銀行は融資をするかしないかの判断をする際、融資先が黒字かどうかを重視しています。
というわけで、銀行融資を受けやすくする「黒字にする・黒字を増やす」方法についてのお話です。
マイナスよりもプラス、プラスならより大きく。
会社・事業における銀行融資について。
銀行は融資をするかしないかの判断をする際、融資先が黒字かどうかを重視しています。「黒字かどうか」とは、つまり、利益がプラスかどうかです。
利益はマイナスではなくプラスのほうがいいし、プラスは大きければおおきいほどいい。そのほうが、貸したおカネをより確実に返してもらえるからです。
したがって、銀行から融資を受けたい・受けやすくしたいと考えるのであれば、「黒字にする・黒字を増やす」ことは良策のひとつだと言えます(黒字にする以外にもありますが)。
CHECK! 銀行・融資の記事まとめ(融資を受けるための記事多数)
そこで、黒字にする・黒字を増やすのに有効な方法についてお話をしていきます。次の3つです ↓
- 節税をやめる
- 値上げする
- 投資をするなら利益率を見る
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資を受けやすくする「黒字にする・黒字を増やす」3つの方法
《方法1》節税をやめる
なんてヒドいことを言うのか、税務署の回し者かっ!とでも言われそうですが。銀行融資を受けやすくしたいのであれば、節税をやめることも方法のひとつになります。
ちなみに、ここで言う「節税」とは、経費を使って利益を小さくすることで税金を減らすタイプの節税です。
たとえば。利益が 100万円出そうだ、という会社があったとして。税率は 30%だとします。
すると、この会社の税金は 30万円です(100 × 30%)。これを知った社長は、「高い、高すぎる。税金 30万円は高すぎる! 税金を払うくらいなら経費を使う」と決めました。
そこで 50万円の経費を使った会社の税金はというと 15です((100 − 50)× 30%)。かくして社長の思惑どおり、税金は半額となりました。
では、利益はどうでしょう? 経費を使う前の利益は 100万円、経費を使ったあとの利益は 50万円です。税金は半額になりましたが利益も半額。その分、銀行からの融資が受けにくくなることを理解しておかなければいけません。
これを理解していない会社、つまり、「税金を払うくらいなら経費を使う」という会社は意外と多いものです。行き過ぎた場合には、赤字にしてまで利益を減らして「税金がゼロでよかったよかった」と言っています。
よくありません。銀行融資的にはちっともよくありません。
実は、銀行は「税引後の利益 × 10」を、その会社に融資ができる限度の目安として見ています。(厳密には「(税引後利益+減価償却費)× 10」で見ています)。
税金を惜しんで利益を減らそうとすれば、借り入れできる金額は小さくなる。その分の融資は受けにくくなる、ということです。
逆に、税金を惜しまずきちんと利益を出せば、その分、借り入れできる金額は大きくなりますから、融資は受けやすくなります。
さきほどの会社で言えば、こういうことです ↓
- 経費を使う前の融資限度額 … 税引後の利益 70 × 10 = 700万円
- 経費を使った後の融資限度額 … 税引後の利益 35 × 10 = 350万円
15万円(30 − 15)の節税をしたことで、融資限度額は 350万円(700 − 350)もの差が出ます。
したがって、銀行融資を受けやすくすることを考えるのであれば、節税も「ほどほど」にしておくことです。
《方法2》値上げする
なかなか黒字が増えない、あるいは赤字だ、という会社は値上げを検討してみましょう。
そんなことをしたら、もっと売れなくなってしまうじゃないかっ!と思われれるかもしれません。
たしかに、商品・サービスの価値が低ければ、それもありうることでしょう。けれども、ほんとうはもっと高くても売れるのに「値決め」を間違えている会社も少なくないのです。
お客さまは安いほうが喜ぶだろうとか、まわりはみんな安く売っているからとか。だから、自社も価格を据え置いている。あるいは値下げをしている…
結果として「売上総利益(売上高 − 売上原価)」は悪化します。そういう会社は、値上げを検討してみましょう。
たとえば。客単価 3,000円(原価 1,000円)、1日の客数 50人の飲食店があったとします。1日の売上高は 150,000円(3,000 × 50)、売上総利益は 100,000円((3,000 − 1,000)× 50)です。
ここですべてのメニューを一律10%値上げするとどうなるでしょう? 客単価は 3,300円(3,000 × 1.1)になります。1日の売上高は 165,000円(3,300× 50)、売上総利益は 115,000円((3,300 − 1,000)× 50)です。
この飲食店が1ヶ月に 25日営業だとしたら、売上総利益の差は 375,000円(15,000 × 25)にもなります。1年にしたら、4,500,000円(375,000 × 12)というものすごい差です。
そんなことを言うけど、やっぱり値上げをしたら客数が減るだろう、と言われるかもしれませんが。
値上げ以前の1日の売上総利益 100,000円を確保するのに必要な客数であれば 44人です(100,000 ÷ (3,300 − 1,000))。つまり、6人も減っても以前の売上総利益を確保できます(50 − 44)。
また、同じ額の売上総利益だとしても、6人の客が減った分、調理・接客などのオペレーションに余裕がでるのは、別の意味での「利益」だと言えるでしょう。
したがって、値上げをすれば売上総利益が増える。客数が減ると言っても、値上げ前の売上総利益を割り込むまでには減らないかもしれない。
減ったら減ったでオペレーションに余裕が出るから、さらに商品・サービス価値を高める、値上げの余力ができる。
値上げは「黒字にする・黒字を増やす」方法であることを覚えておきましょう。値上げの過程で高まる商品・サービスの価値もまた会社の強みとして、銀行からの評価が高まります。結果として、融資は受けやすくなります。
ただし。商品・サービスの価値に見合った値上げであること、そのために価値を高める努力が必要であることが前提です。
《方法3》投資をするなら利益率を見る
黒字を測る指標のひとつに「総資本利益率」があります。算式にすると、「利益 ÷ 総資本」です。総資本は「すべての資産」と同じ意味になります。
たとえば、ぜんぶで 1億円の資産を持っているA社と、2億円の資産を持っているB社があったとします。そして、両者ともに 1,000万円の利益をあげているとしたら、総資本利益率は次のとおりです ↓
- A社の総資本利益率 … 1,000万円 ÷ 1億円 = 10%
- B社の総資本利益率 … 1,000万円 ÷ 2億円 = 5%
どっちの会社の黒字がより「効率的」かと言えば、A社だということがわかります。より少ない資産で、B社と同じ利益をあげることができるからですね。
では、ここで別の問題です。B社が1億円の融資を受けて、1億円の自社ビルを建てたとしたら総資本利益率はどうなるでしょう?(自社ビルを建てても利益は変わらないものとします)
答えは 3.3%です(1,000万円 ÷ (2億円 + 1億円))。自社ビル建設前の5%からは 1.7%も悪化をしてしまいました。
実際には1億円の借金をした分の利息負担もあるでしょうから、もっと悪化をするかもしれません。
このように「設備投資」をきっかけにして、利益率を落としてしまう会社があります。
自社ビルに限らず、工場を建てる、機械設備を買う、営業車を買う、パソコンを買う、などなど。すべての設備投資について考え方は同じです。
設備投資をすることで「増える総資本」、設備投資をすることで「増える利益」によって、総資本利益率が上がるかどうか? です。
そこをおろそかにして、ステータスとしての自社ビルや自社工場、あたらしもの好きが講じての衝動買いだと総資本利益率は低下します。
結果として、黒字が減る、ヘタをすれば赤字になるようでは、銀行融資は受けにくくなってしまいます。
そのようなことがないように、むしろ効率的に黒字を増やせるように、設備投資をするのであれば、総資本利益率を考えてから実行するようにしましょう。
まとめ
銀行は融資をするかしないかの判断をする際、融資先が黒字かどうかを重視しています。
利益はマイナスではなくプラスのほうがいいし、プラスは大きければおおきいほどいい。
というわけで、「黒字にする・黒字を増やす」のに有効な方法を押さえておきましょう。
- 節税をやめる
- 値上げする
- 投資をするなら利益率を見る