電気・ガス・水道代はいつ経費に計上すればいいのか。結論は「支払日でもOK」ですが。
正しくは支払日ではないこと。また、その理由を説明できますか? というお話です。
結論は「支払日でもOK」
会社や個人事業者・フリーランスが、仕事で使う「電気・ガス・水道」について。
いつ、どのタイミングで経費に計上すればよいのか、という疑問があります。検針日なのか、請求日なのか、それとも支払日なのか?
結論は「支払日でもOK」です。
たとえば、7月分の電気代 10,000円を8月末に口座引落で支払う、という場合。8月末に次の仕訳をすることで経費に計上します ↓
日付 | 借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
8月31日 | 水道光熱費 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
上記のような経理をすることで、電気代は「支払日」である8月31日に経費として計上されるわけです。
正しくは「使用日」に計上
ところが。7月分の電気代は、7月に使った電気なのだから、7月に経費計上するべきではないのか? との疑問もあるでしょう。
つまり。7月分の電気代 10,000円が、検針・請求によってわかったときに、次の仕訳をする。という考え方です ↓
日付 | 借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
7月31日 | 水道光熱費 | 10,000 | 未払金 | 10,000 |
上記の仕訳によって、7月分の電気代は7月の経費として計上されます。次いで、支払日の8月末には次の仕訳をします ↓
日付 | 借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
8月31日 | 未払金 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
実は、これが「正解」です。
正しくは、電気は「実際に使ったとき(使用日)」に経費計上すべき。ガスや水道についても同じです。
ではなぜ、結論は「支払日でもOK」なのか? そこには、別に「理由」があります。
電気・ガス・水道代について、支払日で経費計上するのなら。その理由を知っておくほうがよいでしょう。
本来、正しくは使用日で経費計上すべきところを、支払日で済ませている理由を説明できるほうがよいでしょう。
というわけで。電気・ガス・水道代の経費計上が「支払日でもOK」の理由について、このあとお話をしていきます。理由は次の2つです ↓
- 大勢に影響がないから
- 1年で見ればどうせいっしょだから
それでは、順番に見ていきましょう。
理由① 大勢に影響がないから
電気・ガス・水道代の経費計上が「支払日でもOK」の理由ひとつめは、それでも「大勢に影響がないから」です。
たとえば。7月使用分の電気代が 10,000円、8月使用分の電気代が 12,000円、支払日はそれぞれ翌月末日だったとします。
この場合、正しく「使用日」に経費計上するなら、次の仕訳をすることになります ↓
日付 | 借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
7月31日 | 水道光熱費 | 10,000 | 未払金 | 10,000 |
8月31日 | 未払金 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
8月31日 | 水道光熱費 | 12,000 | 未払金 | 12,000 |
9月30日 | 未払金 | 12,000 | 普通預金 | 12,000 |
ではこれを、経費計上は「支払日でもOK」とするのなら。仕訳はこうなります ↓
日付 | 借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
8月31日 | 水道光熱費 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
9月30日 | 水道光熱費 | 12,000 | 普通預金 | 12,000 |
上記2通りの仕訳について、「8月の経費」とした金額を比較してみましょう。こうなります ↓
- 使用日に経費にする仕訳 … 12,000円
- 支払日に経費にする仕訳 … 10,000円
この点でまず、「12,000円も 10,000円も、そんなに変わらないよね」という見方があります。
電気にしてもガス・水道にしても、1年を通じてだいたい同じような金額なのだから、使用日と支払日とでちょっとズレるくらいいいだろう?
と言われれば、たしかにそのとおりにも思えますよね。
また、正しく使用日に経費計上しようとすると。余計な「手間」が問題になります。
たとえば、7月分の電気代について。使用量の検針は、必ず月末というわけではありません。むしろ、検針日が29日だったり、翌月の3日だったり、ということもあるでしょう。
電気代は検針日に応じて請求されますから、結果として「7月1日〜7月31日」までの電気代は請求書からはわかりません。
では、このときの電気代について。じぶんで7月末に検針をして7月分の電気代を正しく把握するのだとしたら… あまりに手間、ですよね。
したがって。電気代などは「1年を通じてだいたい同じような金額」だし、「厳密に使用分を把握するのも手間」なのだから。支払日に経費にしてもOKだろう、ということです。
これを、会計・経理の世界では「重要性の原則」と呼んでいます。
金額的・内容的にそれほど重要でないものを、手間暇かけた処理をする必要もない。簡便的・便宜的処理でOK、という考え方です。
いっぽうで。電気・ガス・水道を大量に使うような商売をしている場合、支払日に経費をするのは「重要性の原則」に反することになります。
たとえば、大きな工場で、電気・ガス・水道を大量に使ってモノを製造しているようなケースです。
この場合には、金額も大きくなりますし、製造量などの状況などによって金額の変動も大きくなります。さすがに簡便的・便宜的処理というわけにもいかない。
よって、なにかしらの方法で、正しく「使用日」で経費計上すべし。ということになります。
ただそれも、どちらかと言えばレアケースでしょうから。多くの会社・個人事業者の電気・ガス・水道代は「支払日でもOK」が結論です。
理由② 1年で見ればどうせいっしょだから
電気・ガス・水道代の経費計上が「支払日でもOK」の理由ふたつめは、それでも「1年で見ればどうせいっしょだから」です。
たとえば、3月決算の会社があったとして。7月使用分の電気代 10,000円を、正しく使用日で経費にするか。それとも、支払日に経費でもOKと考えるか。
使用日の7月に経費にしようが、支払日の8月に経費にしようが、3月の決算のなかでは 10,000円が経費になります。
1年という期間(決算)で見れば、どうせいっしょだろう? と言われれば、たしかにそのとおりにも思えますよね。
水道代などは 2ヶ月にいちどの支払い、ということもあるでしょう。
これについても同じです。いつも支払日に経費に計上するならば、「1年で見ればどうせいっしょ」になります。よって、支払日に経費でもOK。
ただし、ここで注意点がひとつ。支払日に経費に計上するのであれば、「いつも」そうすることが条件です。
つまり。支払日に計上してみたり、使用日に計上してみたりはダメだ、ということ。それをやってしまうと、「1年で見ればどうせいっしょ」にはならない(こともある)からです。
これを、会計・経理の世界では「継続性の原則」と呼んでいます。
いちど1つの方法を採用したならば、その方法を継続しなければいけない、という考え方です。
ところで。水道代など2ヶ月にいちどの支払いは、「支払日」ではなく、「使用日」の2ヶ月に分けて経費計上することも検討してみましょう。
たとえば、6月分と7月分の水道代 20,000円を8月末に支払うという場合。次のように仕訳をする、ということです(便宜的に 20,000円を2ヶ月で均等に使ったものと考えています) ↓
日付 | 借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
6月30日 | 水道光熱費 | 10,000 | 未払金 | 10,000 |
7月31日 | 水道光熱費 | 10,000 | 未払金 | 10,000 |
8月31日 | 未払金 | 20,000 | 普通預金 | 20,000 |
上記の場合、6月と7月の水道代は請求があるまではわかりません。よって、6月30日、7月31日は「見込金額」で仕訳をしておき、金額がわかったときに差額修正をすることになります。
これをせずに、支払日の8月末に 20,000円をいちどに経費にするのもOKではありますが。
その場合には、「月次決算」に影響が出てしまうから、というのが上記の仕訳を検討する理由です。
1年に1度の決算で見れば「どうせいっしょ」でも、ひと月に1度の月次決算では「どうせいっしょ」とは言えない。そういうこともあるわけです。
ここもまた重要性の原則(水道代の金額の大小)をふまえて、支払日で経費にOKとするのか、正しく使用日に経費にするのか、で考えてみましょう。
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まとめ
電気・ガス・水道代を、支払日に経費計上するのはOKです。けれども、本来、使用日に計上するのが正しい処理だと言えます。
よって、「支払日でもOK」である理由は押さえておくようにしましょう ↓
- 大勢に影響がないから
- 1年で見ればどうせいっしょだから