銀行が融資の可否を判断する際の「材料」はいろいろ。いろいろある材料のなかから、「業歴・社歴」を取り上げます。
銀行は融資先の「業歴・社歴」を見てなにを考えているのか? のお話です。
プラスはアピールする、マイナスは補う説明をする
会社・事業における銀行融資について。
銀行が融資の可否を判断する際の「材料」はいろいろです。たとえば、決算書や試算表。資金繰り表や経営計画書などが挙げられます。
そのように、いろいろある判断材料のなかから、本記事では「業歴・社歴」を取り上げてみます。
銀行は融資の可否を判断するにあたり、融資先の「業歴・社歴」を見てなにを考えているのか? それは次の5つです ↓
- 長いか短いか?
- 相応の利益はたまっているか?
- 相応の資産はあるか?
- 商品のライフサイクルはどうか?
- 後継者の有無・状況はどうか?
これら5つについて、融資を受けるのに「プラスのポイント」もあれば「マイナスのポイント」もあります。
自社の業歴・社歴が、銀行からどのように見られているかを押さえておきましょう。
必要に応じて、プラスのポイントをアピールする、マイナスのポイントを補う説明をすることが大切です。
それではこのあと、さきほどの5つについて順番にお話していきます。
銀行が融資先の「業歴・社歴」を見て考えている5つのこと
長いか短いか?
銀行は、融資先の業歴・社歴が「長いか短いか?」を見ています。
そのうえで、「長ければ安心・安全」であり、「短ければ心配・危険」だ、と考えています。
たとえば、業歴・社歴が10年のA社と、業歴・社歴が1年のB社があったとして。銀行は「融資をするならA社のほうが安心・安全だ」と考える、そういうことです。
もちろん、歴が長いこと自体をもって安心・安全というわけではありませんが。
歴が長いということは、それだけの風雪に耐えてきた会社だ、それだけの風雪に耐えられるチカラがある会社だ、とも言えるでしょう。
したがって銀行は、業歴・社歴が短いよりは長い会社のほうをより評価する傾向があります。
会社としては、業歴・社歴が長ければそこをアピールする。短ければそこを補うような説明(業績の良さ、商品力の高さを示すなど)をしましょう。
相応の利益はたまっているか?
いましがた、業歴・社歴は長いほうが安心・安全だ、という話をしました。
ただし、業歴・社歴が長くても「相応の利益」がたまっていないのであれば話は別です。
つまり、毎年きちんと利益を出して、その結果として「利益剰余金」が積み上がっているか? を銀行は見ています。
ちなみに「利益剰余金」は、決算書のうち「貸借対照表」の「純資産の部」のなかに掲載される勘定科目です。
たとえば、業歴・社歴がともに10年のC社とD社があるとして。利益剰余金が 5,000万円のC社と、500万円のD社とで、どちらが安心・安全かと言えばC社だということになります。
D社については「10年で 500万円しか利益がたまっていないの?(毎年 50万円くらいの利益しかないの?)」が銀行の考え方です。
ただし、ここで注意点があります。
もしもD社の役員報酬(社長の給料)が高く、社長個人がおカネを溜め込んでいる場合、つまり、役員報酬が高いから会社の利益が少ない場合はどうでしょう?
会社のおカネが足りなくなれば、社長はじぶんのおカネを会社に出すことで、その場をしのごうとするはずです。
そう考えると。会社の「毎年の利益」や「利益剰余金」が少なくても、役員報酬が高く、社長個人に相応のおカネがあるのであれば安心・安全だ、とも言えます。
ですから、会社の利益剰余金が少ない会社であれば、役員報酬の高さ・社長個人のおカネがあることを銀行にアピールするのがよいでしょう。
相応の資産はあるか?
業歴・社歴に対して相応の「利益」があるかどうかとあわせて、相応の「資産」があるかどうかも銀行は見ています。
利益が出ていることと、資産があることとは必ずしもイコールではないからです。
たとえば、毎年同じような利益をあげているE社とF社があったとして。E社は堅実に預金を増やしているのに対して、F社は株式投資で含み損を抱えている… ということもあるでしょう。
この場合、どちらの会社が安心・安全かと言えば、当然E社のほうです。利益が出ていればよい、利益剰余金が多ければよい、というわけでもないことを覚えておきましょう。
利益は出ているけれど、不良債権がある、不良在庫がある、遊休資産がある、などの事実があれば融資の評価上はマイナスです。
会社としては、それらが発生してしまった経緯、今後の対応・対策などを銀行に説明することで補うようにしましょう。
商品のライフサイクルはどうか?
銀行は、業歴・社歴が短いよりは長い会社のほうをより評価する、と前述しました。
ところが、業歴・社歴の長い会社については、「商品のライフサイクル」という点で心配・危険があります。
商品のライフサイクルとは。カンタンに言うと、「商品には寿命がある」ということです。
モノやサービスは発売をはじめてから、時間の経過とともに少しずつ売れるようになり。あるときピークを迎えます。その後は、時間の経過とともに売上は減少、衰退をしていく。これが、商品のライフサイクルです。
ということは。会社が創業当初から同じ商品だけしか扱っていない場合、業歴・社歴が長くなるほど、商品の寿命が近づくことになります。業歴・社歴が長いから安心・安全、とは言えなくなるわけです。
では、どうしたらよいのか? は明らかですよね。あたらしい商品を開発・販売することです。
したがって、業歴・社歴が長い会社は、商品の開発状況、商品ラインナップとそのライフサイクルについて、銀行に説明をするのがよいでしょう。
つまり、衰退を迎えている商品ばかりでなく、ピークに向かって成長を続けている商品があること。絶えず商品開発をしているようすを伝える、ということです。
後継者の有無・状況はどうか?
業歴・社歴の長い会社については、「商品のライフサイクル」という点で心配・危険がある、という話をしました。
業歴・社歴の長い会社にはもうひとつ、心配・危険があります。事業承継です。
商品に寿命があるように、人間にも寿命があります。社長がいつまでも社長を続けられるわけではありません。
よって、業歴・社歴の長い会社には「事業承継できるのか?」という心配・不安があるわけです。
この点で、現社長の年齢が65歳くらいになると、銀行も後継者の有無が気になることは覚えておくとよいでしょう。
会社としては、後継者の有無、後継者がいるのであれば承継の状況、後継者がいないのであればM&Aか廃業か、などを銀行に説明することが大切です。
承継をするにしても一朝一夕にできるものではありません。現社長が築いてきた会社を、そんなにかんたんに引き継げるものではありません。
あるていどの時間をかけて計画的な承継ができるように、早めに後継者の検討をするようにしましょう。銀行も安心・安全を感じるところです。
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まとめ
会社の「業歴・社歴」は、銀行にとって融資の可否を判断する材料のひとつです。
業歴・社歴を見て考えられることのなかには、「プラスのポイント」もあれば「マイナスのポイント」もあります。
必要に応じて、プラスのポイントをアピールする、マイナスのポイントを補う説明をするようにしましょう。
- 長いか短いか?
- 相応の利益はたまっているか?
- 相応の資産はあるか?
- 商品のライフサイクルはどうか?
- 後継者の有無・状況はどうか?