会社が銀行から融資を受ける「借入」には、「攻め」と「守り」の両面があります。
いずれの借入にも共通するだいじなのは、借りられるときに借りておくこと。その理由についてお話をしていきます。
必要になったら借りる、は遅すぎる
会社が銀行から融資を受ける「借入」には、「攻め」と「守り」の両面があります。
たとえば。
飲食店を経営する会社が、さらにもう1店舗の出店を考えているとして。店舗物件の申込金や保証金などにあてるおカネを銀行から借り入れする。
これは、会社の「成長」を目指した、「攻め」の借入の一例です。
いっぽうで。売上不振や天災などにより不足する、手元のおカネを補うために銀行から借り入れする。
これは、会社の「持続」を目指した、「守り」の借入の一例です。
このように、借入には「攻め」と「守り」の両面があります。意外と片面だけで考えている会社もありますので気をつけましょう ↓
- 成長に必要な「攻め」の借入
- 持続に必要な「守り」の借入
そのうえで。これらいずれの借入にも共通するだいじなこと、それは「借りられるときに借りておく」です。
必要になってから借りるのでは遅い。だから、借りられるときに借りておく。その理由について、「攻め」の借入と「守り」の借入の両面からお話をしていきます。
成長に必要な「攻め」の借入
おカネが無いことによる機会損失
冒頭で、飲食店を経営する会社の例を挙げました。引き続き、その例で話を続けることにします。
この会社が新店舗の物件を見つけたとして。手元におカネ(現金預金)があれば、申込金を支払い物件を押さえることができます。契約後に保証金などの支払いもできます。
ところが、手元におカネが無い場合。申込金を支払えず、物件を押さえることができません。申込金はなんとかなっても、保証金を支払えなければ契約ができません。
だったら、借入をしよう! とも考えるわけですが。このタイミングでは遅すぎます。銀行から融資を受けるためには「審査」が必要であり、審査には相応の時間がかかるからです。
審査にどれくらいの時間がかかるのかはケースバイケースだとしても、良い物件であるほど足は早く、競合相手に先を越されてしまうでしょう。
また、競合相手がいなかったとしても。審査でNGになってしまえば、当然、物件を借りることができません。
結果として、この会社は「成長」の機会を逃すことになります。いわゆる「機会損失」です。
もしも、新店舗の年間売上高が 3,000万円、利益率が 10%だとしたら。毎年の利益は 300万円です。会社は「毎年 300万円」の利益を得る機会を逃したことになります。
では、新規出店に備えて、会社が 1,000万円のおカネを金利3%の銀行融資で準備していたとしたらどうでしょう。支払う利息は「毎年 30万円」です。
よって、毎年 30万円の利息を惜しんだがために、毎年 300万円の利益を逃した。と、見ることができるでしょう。
支払う利息はムダなのか?
そんなことを言うけれど。新規出店をしなければ、毎年の利息 30万円は「払い損」ではないのか? と思われるかもしれません。
そのとおりです。ただし、それは「結果論に過ぎない」とも言えます。
なぜなら、チャンスがいつ訪れるのかを正確に予測できる人はいない以上、あらかじめおカネを備えておくしかないからです。
この点で。大企業に比べて業績が不安定な中小企業は、じゅうぶんなおカネを備えておくことが難しく。社長個人が裕福であれば話は別ですが、ケースとしては限られます。
したがって、中小企業があらかじめおカネを備えるためには「銀行融資」が欠かせないのです。
幸運の女神に後ろ髪はない、と言われます。女神の前髪をつかむためには、「借りられるときに借りておく」ことも考えましょう。
会社の「成長」を目指した「攻め」の借入です。
持続に必要な「守り」の借入
おカネが無い相手におカネを貸す者はない
続いて、「守り」の借入について。冒頭では、売上不振や天災を例に挙げたところです。
まずは、売上不振から考えてみましょう。会社を続けていれば、自社の商品・サービスの売れ行きが悪い… 思うように売れない… ということもあるはずです。
売上が下がると、利益も減って、おカネも減って、と続きます。このタイミングで「おカネを借りたい!」という会社は実に多いのですが、融資を受けるのには最悪のタイミングです。
言うまでもありませんが。おカネを貸す側の「心理」として、おカネが無い人におカネを貸したくはないから、ですよね。
さらに銀行は、「心理」だけではなく「理屈」としても、おカネが無い人にはおカネを貸しません。銀行はおカネを貸して返してもらうのが商売だからです。親切でおカネを貸しているわけではありません。
にもかかわらず。銀行は「困ったらおカネを貸してくれる」と勘違いをしている会社は気をつけましょう。
売上不振時のおカネを備えるのであれば、おカネが無くなってからではありません。おカネがあるうち、利益が出ているうちです。
例外と言えども時間はかかる
それからもうひとつ。天災について考えてみましょう。
さきほど、「困ったらおカネを貸してくれる」のは勘違いだ、と言いました。とはいえ、例外はあります。
たとえば、つい先日、広範囲にわたり大きな被害をもたらした台風19号(2019年10月)。被災された中小企業に対しては、資金面で各種の支援が公表されています。
公的金融機関である「日本政策金融公庫」は、1都13県の被災中小企業を対象に、「災害復旧貸付」の取り扱いを公表しています。また、各自治体・信用保証協会による制度融資の拡充もあります。
これらの融資は「困ったらおカネを貸してくれる」の例外です。
じゃあ、やっぱり困ってからおカネを借りればいいじゃないか。と、思われるのであれば、それはちょっと違います。
なぜなら、例外であったとしても「借りるのに相応の時間はかかる」からです。その時間が「通常の融資」よりは短いにしても、即座に融資を受けられるわけではありません。
手続きがあり、審査があります。そのあいだに、会社のおカネが尽きてしまうようなことがあれば、融資もなにもありません。
加えて、手続きのわずらわしさや、融資が実行されるまでの心労が想像されます。想像するだけでも「つらい」ところですから、実際には「もっとつらい」ことでしょう。
融資の手続きを含めた資金繰りは、ただでさえ時間と手間、心労をともなうものです。それが、「被災への対応と同時並行で」となれば、相当なものになるはずです。
そう考えると。天災は万一だとしても、あらかじめおカネを備えておく。「借りられるときに借りておく」のも重要な選択肢のひとつです。
天災のときにも、まずは手元のおカネでしのぐことができるように。手元のおカネがあれば、前述した「例外」による融資にも余裕をもった対応ができます。
会社の「持続」を目指した「守り」の借入を考えましょう。
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まとめ
会社が銀行から融資を受ける「借入」には、「攻め」と「守り」の両面があります。意外と片面だけで考えている会社もあるので注意が必要です。
そのうえでだいじなのは、いずれの借入も「借りられるときに借りておく」ことです。必要になってから借りるのでは遅い、遅すぎる。くれぐれも気をつけましょう。
- 成長に必要な「攻め」の借入
- 持続に必要な「守り」の借入