自社の決算書(あるいは試算表)を見たときに。どれくらいの「現金預金」がありますか?
現金預金が少ない会社は3つのデメリットを抱えている、というお話をしていきます。
現金預金はどれくらいあるの?
自社の決算書(あるいは試算表)を見たときに。どれくらいの「現金預金」があるでしょう?
もし、その現金預金の金額が「少ない」という場合。具体的には、平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の1ヶ月分くらいだという場合。
会社が抱えることになるデメリットがあります。次の3つです ↓
- いざというときに時間をかせげない
- 経営判断を間違えやすくなる
- 銀行融資が受けにくくなる
これらは会社にとって大きなデメリットです。その内容を理解したうえで、「現金預金を増やす」ことも検討しましょう。
それではこのあと、3つのデメリットを順番に見ていきます。
現金預金が少ない会社が抱える3つのデメリット
《デメリット1》いざというときに時間をかせげない
会社・事業を続けていれば、良いときもあれば悪いときもあります。
また、悪いときというのは自社に原因がなくとも、天災のように否応無しに巻き込まれてしまうものもあります。
そのような難局を乗り切るにあたって必要なモノのひとつが「おカネ(現金預金)」です。
当面、売上が見込めない… という状況にあったとしても。おカネがあれば、その分だけ時間をかせぐことができます。逆におカネが無ければ、そのあいだにも必要な費用(固定費)に耐えることができません。
このような話をすると、「困ったら国などの援助があるだろう」とか、「銀行から融資を受ければいい」などの意見もあるところです。
たしかにそのとおりではありますが、国などの援助や銀行からの融資は「すぐ」に受けられるわけでもありません。あるていどの時間がかかるものであり、そのあいだにおカネが尽きてしまうことも考えられます。
現金預金が少ない会社は、いざというときに時間をかせげない。つぶれてしまう可能性が高い。大きなデメリットです。
会社がつぶれてしまっては元も子もありません。できるだけ現金預金を増やすことを考えましょう。
ちなみに。
創業時に銀行融資を受けるときなど、返済の「据え置き」を利用することも現金預金を増やすのと同じ効果があります。
融資制度や個々の状況にはよりますが、数ヶ月から半年くらいのあいだ、毎月の返済を据え置いてもらうことができます。
たとえば、毎月の返済が 10万円、据え置き 6ヶ月ならば。60万円(10万円 × 6ヶ月)の現金預金を手にしたのと同じだ、ということです。
《デメリット2》経営判断を間違えやすくなる
人は「おカネが無い…」と感じると判断を誤りやすくなります。
ギャンブルで負けが続くと、一発逆転を狙って「無謀」な賭けに出たりするのは一例と言えるでしょう。
これについては科学的実験による根拠もあります。
400人を超える農家に対して、おカネに不安を感じる「収穫前」と、おカネの不安がやわらぐ「収穫後」とで知能テストを実施。結果は、収穫後よりも収穫前のほうがIQは10ポイント前後低い、というものでした。
徹夜をするとIQは 10ポイントくらいは下がると言われており、おカネに不安があるのは、酷いコンディション(徹夜明け)で判断を強いられているのと同じだとわかります。
ではこれを社長の経営判断に置き換えてみるとどうでしょう?
会社の現金預金が少ない、つまり、おカネが無い… とのが不安であれば。社長は経営判断を誤りやすくなる、ということです。言うまでもなく、大きなデメリットです。
たとえば、将来を考えたときに「いま、かけるべきコスト」があったとして。でも、「おカネが無い、不安だ」となると、社長は「かけるべきコスト」を躊躇する、将来の成長を逃してかもしれません。
もっとも、実際におカネが無ければ、コストを支払うこともできないわけですから。いずれにせよ現金預金は必要だ、ということになります。
《デメリット3》銀行融資が受けにくくなる
ここまで、現金預金が少ないことによるデメリットを2つ、お話してきました。それらのデメリットを回避するためには「現金預金を増やす」ことが必要です。
具体的には、「利益を増やすことで現金を増やす」がひとつの方法にはなりますが。そんなにカンタンに利益が増えれば苦労はしない、という話でもあります。
そこで、次善策として挙げられるのが「銀行融資を活用する」です。つまりは、借りてでも手元の現金預金を増やす。
そうは言っても、借りれば「利息」を支払わなければならず。そこまでして現金預金を持つ必要があるのか? との疑問もあるでしょう。
けれども、これまで見てきた2つの大きなデメリットを考えれば、「利息」はデメリットを回避するために「必要なコスト」だと割り切ることもできるはずです。
ここで、現金預金が少ない会社が抱える3つめのデメリットが問題になります。現金預金が少ないと銀行融資が受けにくくなる、というデメリットです。
銀行は、現金預金が少ない会社への融資を好みません。現金預金が少ないと、返済が滞る可能性が高くなります。だったら貸さないほうがいい、と銀行は考えるからです。
そもそもおカネが無くて困っているのに、おカネが無いから融資も受けられない。踏んだり蹴ったりといったところですが、これが銀行の考え方です。
困っている会社を助けてくれるのが銀行だろう、との誤解もあるようですから気をつけましょう。銀行は貸したおカネを返してくれる相手に貸すところです。
具体的には、銀行は「現金預金が平均月商の1ヶ月分以上あるか?」を見ています。現金預金がそれよりも少ないようだと「自転車操業」の可能性が高くなるので融資を躊躇します。
そう考えると、銀行融資を受けるなら「おカネがあるうちに」です。少なくとも、「ほんとうにおカネが無くなってから」では融資が受けられません。
さいごに、会社はどれくらいの現金預金を持っておくのがよいか? について。最低でも平均月商の3ヶ月分、できれば6ヶ月分、というのがわたしの考えです。
それくらいの現金預金があれば、いざというときにも時間をかせぐことができて、日ごろ経営判断に余裕を持つこともできるでしょう。
なお、自己資金でムリなら、銀行から借りてでもです。
とくに中小企業は、はじめから自己資金でそこまでの現金預金を準備するのは困難でしょう。自己資金がムリなら借りるしかありません。
そうでなければ、大きなデメリットを抱えることになるからですね。
この点で。そんなに融資を受けられるのか? そんなに借金をしてだいじょうぶなのか? と思われるかもしれませんが。
借金が多くても、借りたおカネを使わずに手元に現金預金として残している限り、その分の借金は無いのと同じです。返済しようと思えば、いつでも返済できるからです。
ゆえに、銀行は「借金が多くても現金預金がある会社」に、相応の安心感を持っています。
また、銀行が無制限に融資をすることもありません。銀行が融資をするのは「返してもらえる」と考えられる金額まで、です。会社が借り続けようとしても、どこかでストップがかかります。
これらをふまえて、必要であれば「借りられるだけ借りておく」のが、ひとつの財務戦略です。
とくに中小企業の信用力では「借りたいときに借りられない」のですから、「借りられるときに借りる」ことを考えましょう。
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まとめ
自社の決算書(あるいは試算表)を見たときに、平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の1ヶ月分くらいだという場合。
会社は現金預金が少ないことで、3つのデメリットを抱えることになります。デメリットを回避するために、「現金預金を増やす」という検討をしましょう。
- いざというときに時間をかせげない
- 経営判断を間違えやすくなる
- 銀行融資が受けにくくなる