中小企業・個人事業者の銀行融資について。信用金庫から融資を受ける場合のメリット・デメリットをお話していきます。
融資はまず信用金庫から、がおすすめ。
中小企業・個人事業者が「銀行」から融資を受けよう、という場合。ひとくちに「銀行」と言っても、いろいろです。
民間の銀行をグループ分けして見てみると。規模が大きい順に、「都市銀行」「地方銀行」「信用金庫・信用組合」の3つになります。
結論として。中小企業、とくに小規模零細企業や個人事業者は、「まず信用金庫から融資を受ける」のがおすすめです。
次に挙げる3つのメリットが、その理由になります ↓
- 借りやすい
- プロパー融資が受けやすい
- 借りたあとの資金繰りが安定する
これらのメリットがあるので、「まず信用金庫から融資を受ける」ことをおすすめしているわけです。
とはいえ、デメリットもありますので。メリットとあわせて確認をしておきましょう ↓
- 金利が高い
- エリアが限られる
- 融資額に限りがある
それではこのあと、メリット・デメリットについて、それぞれ順番にお話していきます。
信用金庫から融資を受ける3つのメリット
《メリット1》借りやすい
ここで言う「借りやすい」とは、「都市銀行や地方銀行に比べると」という意味です。
銀行のなかでも規模が大きい「都市銀行」は、大きな会社を融資の対象にしています。逆に、規模が小さい「信用金庫」は、小さな会社を融資の対象にしています。「地方銀行」は、その中間、という感じです。
したがって、小さな会社や個人事業者が融資を受けようとするのであれば、「まずは信用金庫だ」と考えましょう。少なくとも、都市銀行から融資を受けるのは難しい、と考えましょう。
ではなぜ、小さな会社が都市銀行から融資を受けるのが難しいのか?なぜ、都市銀行は大きな会社ばかりを相手にするのか?
都市銀行はネームバリューがありますから、たくさんの会社が融資を受けたい! とやって来ます。ですから都市銀行は、そのなかから「安全な会社・業績が良い会社」に融資をすればよいわけです。
その「安全な会社・業績が良い会社」が、おおむね「大きな会社」にあたります。逆に「小さな会社」は業績が不安定なものです。
結果として、大きな会社は都市銀行から融資を受ける。都市銀行から融資を受けられなかった会社が地方銀行へと流れ。地方銀行から融資を受けられなかった会社が信用金庫へと流れ… というイメージです。
融資を受けるなら、まずは自社の身の丈にあった銀行から、と理解しておきましょう。
《メリット2》プロパー融資が受けやすい
民間の銀行からの融資は、大きく2つに分かれます。信用保証協会という機関が保証を付ける融資と、その保証がない融資です。
前者は「保証協会付き融資」、後者は「プロパー融資」と呼ばれます。
保証協会付き融資は、返済不能時には信用保証協会が肩代わりをするため、銀行にとってはリスクが小さな融資です。ゆえに貸しやすい。借り手にとっては借りやすい。
いっぽうで、信用保証協会の保証については「信用保証料」を会社が支払わなければならず。これがなかなかの負担です。
したがって、「できればプロパー融資を受けたい」というのが借りる側の願いになります。
ここで、ひとつの「目安」として。都市銀行は、年商(年間売上高)がおおむね 10億円を超えるくらいの会社をプロパー融資の対象に考えています。
地方銀行は、年商がおおむね3億円を超えるくらいの会社を。それよりも年商が少ない会社がプロパー融資を受けたいのであれば、信用金庫からということになります。
あくまで目安ではありますが。少なくとも、小さな会社・個人事業者が都市銀行からプロパー融資を受けようというのは、現実的なハナシではないことを覚えておきましょう。
《メリット3》借りたあとの資金繰りが安定する
さきほど《メリット1》で、都市銀行は「安全な会社・業績が良い会社」に融資をする、と言いました。
言い換えると「安全ではない会社・業績が悪い会社には融資をしない」ということですが、これは「借りたあと」についてもいっしょです。
つまり、融資を受けたあと、業績が悪くなるようであれば。追加の融資をしないのはもちろん、場合によっては早期回収をはかるのが都市銀行です。
この点で、都市銀行は融資先を「数字(業績)」で見ています。そういう意味では、とてもシビアでドライです。
これに対して信用金庫はと言うと。数字も当然見ますが、都市銀行に比べれば寛容だと言えます。都市銀行並に厳しく見ていたら、融資をできる先がなくなってしまうからです。
よって、数字以外の部分で評価をすることも考えています。具体的には、経営者の能力や従業員のようす、事業の内容や将来性など。
結果として、融資を受けたあとに業績が悪くなるような場合でも、極端に追加融資を躊躇したり、早期回収をはかることは少ないのが信用金庫です。
そもそも、信用金庫のビジネスモデルは「地域密着」です。にもかかわらず、シビアでドライに過ぎると「貸し渋りだ!貸し剥がしだ!」とのウワサが広がり商売がやりづらい… という思いもあるでしょう。
いずれにせよ。借りるときにやさしく、また借りたあともやさしい信用金庫のほうが、小さな会社・個人事業者の資金繰りは安定します。
信用金庫から融資を受ける3つのデメリット
《デメリット1》金利が高い
ここまで、信用金庫から融資を受ける3つのメリットを見てきました。それらのメリットゆえに、「まず信用金庫から融資を受ける」のがおすすめ、というお話でした。
とはいえ、信用金庫から融資を受けることによるデメリットもありますから、あわせて確認をしておきましょう。
ひとつめのデメリットが「金利が高い」です。
なお、ここで言う「高い」とは。都市銀行や地方銀行に比べると、という意味になります。
ざっくりですが、「都市銀行」「地方銀行」「信用金庫」のあいだには、それぞれ 0.5%くらいの金利差があるイメージです。
つまり、地方銀行は都市銀行の金利よりも 0.5%くらい高く、信用金庫は地方銀行の金利よりも 0.5%くらい高い。
金利は低いほうがいいわけですから、信用金庫から融資を受ける場合に金利が高いのはデメリットです。
ただし、このデメリットは前述した3つのメリットに対するコストだと考えれば、「大きすぎる」というわけでもないでしょう。
まずは信用金庫から融資を受けて、そのメリットを受ける。メリットを受けながら資金繰り・業績を安定させることができれば、のちの金利交渉は可能です。
金利は「目先」ではなく、中長期的な視点で考えましょう。
《デメリット2》エリアが限られる
さきほど《メリット3》でも触れましたが、信用金庫のビジネスモデルは「地元密着」です。ゆえに、営業エリアが限られています。
全国展開の都市銀行や、そこそこのエリアまで展開できる地方銀行に比べると、信用金庫の営業エリアはきわめて狭いものです。
したがって、自社の活動場所によっては、希望の信用金庫から融資が受けられないことがあるのはデメリットと言えるでしょう。
また、支店やATMの利用頻度が高い場合には、それらの数が少ない信用金庫は不便だ、というデメリットもあります。
自社のなるべく近くに支店がある信用金庫を選ぶ、とか。支店に行く・ATMに行くのを減らせるように経理・業務手順をあらためるなどして対応しましょう。
《デメリット3》融資額に限りがある
規模が小さい信用金庫には、都市銀行や地方銀行ほど「潤沢な資金」がありません。よって、融資額にはおのずと限りがあります。
たとえば、いちどに 1,000万円の融資は都市銀行から見ればそれほど大きな金額ではありませんが、信用金庫から見れば大きな金額です。
また、1社に対する融資残高が数千万円を超えてくると、信用金庫は「ちょっと多くなってきたなぁ」と感じるところでしょう。つまり、借りにくくなってきます。
信用金庫はそもそも資金が限られていますから、あまり多くの金額を1社に融資するのは危険だからですね。
これをデメリットだと考えるのであれば、自社の成長(資金ニーズの増加)にあわせて、取引する銀行を増やすことが解決策になります。
年商で1億円あたりまでは、信用金庫をメインバンクにしつつ、他の信用金庫や地方銀行とも取引をしておくとスムーズでしょう(年商が3億円あたりになったら、メインバンクは地方銀行に切り替えます)。
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まとめ
中小企業、とくに小規模零細企業や個人事業者は、「まず信用金庫から融資を受ける」のがおすすめです。
その理由として、3つのメリットが挙げられます ↓
- 借りやすい
- プロパー融資が受けやすい
- 借りたあとの資金繰りが安定する
いっぽうのデメリットも理解をしたうえで、信用金庫からの融資を活用しましょう。
- 金利が高い
- エリアが限られる
- 融資額に限りがある