先になれるから
言うまでもないことですが、銀行の商売は「融資だけ」ではありません。
この点で。融資先に対しては、融資取引だけではなく、預金取引も望んでいます。
低金利のご時世です。融資から得られる利息収入だけでは割に合わない、というのが銀行の本音でしょう。
預金取引があれば、各種支払の振込手数料や従業員の給与振込口座の開設などが期待できます。
結果、銀行の収入(あるいは収入源)が増えるわけですから、その融資先は銀行にとって、いままでよりも「お得意先」です。
ということは。会社がちょっと困っているときにでも、助けてもらえる可能性は高まります。
たとえば、会社の業績が厳しく、他の銀行であれば融資を躊躇する場面でも、「なんとかしよう」「なんとかできないか」と考えてくれるかもしれない、ということです。
もちろん、絶対に助けてくれるなどと断言はできませんが。それでも、「まったく預金取引が無い」というようなケースに比べれば、助けてくれる可能性は高くなる。
これって、いままでよりも「お得意先」になった効果だと言えますよね。そういう話をしています。
また、会社が困っているときに限らず。お得意先になることで、そもそも融資が受けやすくなる、金利などの交渉ごとがしやすくなる、という一面もあるでしょう。
《理由2》銀行は「預金があれば安心だ」と考えるから
銀行が融資をするときには、必ず「保全」を考えています。貸したおカネの安全を守るためにどうするか、ということです。
この点で。じぶんの銀行の預金口座におカネがあれば、それは「担保に近いもの」と見ることができます。
実際に担保にまでとらずとも、そこにおカネがあることはわかるのですから。そのおカネで返済をしてもらえる、だから安心だ。と、銀行は考えます。
逆に、じぶんの銀行の預金口座におカネが無ければ。どこかにおカネがあるのか無いのかもよくわかりませんし、貸したおカネを返してもらえるかもわからず不安です。
銀行は「預金があれば安心だ」と考える。覚えておきましょう。
その効果として、やはり融資が受けやすくなります。おカネがあるとわかっているのですから、銀行は「もっと貸したい」と考えるからです。
したがって、これから融資を受けたい、これからも融資を受けたい、という銀行に対しては預金を減らさない(あるいは増やす)ようにしましょう。
《理由3》銀行が「商売のようすを明瞭に把握できる」ようになるから
銀行に預けるおカネの量と、取引の量が比例することは少なくありません。
つまり、預けているおカネが多い銀行の口座では、売上入金や経費出金などの取引も多い。逆に、預けているおカネが少ないと取引も少ない、という具合です。
この点で。銀行は取引の量が多いと、融資先の商売のようすを明瞭に把握できるようになります。
入金が増えていれば売上が増えていることがわかる、入金が減っていれば売上が減っていることがわかる。商売のようすがわかりますから、融資判断がしやすくなるのです。
たとえば、決算書や試算表が黒字のときには、預金取引の内容・推移から、「ほんとうかどうか(粉飾ではないのか)」を見極めやすくなくります。結果、融資が受けやすくなる。
赤字のときには通常、融資が難しくなるものですが。預金取引の内容・推移から「回復見込みがある」と判断できることもあります。結果、融資が受けやすくなる。
銀行融資において、銀行が融資先の商売のようすを知るのはだいじなことです。商売のようすがわかれば融資はしやすく、商売のようすがわからなければ融資はしにくくなる。
よくわからない相手におカネを貸すのは、銀行でなくともはばかられるところです。
自社のことを知ってもらううえで、預金取引が役に立つことを覚えておきましょう。
「融資残高に合わせて銀行に預金を置く」の具体的方法
続いて、融資残高に合わせて銀行に預金を置くときの具体的な方法についてお話をしていきます。
《方法1》各銀行の融資残高の割合に合わせて預金を置く
具体例で見てみましょう。いまの融資残高が次のような会社があるとします ↓
- A銀行の融資残高 … 5,000万円(融資残高の割合 50%)
- B銀行の融資残高 … 3,000万円(融資残高の割合 30%)
- C銀行の融資残高 … 2,000万円(融資残高の割合 20%)
融資残高とその割合が上記のとおりだとして、この会社の現金預金がぜんぶで 2,000万円あるとしたら。預金を次のように置くことを考えます ↓
- A銀行に置く預金 … 1,000万円(現金預金 2,000万円 × 融資残高の割合 50%)
- B銀行に置く預金 … 600万円(現金預金 2,000万円 × 融資残高の割合 30%)
- C銀行に置く預金 … 400万円(現金預金 2,000万円 × 融資残高の割合 30%)
銀行からしてみれば、融資残高の割合に応じて「このぐらいの預金はしてほしいようなぁ」ということでもあります。その理由は前述をしたとおりです。
融資残高の割合に応じて預金を置く。銀行へのおカネの預け方として検討してみましょう。
《方法2》少なくとも融資を受けていない銀行に預金を置かない
いましがた、融資残高の割合に応じて預金を置く方法についてお話をしましたが。
そうは言っても、いちいち残高に応じて預金を振り分けるなどメンドーだし、取引を別の銀行に移すのもタイヘンだ。というのが、正直なところでしょう。
そんなときには。少なくとも融資を受けていない銀行に預金を置かない、これだけは検討することをおすすめします。
融資を受けている銀行におカネを預ければ、前述したような効果が期待できるのに。その効果をみすみす逃してまで、融資を受けていない銀行におカネを預けるのはもったいない話です。
また、融資をしているのに預金がない銀行は、「ウチはリスクをとって融資をしているのに、なんでリスクをとっていない銀行のほうにおカネを預けるのか?」と不満に思うでしょう。
少なくとも融資を受けていない銀行に預金を置かない。もし、そのような預金があれば、これから融資を受けたい銀行やこれからも融資を受けたい銀行のほうに預ける。検討してみましょう。
《方法3》信用保証協会付き融資には預金を置かない
さきほど見た融資残高の具体例を再掲します ↓
- A銀行の融資残高 … 5,000万円(融資残高の割合 50%)
- B銀行の融資残高 … 3,000万円(融資残高の割合 30%)
- C銀行の融資残高 … 2,000万円(融資残高の割合 20%)
上記について、もしもA銀行の融資が「すべて信用保証協会付きの融資」で、B銀行・C銀行は「すべてプロパー融資」だとしたらどうでしょう?
A銀行は、回収不能時には信用保証協会の保証がありますからリスクが無い(あるいはリスクが少ない)。
いっぽうでB銀行とC銀行は、回収不能時のリスクを100%負う。それがプロパー融資です。
にもかかわらず。融資残高の割合だけを見て、その割合で預金を置くのは「不公平」だと言えるでしょう。B銀行やC銀行から見るA銀行は「なんかズルいなぁ」です。
また、A銀行は「リスクを取らずに融資をする姿勢が見え見え」ですから、預金を置いても前述したような効果はあまり期待できません。
そう考えると、リスクを取っても融資をする姿勢が見えるB銀行やC銀行に預金を置くことで、今後のさらなる融資や業績不振時の支援も期待できるところです。
したがって、融資残高の割合だけではなく、融資の中身まで見るようにしましょう。
ちなみに、不動産などの「担保でガチガチの融資」についてもいっしょです。信用保証協会付き融資と同じく、リスクを取らない姿勢のあらわれです。
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まとめ
「融資残高に合わせて銀行に預金を置く」の理由と効果、具体的方法についてお話をしてきました。
銀行融資を受けている会社・受けようとする会社は、おカネをただ銀行に預けるのではなく、「戦略的」に預金を置くべきです。
その理由と効果、具体的方法を押さえておきましょう。