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銀行に提出する『試算表』が役に立たない・役に立ちにくい3つの事例

銀行に提出する「試算表」が役に立たない・役に立ちにくい3つの事例

融資を受けようとする・受けていると、銀行から提出を求められることがある試算表。

その「試算表」が役に立たない・役に立ちにくい事例についてお話をしていきます。

目次

試算表は「提出しさえすればいい」ではダメ

融資を受けようとする、あるいは融資を受けている会社が、銀行から「試算表」の提出を求められることがあります。

銀行が試算表を見て、会社の「最新の数字(業績)」を確認するためです。

数字ならば決算書を提出すればよいだろう、と思われるかもしれませんが。決算日から数ヶ月も経過すれば、決算書の情報も最新とは言えず、古くなってしまいます。

ゆえに、銀行は「試算表を見せてください」と言うわけです。

その「試算表」について。せっかく銀行に提出をしたとしても、実は「役に立たない・役に立ちにくい試算表」があります。

結果として、融資が受けられない・受けにくい試算表がある、ということです。会社としては当然、困ってしまいますよね。

そこで、銀行に提出する試算表が役に立たない・役に立ちにくい事例をお話していきます。自社はだいじょうぶかな? とチェックをしておきましょう。

事例は3つ、次のとおりです ↓

銀行に提出する「試算表」が役に立たない・役に立ちにくい3つの事例
  1. 銀行に言われてから試算表をつくる
  2. 試算表の内容が信用できない
  3. 預金口座の動きがわからない

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

 

銀行に提出する「試算表」が役に立たない・役に立ちにくい3つの事例

《事例1》銀行に言われてから試算表をつくる

冒頭でもお話をしたとおり、銀行は「試算表」を見て、その会社の「最新の数字(業績)」を確認しようとしています。

にもかかわらず。会社が提出してきたのは半年も前の試算表… では、「最新」とは言えません。半年も前となると、時間がたちすぎているからです。

それでは銀行も「最新の数字(業績)」を確認できませんから、時間がたちすぎた試算表は「役に立たない・立ちにくい」と言えるでしょう。

この点を踏まえて。銀行に試算表を提出するのであれば、「前々月分までを提出できる」のがひとつの目安かと考えます。

たとえば。銀行から7月に「試算表をください」と言われたら、「5月分までの試算表は提出できる」ということです。

また、そもそも試算表をつくっていないという会社もありますが。はっきり言って「論外」です。

試算表がなければ「最新の数字」はおろか、決算後の数字をまったく把握することができません。これでは銀行も、積極的に融資ができないでしょう。

では、「銀行に言われたら試算表をつくればいいか」といえばそれも違います。言われてからつくるような試算表は「信用ができない」からです。

あわててつくるのですから、精度は低くなることが想定されます。間違っているかもしれない。信用できない。

それならばと、慎重につくって提出するまでに時間がかかるとどうなるか。銀行は「もしかして粉飾(利益の水増し)の処理をするために時間がかかっている?」と疑います。やはり信用できない。

したがって、試算表は銀行に言われる前につくっておくことです。言われたらすぐに提出する。いちばんは、銀行に言われずとも定期的に提出することです。覚えておきましょう。

《事例2》試算表の内容が信用できない

いましがた、言われてからつくるような試算表は信用ができない、という話をしました。

ところが。言われる前につくる試算表でも、そもそも内容が信用できない試算表があります。

たとえば、「減価償却費」を毎月の試算表に計上していない試算表(決算でまとめて1年分を計上している)。この場合には、毎月の利益は実際よりも「過大」になります。

また、在庫がある、かつ、在庫がいつも変動しているような商売なのに、毎月の試算表では「たな卸」をまったくしていない(年に1回、決算のときだけたな卸をする)。この場合には、毎月の利益はアテになりません。

これらのような試算表をつくっていると。一事が万事、ほかにもいろいろあるのではないか? 信用できない試算表なのではないか? と銀行は疑うものです。

場合によっては、「粉飾(利益の水増し)」を疑われることにもなるでしょう。

結果として、銀行からは「次の決算を見てから考えましょう」などと言われることになります。試算表はあやしいので決算書を見てから、ということですね。

どうせ試算表だから、と大ざっぱな経理処理で試算表をつくっている会社もありますが。そのような試算表では、対銀行では「役に立たない・立ちにくい」ことを理解しておきましょう。

もっとも。対銀行に限らず、経営判断の材料としても「役に立たない・立ちにくい」ことは言うまでもありません。

《事例3》預金口座の動きがわからない

銀行から言われる前に試算表をつくっていても。内容が信用できる試算表をつくっていても。それでもなお、試算表が役に立たない・立ちにくいケースがあります。

それは、試算表を提出する銀行の預金口座に取引が無い、というケースです。

具体的には、その銀行の預金口座からは借りたおカネの返済をしているだけ、その他の入金や出金の取引はまったくない。

この場合、銀行は預金口座の動きから、その会社のようすをうかがい知ることはできません。他の銀行の預金口座の動きまではわからないから、ですね。

逆に、預金口座の動きがわかれば、銀行はその会社のようすを知ることができます。たとえば入金が増えていれば、売上好調を把握することもできるでしょう。

また、入金・出金の動きと、会社が提出する試算表とを合わせ見ることで、「試算表にウソがないか?」を確認することもできます。

決算書は粉飾しづらくても、試算表であれば粉飾しても… と考える会社もあることから、銀行は基本的に試算表を信用していないものです。

この点で。預金口座の動きがわかれば、銀行も試算表を信用しやすい、ということは覚えておくとよいでしょう。

そう考えると、自社の預金をどの銀行にあずけるか? は、銀行融資にはだいじな要素だということです。

したがって、融資を受けるつもりもない銀行に、たくさんの定期預金をするのはおすすめできません。預金のあずけ先をあらためて検討してみましょう ↓

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まとめ

融資を受けようとする・受けていると、銀行から提出を求められることがある試算表。

その「試算表」をせっかく銀行に提出をしたとしても、実は「役に立たない・役に立ちにくい試算表」があることを押さえておきましょう。

銀行に提出する「試算表」が役に立たない・役に立ちにくい3つの事例
  1. 銀行に言われてから試算表をつくる
  2. 試算表の内容が信用できない
  3. 預金口座の動きがわからない
銀行に提出する「試算表」が役に立たない・役に立ちにくい3つの事例

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